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第2112話

Author: かおる
コーヒーの香りが漂っている。かすかな苦みを帯びた香り。

「疑ったことがないわけじゃない」と星は言った。「でも、彼の行動が矛盾してる。もし本当に記憶が戻っているなら、なんで忘れたふりをするの?隠すつもりなら、なんであんなに隙を見せるの?」

顔を上げて、怜央の目を見た。「仁志が隠したいと思ったなら、あんなにわかりやすい形で気づかせるはずがない」

「それは正しい。彼にはその力がある。でも……最初から隠すつもりがなかったとしたら?記憶のことを直接聞いたことはあるか?」

星はしばらく黙った。「でも、もし戻っているなら、なんで私に対してあんなに他人行儀なの?」

「昨日一緒にいた様子は、他人行儀じゃなかっただろう。それにもし本当に最近知り合ったばかりなら、なんであいつはお前を『星』と呼ぶんだ?最初に会ったとき、仁志はお前のことをそう呼んでいたのか?」

その問いが、星の記憶の奥を引っかいた。

——違う。

しばらくの間、仁志は「星野さん」と距離を置いた呼び方をしていた。

いつから変わったのか、もう覚えていない。周りの人間が皆そう呼ぶから、自然と仁志も倣ったのだと思っていた。そこに違和感
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