LOGIN修の長い腕が、家族みんなをしっかりと抱きしめた。金色の陽射しの中、四人家族がぴったりと寄り添い、光が彼らの身体を優しく包み込む。まるで柔らかなヴェールのように、その光は暖かく静かで、家族のシルエットを一層明るく照らしてくれる。子どもたちは両親の腕の中で、無邪気な笑顔を浮かべていた。彼らはその温もりの中で、世界で一番安心できる港を見つけたのだ。金色の輝きと優しい風に包まれ、家族は互いに寄り添い合い、柔らかな幸福を分かち合っていた。......深夜、若子は夢を見た。千景とおばあさん―二人は並んで楽しそうにトランプをしている。まわりには鳥のさえずりと花の香りが漂い、まるで天国のような穏やかな世界だった。おばあさんは、若子が修とよりを戻したことを心から喜んでいた。千景もまた、微笑みながら若子に語りかける。「若子、君が幸せそうで、本当に嬉しいよ」「千景、あなたは私を恨んでる?」若子は少し不安そうに尋ねた。千景は優しく首を振って微笑む。「バカだな、君を恨むわけないだろ。俺は、君が幸せになることを一番願ってる。この人生は、藤沢と子どもたちと一緒に、毎日楽しく過ごしてほしい......もしまた縁があったら、来世でもう一度君に会いたいな」......若子が目を覚ますと、窓の外はすでに明るくなっていた。隣には、まだ眠っている修の穏やかな寝顔がある。朝の陽光が差し込む中、若子はそっと手を伸ばし、修の成熟した横顔を優しくなでた。―こんなに長い歳月が過ぎても、隣にいるのはやっぱり、最初に愛し、時に憎んだ男だった。彼はすべてを与えてくれた。心も体も、何度も傷つき、苦しんでくれた。どんな過去があっても、もうすっかり償われている。今、若子は再び修を愛していた。「修、愛してるよ」そう呟きながら、彼の頬にキスを落とし、耳元でそっと囁いた。修は目を開けて、隣にいる愛しい人を見つめる。彼女の顔を両手で包み、今度は自分から唇を重ねた。「俺も愛してる。絶対に、お前から離れたりしない」温かな朝日が窓から二人を照らし、新しい一日が静かに始まる。人生という旅路には、いくつもの出会いと別れ、愛と痛みが交錯する。平坦な道などなく、傷つき、迷いながら歩いてきた。けれど、だからこそ、人は成
修は、若子にもう一度「愛」の可能性を感じさせてくれた。時が流れるうちに、彼女の心も少しずつ開かれていった。愛は決してひとつの形にとどまらない。それは、時間や経験と共に変化していくもの。若子の心の奥底には、今も千景への想いが残っている。けれど同時に、今そばにいる人たち、今この瞬間の幸せを大切にすることも覚えていった。想い出は色あせることなく残るけれど、今を生きて、愛することもまた大切なことだ。若子の心の中で、千景は永遠に特別な存在。でも、その「特別さ」の中で、修も自分だけの居場所を見つけてくれた。それは、人生というものの感情の成長と変化。千景はもうこの世にいない。だからこそ、いつまでも過去にとらわれてはいけない。若子は千景への想いを、心の奥深くにそっとしまい、残りの人生は、修と子どもたちをしっかり愛して生きていこうと決めていた。「初希」若子は初希をそっと引き寄せて語りかけた。「初希のパパは、とても初希を愛してた。けど、初希が生まれる前に会えなかった。だから、パパの名前だけは覚えていて。冴島千景っていうのよ」初希は素直にうなずく。「うん、覚えておくよ、ママ」それから手を上げて、墓碑に向かって元気に挨拶した。「パパ、こんにちは。私はママの言うこと、ちゃんと聞くよ」若子は初希を抱きしめ、涙を浮かべながら墓碑に語りかけた。「千景、見て。私たちの娘、こんなに大きくなったよ。私たちは絶対にあなたを忘れない。これからも、何度も会いに来るからね」そのとき、やわらかな風が吹いて、若子の髪をそっと揺らした。その風はとても温かくて、やさしかった。若子は、不思議なくらいはっきりと感じた―まるで千景が傍に来て、そっと頬に触れてくれたみたいだった。「千景......今の、あなたでしょ?」そう言いながら、彼女は辺りを見回したが、そこには誰もいなかった。「千景、私はきっと元気に生きていくから。たまには夢の中で会いに来てくれると嬉しいな」涙をにじませながら、指先にキスをして、それを墓碑にそっとあてる。まるで、千景に口づけを贈るかのように。......修の車は少し離れた場所に停まっていた。卓実は退屈そうに車の中で待ちくたびれていた。修は外で車のボンネットにもたれ、静かに二人を待
