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第7話

작가: 夕風の旋律
その頃会社では、「本当に決めたの?」

そう言って社長の奥山茜(おくやま あかね)は由理恵の退職届を手に取り、やはり少し残念に思った。

由理恵は微笑んで頷いた。

「ええ、私には兄妹がいませんので。それに、両親とも最近あまり体調が良くなくて、だから、やっぱり実家に帰って落ち着こうと決めました」

「じゃあ、ご主人は?彼のお仕事はどうするの?」

由理恵の恋愛事情は、茜も知っていた。

大学の4年間は遠距離恋愛で、卒業後に由理恵ははるばる東都に嫁いできた。だから、二人の絆はとても強いものだと思われていた。

なにより真司は聖東大学で最も若い教授で、将来は約束されているのだから、彼が仕事を辞めるなんてあり得ないだろう。

「離婚するんです」

「離婚?」

それを聞いて驚いた顔をする茜を見て、由理恵はかすかに笑った。

「ええ、もう手続きを進めています」

由理恵は落ち着いていて朗らかな性格だ。だが、普段は穏やかに見えても、彼女の芯は強くて、一度決めたらそう簡単に信念を曲げることはないのだ。

そう感じたから、「わかった。それなら、あなたが今後ますますご活躍されることを心より期待しておくわ」

茜はそれ以上多く言わずに、退職届にサインした。

それから、由理恵は一日かけて仕事の引き継ぎをした。そして、夕方近くになると、離婚協議書が会社に届いた。

由理恵はそれを受け取ると、すべての条項を注意深く読んだ後、ためらうことなく署名した。

その晩、茜がみんなを食事に誘い、由理恵の送別会を開いてあげたのだった。

食事の後、誰かがカラオケに行こうと言い出したので、由理恵も断らずに一緒に行った。

以前は真司が嫌がるから、彼女は同僚との集まりにほとんど参加しなかった。

これまで、彼の好みをすべて尊重してきたのに、結局こんなみじめな結末を迎えるなんて、由理恵がなんだか空しい気分になっていると、ちょうどその場の雰囲気に合うかのように、今回の集まりは同僚の離婚をテーマにした歌で幕を閉じた。

それから由理恵が家に帰ったときには、もう夜中の12時を過ぎていた。

ドアを開けて中に入ると、真司がソファに座ってタバコを吸っていた。

由理恵が帰ってきたのに気づくと、彼は慌ててタバコを消して立ち上がり、申し訳なさそうな顔をした。

「ごめん、つい家の中で吸ってしまった」

「別にいいわ」

由理恵は、もうこの家すら手放そうとしているのだから、真司がリビングでタバコを吸おうが、どうでもよかった。

そう思って、靴を履き替えると、由理恵はバスルームに向かった。

しかしその行く手を真司が阻んだ。どうやら、彼は今日、どうしても彼女とちゃんと話さなければならないと思っているようだった。

「由理恵、話があるんだ」

由理恵は少し疲れていたし、喧嘩する気力もなかったので、彼女はその場に立ち止まり、まっすぐに真司を見つめた。

「ええ、どうぞ」

一方で、真司は今朝の自分がとった態度のせいで、由理恵は怒って口も利いてくれないだろうと思っていた。だから、彼女の帰りがこんなに遅いのも、意地を張っているからだと彼は考えたのだ。

でも、目の前の由理恵は驚くほど落ち着いていた。

そんな彼女を目の前にして、心の中ではまだ漠然とした不安があったが、この話はもう先延ばしにできないので、ついに彼はそれを口にした。

「蘭おばさんの容態はもうあまりよくないんだ。先生によると、いつどうなってもおかしくないって……それで、彼女、彼女に最後の願いがあって、その……」

真司は自分が悪いことをしているとは思っていなかった。それでもその言葉を続けることはなかなかできなかったのだ。彼は妻に、自分が別の女性と結婚しようとしていることをどう伝えればいいのか、分からなかった。

「それで彼女はあなたに翠の一生の面倒をみてほしい、あなたたちが結婚するのを見届けたい、とかお願いをしてきたってこと?」

今日、翠が言った言葉を、由理恵はまだ覚えていた。その場で何も言わなかったのは、真司自身の口から聞きたかったからだ。

今の状況からすると、どうやら彼もこの話がどれだけ人を傷つけるか、分かっているようだ。

「もう知ってたのか?」真司は少し驚いた。でも、話がここまで進んだ以上、彼も腹を割って由理恵に事情を説明するしかなかった。

「由理恵、俺が子供の頃、両親はいつも忙しくてさ。ある土砂降りの夜、病気になった俺を蘭おばさんが背負って病院に連れて行ってくれて、それから3日間、寝ずに看病してくれた。

彼女は命の恩人なんだ。だから、彼女に心残りがあるまま逝かせるわけにはいかないんだ。分かってくれるかな……」

しかし、そう話す真司が言い終える前に、由理恵が彼の言葉を遮った。

「もういいわ。分かった、同意する」

そう言って、由理恵は口角を上げて微笑んでみせた。

その笑顔を見て、真司の心にかかっていた暗い雲が、少し晴れた気がした。

彼は嬉しくなって、由理恵を腕の中に引き寄せ、力強く抱きしめた。

「やっぱりお前は分かってくれると思ってたよ。お前は本当に物分かりがいい。

あ、そうだ由理恵。翠とはただ式を挙げるだけだから。友達もたくさんは呼ばないつもりだが、それでも、もし誰かが変な噂をしたら、お前から説明してくれないか?」

一方で、彼にそう頼まれて、愛する人に抱きしめられているのに、由理恵は少しも温もりを感じることはできなかった。

彼女は胸の鈍い痛みをこらえ、「うん」とだけ返事をした。そして真司を押し退けると、寝室に向かって歩き出した。
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