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第 145 話

Author: 一笠
凛が里親の元で、どんな風に育ったのか、誰にも分からない。

今になって、達也は凛がもう救いようがない人間だと悟った。

誠也は優奈に近づき、「優奈、俺も、お前の味方だ!」と言った。

美代子は優奈の手を握り、「家族みんなが、あなたの味方よ」と言った。

正義は何も言わず、難しい顔をしていた。

優奈のお腹の子が、佐藤家との縁談を進展させてくれると期待していたが、流産してしまって、すべて水の泡になった。

......

病室に戻ると、凛はベッドに横になった。緊張が解けた途端、激しい疲労感に襲われた。

聖天は白湯を凛に手渡しながら言った。「こんな些細なことで、あなたが自ら出向く必要はないだろう。疲れてしまう」
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