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第4話

Author: 佳宵子
彼女は、チャリティーオークションの招待状を送ってきた。

「主人が海外出張なの。付き合ってくれない?」

断るつもりだったが、リンク先の出品一覧を見た瞬間、胸が大きく跳ねた。

そこにあった深い緑色をした翡翠の腕輪は、蓮の起業資金のために私が質に入れた、母から受け継いだ大切な形見だった。当時、2400万円で手放した。

蓮の事業が軌道に乗ってから買い戻そうとした。けれど、そのときにはもう別の人の手に渡っていた。

私は拳を握りしめた。蓮名義の小遣い口座には、使わずに残した金が数億円ある。どうしても、あれだけは取り戻したい。

まさか、蓮と詩乃までオークションに参加しているとは思わなかった。

「澪さん、今夜から私も一緒に住むことになったんです。これからよろしくお願いしますね」

蓮も当然のように命じた。「帰ったら、まず詩乃に温かいスープを作ってやれ」

私は2人を無視して、ただ腕輪が出てくるのを待った。胸の奥がずっと落ち着かなかった。

最後の品が運ばれてきたとき、隣に座っていた蓮の肩もびくりと揺れた。私と同じように、すぐにそれだとわかったのだ。

蓮は私を振り返った。「俺が落としてやる」

けれど私が口を開くより先に、詩乃が蓮の腕に絡みつき、甘えた声を出した。「きれい。すごく好き。これ、ほしい」

蓮は迷いもなくうなずき、それから私に言った。「詩乃が飽きたら、お前にやる」

私は思わず口走った。「だめ」

スタート価格は6000万円。私はすぐに札を上げた。

だが蓮は、一気に2億円まで値を吊り上げた。

結果は言うまでもない。私の負け。

閉会後、スタッフが翡翠の腕輪を運んできた。

私はすがるように蓮を見た。「これが私にとってどれほど大切なものか、あなたは知ってるでしょう。私に譲って。お金は必ず返すから」

けれど言い終えるより先に、詩乃が手を振り上げ、腕輪を床に叩きつけた。翡翠は一瞬でいくつにも砕け散った。

気づいたときには、私は詩乃の頬を打っていた。

詩乃は甲高い悲鳴を上げ、蓮に飛びついて泣き出した。

「わざとじゃないんです」

蓮は激怒し、私を床へ蹴り飛ばした。

そして蓮は電話を取り出し、誰かに命じた。「雨音への支払いを止めて、今すぐ病室も引き払わせろ!お前は痛い目を見ないとわからないんだな!」

私は恐怖のあまり蓮に駆け寄り、やめてと懇願しようとした。けれどすぐに警備員に会場の外へ放り出された。

外は滝のような雨で、タクシーなど捕まらなかった。

私はハイヒールを脱ぎ、裸足のまま雨の中を、狂ったように病院へ走った。

けれど、間に合わなかった。擦り切れた足を引きずって病院へたどり着いたとき、雨音はすでに霊安室へ運ばれていた。

私は蓮に電話をかけ、問い詰めた。「あなた、それでも人間なの?雨音がいなければ、今のあなたはなかったのよ。なのに、よくもあの子を死なせたわね!」

だが電話口から聞こえてきたのは、詩乃の声だった。

蓮は鼻で笑った。「嘘をつくな。俺は本当に病室を引き払わせろなんて言ってない。さっさと家に戻ってスープを作れ」

電話が切れたあと、私は笑った。目の奥が熱くなるほど、笑い続けた。

本当は、このまま静かに1ヶ月が過ぎるのを待って、私たちの結婚を終わらせるつもりだった。

向こうがここまでやるなら、私ももう容赦しない。

雨音の遺体を引き取り、きちんと見送ったあと、私は書類の束を抱えて警察署へ向かった。

私の肝臓移植同意書と一緒に隠されていたものだ。

蓮を地獄に叩き落としてやる。

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