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第 335 話

Author: 一笠
「分かった」

凛は資料を受け取り、長机の中央に座ってざっと目を通した。そして、ある履歴書で指が止まった。

「霧島渚」という名前が書いてあった。

北都で霧島姓は珍しく、加えて、履歴書の内容が一般家庭のものとは思えないほど華やかだ。ほぼ間違いなく霧島家の人間だろう。

霧島家の令嬢が身分を隠して視察に来たのか?それとも何か別の目的があるのか?

なぜよりによって、自分のところに?

「凛さん、始めてよろしいでしょうか?」

アシスタントの問いかけで、凛は我に返った。

「ええ」と小さく返事をして、凛は履歴書をもう一度整理し、最初の面接者を待った。

それからというもの、次々と履歴書に目を通していった。

しかし
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