修と若子は、二人の子どもを連れて千景の墓前にやってきた。出発の前、若子は「私と初希、千景と少しだけ二人きりでいさせて」と頼んだ。修は卓実を連れて、先に車へ戻ることにした。柔らかな金色の光が大地に差し込み、やさしく包み込むように、全てを薄い金色のヴェールで覆っていく。それはまるで、時の流れがくれる静かな温もりのようだった。若子はそっと墓碑をなでた。「千景、ごめんね。こんなに長く、顔を見に来られなくて」最後に来たのは、数か月前。帰国のとき、こっそり一目だけ手を合わせた。若子は胸元から小さな骨の欠片を取り出した。「いつもあなたを持ち歩いているから、どこに行っても一緒にいられる気がするんだ。ただ、この墓碑の中だけじゃない。あなたは私の心の中、ずっと一緒だよ。千景、私......修とやり直したの。彼は私のために命まで投げ出してくれた。どうしても、その気持ちを見て見ぬふりできなかった。もう拒絶することなんてできなかった。それは『感動』だったのかもしれない。でも、私は本当に彼をまた愛するようになった。だって彼は、もうどうしようもなく私に優しくて、間違いを犯したことがあっても、その分だけ償ってくれたし、もう愛さずにはいられないの。千景、私が修とやり直したからって、あなたへの想いがなくなったわけじゃない。あなたのことは、ずっとずっと心の一番深い場所で愛してる。あなたのことを忘れることなんて、一生できない」若子は涙を流しながら、手のひらの骨片にそっとキスをした。「千景、この骨の欠片は箱に入れて、別の部屋に置いておくね。もうベッドサイドには置かない。それは修に悪いから。でも、この欠片はこれからもずっと大事にするし、私と修が旅行するときも、一緒にあなたを連れていくからね。あなたにも世界の美しさを見せてあげたいんだ。私たち二人で過ごした日々は、一生忘れない。あれは、私の人生で一番強く心に刻まれた思い出だよ。あなたがいなくなってから、ずっと自分を責めてた。私があなたを死なせたんじゃないかって。でも、もうそろそろ向き合わないとね。あなたも私に幸せになってほしいって、きっと思ってるよね。これからの人生、私はしっかり生きる。あなたの分も、しっかり生きて、愛も家族も、友情も、大切にして、この世界の素晴らしさをいっぱい感じていくから。千
卓実は今日は本当に楽しかった。一日中はしゃぎ回って、家に帰った時にはクタクタ。お風呂に入ると、ベッドに倒れ込んで、あっという間に寝息を立てた。もう、子守唄もいらないくらいだった。卓実は時々、初希と同じ部屋で寝ることもあるし、別々の部屋で寝ることもある。夜遅く、若子は初希の部屋に行き、布団をかけてお話をしてあげた。「初希、今日は叔父さんとどうだった?」「うーん、まあまあかな」初希は答えた。「でも叔父さん、すごくドジなんだもん。ご飯を焦がしちゃって、私ずっとお腹空いてたの」「そうなの?」若子は思わず笑いそうになる。「それはちょっと困るね」「でも叔父さんはすごく優しいよ。私、けっこう好き。今日、『パパ』って呼んでいいよって言われた」若子の目がぱっと明るくなる。「それで、パパって呼びたい?」初希は小さくうなずいた。「うん、呼びたい。でも明日言う」大きなあくびをした初希。もう眠気に勝てない。若子はそっと彼女の頬を撫でる。「いい子だね、おやすみ」......若子は自分の部屋に戻り、お風呂に入ったあとベッドに横になった。そこへ修が待ちきれずに話しかけてくる。「初希、何か言ってた?俺のこと嫌いって言ってなかった?今日、ご飯を待たせちゃったから......」「心配しなくて大丈夫。初希はあなたのこと、結構気に入ってるみたいよ」「本当に?」修は今日の出来事を思い返して自信なさげだった。「本当だよ。