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班決め

Author: 緋村燐
last update Last Updated: 2025-06-20 19:51:02

 始まりはGW明けに行われる校外学習の班を決めるときのことだ。

 今年一年色んな行事で班別行動をするときにもこの班は使われる。

 だからみんな仲の良い子や好きな人と我先にとグループを作る。

 地味子に徹していたあたしは特別仲の良い子とかも出来なかったからグループ決めに完全に出遅れた。

 最初に男女それぞれで三、四人のグループになって、同じ人数の異性グループと班になるようにとのことだった。

 出遅れたあたしは自分から話しかけることも出来ず、入れてくれそうなグループは無いかな? と周囲を見回していただけ。

 そうしたらクラスの中でもイケてる感じのグループ三人組が声を掛けてきてくれた。

「倉木さんグループ決まった? まだならあたし達のところ入らない?」

 初めにそう話しかけてきたのは田中美智留(たなかみちる)さん。

 色んな髪型をしてくるオシャレな子だ。

 この日に限らず、良くあたしに話しかけて来てくれる。

 あたしが密かに思っている、いつかメイクしてあげたいランキングNO.2だ。

「実はさ、あたし達工藤のグループと一緒に班になろうとしたんだけど、あっち四人なのよ。だから倉木さんが入ってくれると助かる」

 そう言ったのは、良くも悪くも思ったことをハッキリと言う明川沙良(あけがわさら)さんだ。

 はきはきしていて気持ちが良い性格をしているので、男女共に人気があるみたい。

 ちなみにいつかメイクしてあげたいランキングNO.3。

「どう、かな? あ、もう決まってるなら無理にとは言わないよ?」

 そう言って気遣ってくれたのは宮野(みやの) さくらさん。

 ふわふわの髪をいつもハーフアップにしているとっっっても可愛い子だ。

 あざといとか言って嫌ってる人もいるみたいだけど、これが素なのは見ていれば分かる。

 そう、しっかり見ていれば分かる。

 そんな彼女はいつかメイクしてあげたいランキングの晴れあるNO.1だ。

 もうダントツで!

 そんな彼女たちに誘われたんだ。

 もう一も二もなくOKに決まってる。

 そうして同じ班になった工藤慎也(くどうしんや)くんのグループ。

 こっちもなかなか顔面偏差値が高い。

 工藤くんはそのグループの中でもリーダー的存在。

 と言っても色々と仕切っていく様なタイプじゃなくて、誰にでも優しくて責任感のある人だから自然とそうなっちゃうって感じだ。

 その工藤くんと一番仲が良いのが小林早和(こばやしさわ)くん。

 男子にしては背が低い方で、可愛い系の顔立ちをしている。

 よく工藤くんとじゃれ合ってて一部の女子にとても人気だ。

 そんな二人の間にスルリと入り込んで一緒に笑いあえるのが花田司(はなたつかさ)くん。

 ムードメカーって言うんだろうか。

 一見チャラ男っぽくも見えるけど、根は真面目で女の子にそれほど接近するようなことは無い。

 そしてもう一人は……。

 日高陸斗(ひだかりくと)。

 彼もきっとあたしと同じ。

 グループに入りそびれて一人だったから、工藤くんあたりに入れてもらったんだろう。

 日高くんはいわゆる地味男。

 あたしとはよく対(つい)にされる。

 地味男の日高と地味子の倉木って。

 だからと言って仲が良いわけじゃないし、まともに話したこともない。

 身長はそれなりにあるし、体格も悪くないと思うけれど……。

 安いシャンプーでも使っているのか髪はごわごわ。

 しかもそんな髪を伸ばし気味にしているものだから顔もハッキリ見えないし、仕上げは全く似合っていない黒縁の丸メガネ。

 同じ黒縁のメガネでもあたしの方が数倍マシだった。

 この面々を見ていると、男向けメイクもやってみたいなーと思ってしまう。

 最近は結構男性向け化粧品も出てるし、この間男の化粧の仕方を紹介する動画も見てみたけれど興味深かった。

 特に日高くんは別人ってなってしまうくらい色々やりたい。

 というか、やらずにはいられないってくらい|酷(ひど)い。

 だからあまり近付かないようにしていたんだけどな。

 まあでも同じ班になっちゃったんだから仕方ない。

 出来る限り話したり近付いたりしないようにしよう。

 そう思っていたんだけれど……。

「ねえ、このメンバーでどこか出かけない? この一年一緒に行動することも多くなるんだし、親交を深めるってことで」

 と、田中さんが提案した。

 人気者六名は「いいね!」とすぐに同意。

 日高くんは興味なさそうだけど、と様子を伺っていたけれど……。

「……いいんじゃない?」

 と特に反対はしなかった。

 そんな状態であたしが反対出来るはずもない。

 それに、みんなと出かけること自体は嫌ではなかったから。

 ただ、自分も含め皆にメイクを施(ほどこ)したいという欲求と闘わなくてはならないからきっと気疲れしちゃうだろうな、と思った。

 そんな感じで出かける場所も遊園地と決まり、部活に入っている人の日程に合わせてGW前の土曜日にという事になったんだ。

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