Share

第8話

Author: ベリーラディッシュ
【業務提携とか言って、実質カップル宣言じゃん!ついにくっついてくれたかー!】

【高校からの推しカプが、仕事でもプライベートでも結ばれるとか激アツ!尊すぎる!】

【結音もこれでさすがに諦めがつくっしょ。とっくに身を引くべきだったんだよ】

【結音には3秒だけ同情してあげるw ま、水輝と小夜花は末長くお幸せにってことで!】

私は感情の動かない冷めた目でそのタイムラインを眺め、淡々とスワイプした。

そして、水輝や小夜花に少しでも繋がりのある同級生たちの連絡先とアカウントを、端から順番にすべてブロックしていく。

視界から消してしまえば、ただのゴミだ。煩わしいノイズは、あともう少しで始まる私の新しい人生には必要ない。

それからの1週間、私は誰とも連絡を取らなかった。

ホテルの部屋にこもり、デザインの専門書を読み漁っては感覚を取り戻す作業に没頭する。同時に、大学時代に描いたデザイン画のデータをすべて引っ張り出し、一枚一枚修正を加えてポートフォリオとしてまとめ上げた。

出来上がった作品集を、大手から小規模な個人事務所まで十社以上に送りつけた。

だが最初は、どこからも良い返事はもらえ
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 夢に散る花、君にさよなら   第12話

    周囲の記者やデザイナーたちが何事かと立ち止まり、好奇の視線をこちらに向けて囲み始める。カパッと開かれたケースの中では、大粒のダイヤモンドが眩い光を放っていた。かつて水輝が「いつか買ってやる」と口にしていたものよりも、はるかに大きく、信じられないほど高価な指輪だ。「結音、俺と結婚してくれ。今度は、俺の妻は君だけだと世界中の人間に知らせる。盛大な結婚式を挙げて、友人にも親戚にも胸を張って紹介する。君が行きたい場所にはどこへでも付き合うし、君がデザインの仕事を続けることも全力でサポートする。これからの人生すべてを懸けて君に償い、君だけを愛し抜くよ」冷たい床に跪き、縋るように見上げてくる水輝を見つめながら、私は静かに首を横に振った。「水輝、立って。もう、遅いのよ」「遅くない!全然遅くない!」水輝は血相を変えて、私の手を強く握りしめた。その手は氷のように冷たく、小刻みに震えている。「俺が、どうしようもないクズだったことは身に染みて分かってる!君との関係を隠して、数え切れないくらい傷つけて……君が一番俺を必要としていた時に、そばにいなかったことも……殴っても、罵ってもいい!許してくれて、俺のそばにさえ戻ってきてくれるなら、もう何だってする!会社の株を半分譲ったっていい、これからは君の言うことなら何でも聞くから……っ!」私は水輝の指からゆっくりと、自分の手を引き抜いた。「水輝。私はもう、あなたのことは許してるわ。けど、許すことと、やり直すことは違うの。あなたが私に刻み込んだ傷は、『ごめん』の一言で都合よく消えたりしない。私が部屋で一人きりで耐え忍んできた夜も、流してきた涙も、こんな高価なダイヤの指輪をもらったくらいで清算できるものじゃないのよ。昔の私はね、人を愛するってことは、自分のすべてを犠牲にして、どこまでも耐え忍ぶことなんだって思い込んでた。私がいい子にしていれば、いつかあなたは本気で私を愛してくれるって信じてたの。でも、今は分かる。本当の愛って、対等で、お互いを心から尊重し合えて、同じ歩幅で歩いていけることなのよ。あなたのそばにいた8年間、私は私じゃなかった。あなたのために夢を捨て、プライドを捨てて、単なる『あなたの付属物』として生きていた。あなたがいつか私を捨てるんじゃないか、周りから『釣り合わない』と