子どもなんて、優しくしてあげればすぐ分かってくれるもの」修はようやく安心した様子。「よかった。ところで、卓実とどうだった?」「すごく仲良くなれたよ。やっぱりうちの子は素直だよね。ただ、私がずっとそばにいなかったから、愛情に飢えてたんだと思う。でも、もう絶対に離れない―あ、そうだ、前に私、あなたに誤解してたことがあったの」「何のこと?」「卓実が教えてくれたの。この前ここに来た女性は、卓実のカウンセラーだったんだって。最初からそう言ってくれればよかったのに」修は苦笑いして、「お前がすぐに『女だ』って疑うから、ちょっと意地悪したくなったんだよ。俺のそばに女性がいるとすぐに変な顔するから」若子は修のほっぺたをつまんだ。「もう、まるで子どもみたい」修は不満そうに言う。「俺が子どもかどうか、お前が一番
親子の絆を深める作戦は、翌日ついに始まった。若子は卓実を連れて遊園地へ。最初、卓実はちょっとぎこちなかった。ママと二人きりで過ごすのは、これが初めてだったからだ。でも、若子の明るさと、優しくて根気強い関わりに触れていくうちに、卓実もだんだん心を開いていった。二人でメリーゴーランドに乗ったり、バンパーカーやボート、滑り台、トランポリン、バイキング......母と息子は夢中になって遊んだ。卓実は汗だくになりながらも、最高に幸せそうで、ぜんぜん止まりたがらなかった。いつのまにかママにすっかり甘えられるようになり、自分から抱きついて「ママ、だっこ」とせがむことも。若子も惜しみなく愛情を注ぎ、時には背中に卓実をおぶって歩いた。でも卓実は優しい。「ママが疲れちゃう」と思ったのか、少しすると自分から降りて、今度は手をつないで別の遊びに向かった。その日、若子は卓実から一つの真実を聞くことができた。前に修の家で見かけたあの女性―実は卓実の心理カウンセラーだったのだ。卓実が元気がないとき、その先生が話を聞きに来てくれていた。修とは何の関係もなかった。以前は、その女性を見て「修に新しい恋人ができたのかも」と勘違いしていたけど、自分の病気や修の肝移植のことなど色々あって、すっかり忘れていた。本当のことを知った今、若子は息子にもっと申し訳なく感じるし、彼女が自分のいない間、卓実を支えてくれていたことにとても感謝した。......一方その頃―修と初希は、思ったほど順調ではなかった。修は「今日は俺がご飯を作ってあげる!」と意気込んでいた。レシピどおりに作れば、簡単だと思っていた。―が、現実は違った。料理を焦がしてしまったのだ。初希は、気が付けばもうすぐ午後二時。お腹がぺこぺこになって、仕方なく冷蔵庫からリンゴを取り出し、かじっていた。修は情けなく思い、結局プロの料理人に最速でランチを作ってもらうことに。初希は夢中でご飯を頬張り、修は「ゆっくり食べな、喉に詰まるぞ」と注意した。すると初希が、不思議そうな顔で修を見つめて質問した。「叔父さん、パパと仲良しなの?」修は不意に千景のことを聞かれて驚いた。「まあ、仲良しかな。君のパパはすごくいい人だったよ」「ママもそう言ってた。でも、ママは叔父さ
さらにしばらく経ったある日―若子は、最近の卓実がどこか元気がないことに気づいた。何度か「どうしたの?」と聞いてみたが、卓実は「なんでもない」と言っては、すぐに逃げてしまう。土曜日、若子は仕事が休みで、リビングのソファで本を読んでいた。そこへ初希が二つのおさげを揺らしながらやってきて、「ママ、ぎゅってしていい?」と甘えてきた。こんなに可愛い娘を、若子が拒む理由なんてない。本を閉じて、すぐに手を広げる。「もちろん、来ておいで」初希は嬉しそうにソファにのぼり、若子の膝の上で思い切り甘えた。その様子を、少し離れたところで卓実が見ていた。若子が「卓実」と声をかけようとした途端、卓実はさっとその場を離れてしまった。若子の笑顔は曇り、少し心配になった。夜になり、若子は初希を修に預け、卓実と二人きりで話すことにした。「卓実、最近どうしたの?ママが何か悪いことしちゃった?」「別に」卓実はトランスフォーマーのおもちゃをいじっている。若子は隣に座る。「そんなことないでしょ。