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第1237話

Author: かおる
もし仁志が、清子みたいに浅くて分かりやすいタイプだったなら。影斗も、ここまで神経を尖らせることはなかっただろう。

だがこの日は、異様なほど静かだった。星が榊家で、老夫人と並んで絵を眺め、話し込み、鑑賞を終えるまで――何ひとつ起きない。

そのせいで、影斗の中に小さな迷いが芽を出していた――俺の考えすぎだったか?

星を送ろうと外へ出た、その瞬間だった。

門の外に、車が一台停まっている。そして星は、それを見た途端に足を止めた。

見慣れた車。彼女は近づいて、軽く窓を叩く。

「……仁志?どうしてここに?」

ゆっくり窓が下り、整いすぎる顔立ちが覗いた。

「星野さん。迎えに来ました」

仁志は穏やかな声で言う。「病院まで遠いので、これからは榊さんに頼らず、僕が送ります。これは僕の役目です」

言い分はもっともで、気遣いもちゃんとしている。だからこそ星は、少しだけ眉を寄せた。

「でも……怪我、まだ……」

「もう大丈夫です」仁志は明るく笑う。「車の運転ぐらいは問題ありません」

それから冗談めかして付け足した。「それに、給与をいただいている以上、何もしなければ契約は解消されます」

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