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第2章

Author: ベリーラディッシュ
「今度は結婚式を盾に俺を脅すつもりか?ちゃんと戻ってきて、芝居にも付き合おうとしてるだろ。何が不満なんだよ」

私は静かに答えた。

「別に何も。ただもう芝居をする必要はないって言ってるだけ」

清人の顔色が一気に変わった。胸につけていた新郎用のブートニアを乱暴にテーブルへ叩きつける。

「わかったよ!やらなくていいならやらないさ!

そもそもこの結婚式は偽物だろ。先生に見せたいって、お前が俺に頼み込んできたんじゃないか。自分から中止したんだから、あとで泣きついてきても知らないからな」

遥が慌てて清人の腕をつかんだ。

「清人、寧々にそんな言い方しないで」

それから私を見る。その目はもう赤く潤んでいた。

「寧々、そんなふうにならないでよ。清人も言い方はきついけど、あの性格なのは知ってるでしょ?ちょっと優しく言ってあげなよ。それで済む話なんだから」

これまで喧嘩をするたび、悪いのが私でなくても、最後に折れるのはいつも私だった。

清人が機嫌を悪くすれば、清人の好きな食べ物を買っていった。

メッセージを無視されれば、会社の前で帰ってくるのを待った。

心が狭いと言われれば、気にしていないふりをして、何度も自分の物分かりのよさを証明しようとした。

目の前でわざと遥と親しげにされても、何も言わなかった。

でも今回はもう本当に疲れた。私は淡々と言った。

「帰るならさっさと帰って」

清人は怒りをあらわにし、遥の腕を振り払うと、そのまま振り返りもせず出ていった。

遥も彼を追いかけようとしたが、扉を出る直前に一度だけ私を振り返った。

「寧々、本当にがっかりした。こんな些細なことで、そこまで怒るなんて。先生が今の寧々を見たら、きっと悲しむよ」

扉が閉まる。会場は再び静まり返った。

入口に飾られた結婚式用の写真を見つめると、たまらなく滑稽に思えた。

二人は知らない。母はもう悲しむことさえできないのだ。

すべての後片付けを終えた頃には、もう外は暗くなっていた。

私は雑貨や荷物を詰め込んだ袋を抱え、清人と二人で暮らしている家へ戻った。

スマホを開くと、遥がSNSを更新していた。

9枚の写真がまとめて投稿されている。

【今日は一日、仕方なくサービスしてきました。親友の結婚式はなくなっちゃったけど、せっかくの衣装を無駄にするのももったいないしね】

一枚目、遥と清人がスイーツ店で並んで座り、楽しそうに笑っていた。

テーブルのケーキにはHappy Weddingと書かれている。

二枚目は遊園地だった。

ブライズメイド用のドレスを着た遥が、カメラに向かって横顔でピースをしている。

その隣では、清人が遥のドレスの裾を持ってやっていた。

三枚目は海辺。

風に飛ばされそうになった遥のベールを、清人が手を伸ばして押さえている。

そして最後の一枚。清人が遥のベールを整えていた。

二人の顔は、あと少し近づけばキスしてしまいそうなほど近い。

どの写真でも二人は幸せそうに笑っていた。まるで絵に描いたような恋人同士だった。

二人が着ているのは、私の結婚式のために用意した衣装なのに。

写真だけを見れば、本物の新婚夫婦にしか見えない。

本当の恋人である私は、ただの笑いものだった。

普段はSNSなんてほとんど更新しない清人まで、珍しく遥とのツーショットを投稿していた。

【この衣装も無駄にならずに済んだ】

コメント欄には二人をからかう言葉がずらりと並んでいた。

【二人とも、このまま結婚するの?】

【美男美女でお似合いすぎる】

【清人の目、本当にただの演技には見えないんだけど】

【この雰囲気すごい。もうそのまま結婚しちゃえば?】

一つ一つの冗談が、頬を平手打ちされているように痛かった。

遥はコメント欄で返信していた。

【変なこと言わないでよ。清人は寧々の彼氏なんだから】

【私はちょっと借りて写真撮っただけ】

それでも誰かしらがからかう。

【ウェディングフォトまで撮っておいて、まだ言う?】

遥はまた答えた。

【もう、やめてよ。私と清人は本当に何もないから】

【今日は私が無駄足にならないようにって、少し付き合ってくれただけ】

【楽しい写真を撮ったら、寧々も見て喜ぶかなって思ったの】

私はその一文をじっと見つめた。笑いながら、涙が落ちた。

私の結婚式の衣装を着て、私の恋人とカップル写真を撮った。

そのうえ私を喜ばせるためだったとまでいう。

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