お口がへの字になってるもん。ママ、何か悪いことしたなら直すから、教えてくれない?」優しく語りかける若子。「どうやって直すの?ママは初希のことが好きなんだもん」若子は少し驚く。「ママが初希ばかり可愛がってるって思ってるの?」「じゃあ、ママは僕と初希、どっちが好きなの?」卓実は真正面から問いかけた。「どっちも同じくらい大事よ。手のひらも手の甲も、どちらも自分の一部なんだから」「でも手のひらの方が、肉が厚いよ。初希は手のひら、僕は手の甲。だからママは初希のことをもっと好きなんでしょ」これが卓実がずっともやもやしていた理由。ママは初希のことを気兼ねなく抱きしめたり、甘えさせているけど、自分にはどこか遠慮があるように感じていた。本当は自分だって、ママに甘えたい。でもちょっと恥ずかしくてできなかった。それがいつの間にか、やきもちに変わっていたのだ。「卓実」若子はそっと彼の肩に手を置いた。「卓実も初希も、ママが命をかけて産んだ大切な宝物。どちらも大事で、ママが片方だけを愛するなんてことは絶対ない。でも、もしママのせいでそう感じさせてたなら、それはママが悪い。今日はママと一緒に寝て、昔みたいにお話を聞かせてあげるから、いい?」子ども
ビデオには、松本若子が遠藤西也と一緒に食事をしている様子が映っていた。二人とも非常に品のある服装をしており、まるでカップルのようだった。その日はちょうど若子の誕生日だった。修はその映像を見ながら、若子が以前言っていたことを思い出した。彼女は遠藤西也と初めて会ったのは、学校で学士号を受け取った時だと話していた。しかし、村上允が送ってきたこのビデオは、明らかに若子が学士号を取得する前のものだった。松本若子はずっと修を騙していたのだ。遠藤西也とはすでに知り合っていたのに、後から初めて会ったと装っていたのだ。彼女は西也と密かに付き合っていたのに、修にはあえて嘘をついていたのだ!なんてことだ、松本若子!
松本若子は、遠藤西也とともに服を着替え、ヘリコプターに乗って帰るところだった。松本若子は魂が抜けたようにぼんやりとしていて、どこに行くかも言わなかった。ヘリコプターが降りた時、彼女はようやく遠藤西也が自分をとある別荘に連れて来たことに気づいた。そこは見知らぬ場所だった。「降りて」遠藤西也は、松本若子が倒れないよう慎重に手を差し伸べた。松本若子は周りを見回し、「ここはどこ?」と尋ねた。「君がとても悲しそうだったから、行き先を言わずに連れて来たんだ。ここには僕と数人の使用人しかいないから安心して」「西也、本当にごめんなさい。迷惑をかけてしまったわ」道中、彼女は魂が抜けたように何も考えられなかった。
「おばあちゃん、どうして急にその手術のことを持ち出すんですか?雅子はもう十分苦しんでいるんだから、これ以上......」「黙りなさい!」石田華は藤沢修の言葉を遮った。「私は桜井さんと話をしているんだから、あなたが口を挟む必要はないでしょ?」「そうよ、修」伊藤光莉も言葉を添えた。「おばあちゃんが話をしているんだから、最後まで聞かせて。おばあちゃんがここで彼女を殴るわけでもないし、焦らないで」......藤沢修はそれ以上言い返すことができず、静かに黙った。一方、桜井雅子は非常に緊張していた。「桜井さん、その手術のせいで今も体調があまり良くないと聞きました。心臓にも問題が出ているとか?どうなのか、正
藤沢修は一晩中眠らずに松本若子のそばに付き添い、彼女が少しでも動いたり、苦しそうにしていないか、喉が渇いていないかを何度も確認していた。夜が明け、藤沢修は彼女の額に手を当てて温度を確認した。熱が下がっていることに気づき、ようやく安堵の息をついた。彼は疲れ果てた様子でベッドから起き上がり、手で鼻の付け根を軽く押さえながら、ぼんやりと浴室に向かって歩き始めた。途中、足がゴミ箱に当たり、彼は驚いて立ち止まった。松本若子を起こさないか心配になったが、幸いにも彼女はぐっすりと眠っていた。彼はゴミ箱を元の位置に押し戻そうと身をかがめたが、そこでゴミ箱の中に2錠の薬があるのを発見した。彼の顔に疑問が浮かんだ







