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第9話

Author: 抹茶の時間
渉が手配してくれたのは、ドレス「数着」どころじゃなかった。

ハンガーラックには何列も服がびっしり。それに合わせた靴やアクセサリー、それにプロのヘアメイクさんたちまでいた。

部屋が人や物でパンパンになってしまった。

渉がこんなに大事にしてくれるのを見て、私も適当に選ぶわけにはいかなくなった。

あれこれ着ては脱いでを繰り返して、ほとんど一晩中悩んでしまった。

結局、大人しくて控えめに見えるコーディネートを選んだ。

この日、渉は帰ってこなかった。

彼は10年も国に帰っていなかったので、わざわざK市の支社まで行くなんて珍しいことだ。

どれだけ忙しいか、想像がつく。

翌日、私はまた昼過ぎまで寝ていた。

目が覚めたらすでに午後だった。

服を着替えてメイクを終えると、ちょうど渉からメッセージが届いた。

【運転手に向かわせた】

車に乗ってから、知らない番号から電話がかかってきた。

直感でまた拓海だと思って、すぐに電話を切った。

またかかってきて、また切る。

結局、またブロックした。

でも、まさか運転手が車を停めた時、拓海の姿が目に入るとは思わなかった。

彼はホテルの入り口に立って、何度も電話をかけていた。

そして最後には、イライラした様子でスマホを叩きつけた。

顔を上げてホテルの名前を見ると、なんと昨日拓海が送ってきた場所だった。

ちょうどいいタイミングで、渉から電話がかかってきた。

「着いた?

下まで迎えに行こうか?」

彼の声は、いつも私を落ち着かせてくれる。

不機嫌そうな顔の拓海をチラリと見て、私は言った。「ううん、大丈夫。一人で上に行けるから」

多分、私の声が聞こえたんだろう。

拓海もこちらに目を向けた。

その時の彼の表情は、なんとも言い表しがたいものだった。

驚いているようでもあり、すごく喜んでいるようでもあり、でも抑えきれない怒りも混じっていた。

拓海は自分が叩きつけたスマホを蹴飛ばした。

目を赤くしながら言った。「明……」

でも、言葉になったのはそれだけだった。

彼は唇をきゅっと結ぶと顔をそむけて、「行くぞ」と言った。

そして少し得意げに言った。「君が来るって分かってた」

そう言うと、さっさと背を向けて歩き始めた。

このホテルは、たぶん貸し切りなんだろう。

私はふと、渉が言っていた「何人か友達に会
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