  • 夢に散る花、君にさよなら   第11話

    司会者から向けられたマイクを受け取り、私は客席をゆっくりと見渡しながら、静かに微笑んだ。「私が一番感謝したいのは――他でもない、自分自身です。どれほど暗く先の見えない底にいても、決して自分を投げ出さなかった私。自分を縛り付けていた場所から逃げ出し、一歩を踏み出す勇気を持てた私。そして、どんな壁にぶつかっても泥臭く夢にしがみつき、最後まで足掻いてくれた私自身に、心からのありがとうを伝えたいと思います」私が言葉を結ぶと同時に、ホール全体が割れんばかりの、万雷の拍手に包まれた。2年前、スーツケースひとつでこの街へやって来たとき、すべてはゼロからのスタートだった。篠原さんの事務所でアシスタントとして雇われた私は、お茶出しや資料のコピー、掃除といった雑務を毎日こなした。それでも、少しも苦にはならなかった。空き時間さえあれば先輩デザイナーたちの作業を真横で観察し、生きたスキルをスポンジのように吸収していった。夜はあのおんぼろアパートに帰ってから、深夜の2時、3時まで一人でデザイン画を極めるためにペンを握りある時、クライアントからの修正要求が10回以上も続き、担当のデザイナーがパニックに陥りかけたことがあった。そこで私が自ら名乗りを上げ、徹夜で全く新しいデザイン案を練り上げたのだ。すると信じられないことに、クライアントはそのコンペ案を一目で気に入ってくれた。それを機に、篠原さんは私に単独でプロジェクトを任せてくれるようになった。与えられたチャンスにはすべてしがみつき、死に物狂いで学び、働いた。仕事のクオリティは洗練されていき、私独自のスタイルも確立されていく。少しずつ、業界内で『西宮結音』の名前が知られるようになっていった。そして半年前。私は篠原さんと共同経営という形で、自分たちの独立したデザイン事務所を立ち上げたのだ。事務所自体は小さいけれど口コミでの評判は高く、今では新規の依頼が途切れることなく舞い込んでいる。授賞式が終わると、私は大勢の記者たちに囲まれ、フラッシュの波に呑まれた。その時だった。人垣の向こう側に、水輝の姿を見つけたのは。彼はそこにじっと立っていた。黒い無地のスーツを着た彼は、二年前と比べて一回り以上痩せこけており、髪には白髪すら混じっている。眉間に刻まれた深い皺からは、かつての傲慢なまでの

  • 夢に散る花、君にさよなら   第10話

    「えっ?」小夜花は呆然とし、手にしたコーヒーをこぼしそうになった。「何言ってるの?この案件、半年も前から進めてきたのよ?人もお金も限界まで注ぎ込んできたのに、今さらやめるなんて言われても――」「やめると言ったらやめるんだ」水輝は立ち上がり、小夜花からそっぽを向くように窓際へ歩み寄った。「小夜花。今後、俺に直接連絡してくるのはやめてくれ。仕事の用件なら、すべて秘書を通すように。プライベートな関係は、これで終わりにしよう」小夜花の顔から、さっと血の気が引いた。彼女はコーヒーカップをデスクに乱暴に置き、水輝の背中に歩み寄ると、目頭を赤くして声を荒らげた。「どういうつもり!?結音が出て行ったからって、私に八つ当たりしないでよ!あの女との結婚はどうせ妥協で、本当はずっと私のことが好きだったって、そう言ってくれたじゃない! タイミングが来たらあんな女とはさっさと離婚して、私と結婚するって……!」水輝は振り返り、一切の温度を感じさせない瞳で小夜花を見下ろした。「妥協だなんて、俺は一度も言った覚えはない。結音と結婚してからの3年間、あいつはずっと俺の正当な妻だった。……俺が最低のクズだったんだ。あいつを少しも大事にしていなかった。昔は、俺はお前のことが好きで、お前と俺こそがお似合いの運命の相手だと思い込んでいた。だが、結音が俺の元から消えて、ようやく気付いたんだ。俺はとっくの昔に、結音なしでは生きられない人間になっていたことに。あいつがいなくなって、初めて分かった……家に帰って明かりがついていることも、脱いだ服が綺麗に洗われていることも、具合の悪い時に誰かがそばで看病してくれることも……当然のことなんかじゃない。すべて、結音が俺のために命を削って尽くしてくれていたことだった。俺はそれを当たり前だと錯覚し、ただ搾取していただけだった」小夜花は歪んだ笑いを浮かべ、気づけばその目からポロポロと涙を溢れさせていた。「水輝……あなた、本当にバカね!あいつが出て行ってから、あなたがそんな抜け殻みたいになって……もう2ヶ月よ!? いい加減に目を覚ましたら!? あの女はとっくにあなたのことなんか忘れてる!もう絶対に戻ってなんかこないわ!」「ああ……分かっている」水輝の声はひどく低く、果てしない苦渋と絶望の色が滲んでいた

