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78話. オリンピックへの基準線

Autor: YuIm
last update Fecha de publicación: 2026-10-29 20:02:00

オリンピックを控えた、よく晴れた春の日。北区の代表強化センター、陸上専用トラック。

外周を屏風のように囲む桜の花びらが、春風に乗り、赤いモンドの走路へ、白い雪のように舞い落ちていた。

二十五歳の朝倉千紗は、国内女子短距離の先頭に立つ選手の一人だった。それでも、最近の映像には、後半に肩が固まる場面が残っていた。コーチ陣と何度も確認した動きなのに、試合ではまた出てしまう。この春にも、直すことがあった。

青葉アスリートクラブへの入団後、国内の実業団陸上選手権では全戦無敗。アジア陸上選手権の銀メダル。そして、スペインとドイツのグランプリで、着実に積み上げた国際大会のランキングポイント。それが、輝かしい実績だった。

千紗は公式ランキングを確かめ、コーチ陣から届いた、チームの検討用の表へ画面を切り替えた。同じ資料を何度も更新しているとわかっていても、なかなか手を止められなかった。

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