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第473話

Author: 春さがそう
紗季はあれこれと考え、思考を巡らせ、頭の中が混乱していた。

彰の吐息が顔にかかるのをはっきりと感じるまで、彼女は無意識に全身をこわばらせていた。

彰が彼女の唇にキスしようとした瞬間、紗季はすぐに顔を背け、反射的に避けてしまった。

彼女がそうした時、彰もまた動きを止め、信じられないといった眼差しで彼女を見つめた。

「あなた……」

紗季は胸が締め付けられ、気まずさと申し訳なさでいっぱいになった。

彼女は慌てて弁解した。

「ごめんなさい、ごめんなさい。わざとじゃありません。ただ少し緊張してしまって、無意識に避けてしまいました。怒ってはいませんよね?」

彰は彼女を見つめたまま、何も言わなかった。

ふと、紗季が以前も同じような態度を取ったことを思い出した。だが、あの時は隼人がいたから避けたのだ。

今はどうだ。

もう隼人はそばにいないのに、なぜ紗季は無意識に避けてしまうのか?

心に強烈な不快感が込み上げ、どうしても無視できなかった。

彰がずっと黙っているのを見て、紗季も心中穏やかではなかった。

彼女はすぐに説明した。

「たぶん、私が長い間、男性と触れ合っていなかったせいで、避けてしまったのかもしれません。本当に。それに、少し緊張もしていましたし。もう一度、試してみましょうか……」

そう言いながら、紗季は少しぎこちなく彰の前に顔を寄せた。

彰は笑い、仕方なさそうに顔を背けて彼女のキスを避け、困ったような笑みを浮かべた。

「こういうことは、自然な流れに任せた方がいいでしょう。私が無理にあなたに触れようとしても、それは不可能です。大丈夫、少し時間を置きましょう」

彼が時間を置こうと言ったことで、紗季の心はさらに痛んだ。

彰が彼女を気遣ってそう言ったのだと分かっていた。そうでなければ、時間を置こうなどとは言わなかったはずだ。

だが、紗季にはどうすることもできなかった。

結局のところ、自分は今、確かに他人と触れ合うのに適した状態ではないのだ。

自分と彰の間には、まだその段階に至っていない何かがある。

そう思うと、紗季はゆっくりと息を吐き出し、冷静になった。

彼女は静かに言った。

「分かりました。戻りましょう。こういうことは、またの機会に」

その言葉に、彰は彼女を深く見つめ、頷いた。

「ええ、行きましょう」

紗季は無理に笑ってみせた
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