  • 夢に散る花、君にさよなら   第9話

    ピシャリと容赦なく閉ざされた結音家のドアを前にして、水輝は全身の血の気がサッと引いていくのを感じていた。結音の父に怒声を浴びせられ、水輝はようやく思い出したのだ。三ヶ月前、結音が流産したあの日のことを。あの日、結音は下腹部を襲う尋常ではない激痛に耐えながら、水輝のスマホに何度となく着信を入れていた。しかし水輝はそれを邪魔だとばかりに無視し続けた。ようやく電話に出た時も、ひどく苛立った声で言い放ったのだ。「結音、今度はなんだよ?こっちは取引先の人間と重要な打ち合わせ中だ。用があるなら家に帰ってからにしろ」結音は激痛から息を呑み、震える声で哀願した。「水輝……お腹が、すごく痛いの……流産、しちゃうかもしれない……お願い、帰ってきて、一緒に病院に行って……」しかし水輝は数秒黙り込んだだけで、当然のようにこう返した。「だから、こっちは今手が離せないって言ってるだろ。自分で救急車でも呼べよ。小夜花もここにいるんだ、あいつを一人にしておくわけにはいかない」そして、一方的に通話ボタンを切ったのだ。あの時、結音は一人きりで冷たい床に倒れ込み、脂汗を流して痛みにのたうち回っていた。結局、結音のすすり泣く声を聞きつけた隣人が異常を察知して救急車を呼んでくれたのだ。病院に運ばれたものの、医師からは「お腹の赤ちゃんは助からなかった」と告げられた。結音は真っ白な病室のベッドで天井を見つめたまま、ひと晩中声を殺して泣き続けた。だというのに、水輝が病院に姿を現したのは翌日の昼だった。手には見舞い用のフルーツバスケットを提げ、顔には相変わらず「面倒くさい」という苛立ちを張り付けていた。「ただの流産だろ?大げさなんだよ。医者も何日か休めば元に戻るって言ってたし。俺はまだ仕事が残ってるから戻るぞ。あとは家政婦でも手配しておくから」結音の体がどれほど傷ついているのか。心にどれほどの絶望を抱えているのか。気遣うような言葉はただの一言もなかった。水輝はフルーツを適当に置くと、妻の顔を見ることもなく、さっさと病室から出て行ったのだ。……誰もいない静まり返ったマンションに帰宅した水輝は、初めて自分の住むこの部屋を「広すぎて、ひどく冷たい」と感じていた。焦りに駆られて部屋中を引掻き回し、結音の持ち物を探したが、彼女は自分の痕跡など微塵も残

