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第 599 話

作者: 一笠
他の二人は何も言わず、心配そうに階段の方を見つめていた。

書斎が静かになってから、それぞれ自分の部屋に戻っていった。

彩佳の言葉を思い出し、明美は落ち着かなかった。そして、輝に電話をかけることにした。

......

夜になった。

輝は仕事を終えると、凛の家へ向かった。

家に入ると、早速、いつもの調子で言った。「姉さん、母さんから伝言だ。やりすぎは禁物だって。行き詰まったら大変だから......ってさ」

「まさか、明美まで私のことに口出ししてきたの?」

雪の低い声が響き、輝は驚いて立ち止まった。そして、ダイニングテーブルでパソコンを見ている雪の姿に気づいた。

「おばあさん......ここにいたん
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