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第589話

Auteur: 春さがそう
病院のVIP病棟前の廊下は、空気が凝固しそうなほど重苦しかった。

隆之は隼人の胸倉を死に物狂いで掴み、冷たい壁に押し付けていた。大声で叫ぶことはしなかったが、声を押し殺している分、言葉が歯の隙間から絞り出されるようで、本物の怒りと悲痛に満ちていた。

「黒川隼人、お前は有能なんじゃなかったのか?あ?全て自分の掌の上だと保証したじゃないか!それがなんだ?妹をこんな危険な目に遭わせて!」

隼人は抵抗せず、されるがままになっていた。苦痛に目を閉じ、いつも冷静沈着なその顔には、言葉にできない「悔恨」と「無力感」が満ちていた。彼は項垂れ、しゃがれた声で言った。

「……すまない……俺が不甲斐ないばかりに……」

彼は、計画に重大な綻びが生じ、完全に崩壊し自責の念に駆られる男を完璧に演じていた。その視線の端は廊下の突き当たりを捉え、微細な表情と動作の一つ一つを維持し、この芝居が十分にリアルであるよう細心の注意を払っていた。

廊下の曲がり角では、清掃員に変装した男が、モップで体を隠しながら密かにスマホを掲げ、この一部始終を録画していた。その顔には、陰湿で得意げな笑みが浮かんでいた。

隆之は自分の一挙手一投足が敵の目に晒されているとは知らなかった。彼は隼人を壁に激しく突き飛ばすと、全ての力を使い果たしたかのように、壁伝いに冷たいタイルの床へと崩れ落ちた。

頭を抱え、肩を激しく震わせ、喉の奥から押し殺した苦痛の嗚咽を漏らした。

――終わった……何もかも終わった……

鋭い自責の念がこみ上げた。あの時、自分が隼人の計画を黙認しなければ、あの「万全」という言葉を信じなければ、紗季がここで生死の境をさまようこともなかったのではないか?

隆之は狂ったように床から跳ね起き、まだ演技を続けている隼人の腕を掴み、よろめきながら病室へと引きずっていった。

「中に入れ!お前の目でよく見ろ!お前が招いた結果を!」

彼の声は枯れ、言葉の端々が血を吐くようだった。

「これが、紗季がお前を信じて選んだ結末だ!見ろ、自信過剰のお前が、こいつをこんな目に遭わせたんだ!」

彼は病室のドアを乱暴に押し開け、ベッドの上で目を閉じ、生気なく酸素マスクをつけた紗季を指差し、隼人に向かって絶叫した。

「見ろ!これがお前の言う保護か!これが守った結果なのか!」

傍らにいた彰も合わせて駆け寄り、「情緒不
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