  • 夢に散る花、君にさよなら   第8話

    【業務提携とか言って、実質カップル宣言じゃん!ついにくっついてくれたかー!】【高校からの推しカプが、仕事でもプライベートでも結ばれるとか激アツ!尊すぎる!】【結音もこれでさすがに諦めがつくっしょ。とっくに身を引くべきだったんだよ】【結音には3秒だけ同情してあげるw ま、水輝と小夜花は末長くお幸せにってことで!】私は感情の動かない冷めた目でそのタイムラインを眺め、淡々とスワイプした。そして、水輝や小夜花に少しでも繋がりのある同級生たちの連絡先とアカウントを、端から順番にすべてブロックしていく。視界から消してしまえば、ただのゴミだ。煩わしいノイズは、あともう少しで始まる私の新しい人生には必要ない。それからの1週間、私は誰とも連絡を取らなかった。ホテルの部屋にこもり、デザインの専門書を読み漁っては感覚を取り戻す作業に没頭する。同時に、大学時代に描いたデザイン画のデータをすべて引っ張り出し、一枚一枚修正を加えてポートフォリオとしてまとめ上げた。出来上がった作品集を、大手から小規模な個人事務所まで十社以上に送りつけた。だが最初は、どこからも良い返事はもらえなかった。「3年も実務から離れているのは致命的だ」「ただの事務員からデザイナーへの転身なんて無謀すぎる」。そんな冷たい言葉で、何度も門前払いされた。それでも私は折れなかった。不採用の通知が来るたびに、ポートフォリオを見直し、修正を重ねる。10回断られたら、10回ブラッシュアップする。その繰り返しだった。そしてついに、ある小さなデザイン事務所が面接の機会をくれた。面接の当日。私は飾り気のない白いシャツにジーンズという身軽な格好で、自作のポートフォリオを抱えて事務所へ向かった。事務所の代表を務める女性――篠原さんは30代半ばの気さくな人だった。私のポートフォリオを熱心にめくり、いくつか専門的な質問を投げかけた後、ふっと口角を上げてこう言った。「結音さん、採用よ。3年のブランクはあるけれど、デザインに対する熱意が作品からすごく伝わってくるわ。確かなセンスがあるし、腹を括って努力する気があるなら、きっと結果を出せるはずよ」その言葉を聞いた瞬間、不覚にも泣きそうになってしまった。自分の能力と夢を、ひとりの人間として正面から肯定してもらえたのは、一体何年ぶりのことだ

  • 夢に散る花、君にさよなら   第7話

    「いい加減にしろよ!言っておくがな、俺は離婚なんて絶対に認めないからな!絶対にな!俺から離れて、一人でまともな生活ができるとでも思ってんのか!?この街でお前には俺しかいないんだぞ!たかだか手取り十数万円の安い給料で、俺がいなくなったら家賃も払えないくせに。大好きな絵を描く画材だって買えなくなるんだぞ!一時の感情でヒステリー起こすな! 後になって泣きついてきても遅いからな!」私は水輝の手を思い切り振り払った。私の手首には、彼に強く握られた赤い指の痕がくっきりと残っていた。「水輝。私のこと、見くびりすぎよ」私は彼の目を真っ直ぐに見据え、一言一言、噛み含めるように言った。「私が大学院への進学を諦め、デザインの道も捨てたのは、しがない事務員にしか成れなかったからじゃないわ。私がこれらをすべて投げ打ってでも、あなたにはそうするだけの『価値がある』と信じていたからよ。夫婦なら、苦楽を共にして支え合うものだと思ってた。私があなたに尽くしていれば、いつか必ずその思いに応えて、私を大切にしてくれると信じてた」でも、今はっきり分かったわ。あなたにそんな価値はなかったって」私はスーツケースの持ち手を引き、玄関へと向かった。ドアに手をかけたところで、この3年間を過ごした我が家を最後に一度だけ振り返る。リビングのソファは、私が選んだライトグレーのもの。汚れが目立ちにくくて座り心地がいいからとこだわった。ベランダのポトスは私が苗から育てたもので、今では手すりいっぱいに緑の蔦を伸ばしている。キッチンの鍋や食器も、私が少しずつ吟味して買い揃えたものだ。この家のどこを見渡しても、私の温もりと生活の痕跡が残っている。ここはかつて、私が夢見た「家」だった。水輝と一緒に、この先もずっと一生を添い遂げるはずの場所だった。しかし今の私には、この空間がただひたすらに冷たく、絶望の象徴にしか見えなかった。「その離婚協議書はそこに置いておくわ。サインしたら、さっきメッセージで送った黒川弁護士に連絡して。もし意地を張ってサインしないつもりなら、こっちは裁判を起こすわよ。法廷で争うことになれば、お互い世間体も悪くなるでしょうしね」言い終わるや否や、私はドアを開け、もう二度と振り返ることなく外へ出た。背後の閉まりかけたドアの隙間から、水輝

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status