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第257話

Author: 楽しくお金を稼ごう
要はずっと天音の傍にいて、彼女の手を握りしめ、体に触れられた痕跡を見ながら、ますます冷酷な眼差しになった。

警察は供述を取り終えると、要に言った。「遠藤隊長、こちらは松田さんを検察に送致します」

そう言うと、警察は天音の方を向いた。「松田さんは風間さんを訴えるつもですが、あなたの証言が必要になります。

風間さんが松田さんを殴った理由は何ですか?」

天音は暗い表情で、淡々と答えた。「私があの男に乱暴されているのを見て、助けようとして、あの男を殴ったんです」

「お二人は既に何の関係もないので、今回の風間さんの暴行に対し正当防衛を主張するのは、いささか難しいかもしれませんね」警察は自分の見解を説明した。「松田さんは集中治療室に入り、怪我の具合は非常に深刻です」

天音は血の気の引いた唇を震わせたが、何も言えなかった。

警察が帰った直後、龍一が直樹を連れて駆けつけた。

「ママ!」天音の姿を見ると、直樹は慌てて彼女の胸に飛び込んだ。「ママ、大丈夫?」

直樹と会うと、天音の気分は少し良くなった。「遅かったね。ママはもうこの遠藤おじさんに助けてもらったよ」

周囲の人の沈んだ表情を見て、心配をかけまいと、天音は冗談を言った。

「遠藤おじさん、ママを助けてくれてありがとう」直樹は要に感謝した。

この言葉は少し気に障ったが、要は直樹の頭を撫でた。子供に腹を立てることはなかったが、大人に対しては……

要は龍一の方を一瞥した。

「天音からネット電話をもらって、すぐに桜子と翔吾にIPアドレスを調べさせましたが、一歩遅かったんです」龍一も自分の不甲斐なさに苛立っていた。「とにかく、天音が無事でよかったです」

この説明は、要の機嫌をさらに損ねてしまったようだ。

要の眼差しは、底なしの冷たさをたたえていた。

天音は検査を終え、直樹と楽しそうに言葉を交わしながら病院を後にした。

「要と天音の結婚式は5日後で、佐伯教授と直樹くんも時間があれば、ぜひ出席してください」玲奈は、息子が何も言わず、ただ黙って天音が父子に独占されているのを見ていることに腹を立てて、口を開いた。

「結婚式?」龍一と直樹は驚き、明らかに受け入れられない様子だった。

「今日はこれで失礼します」玲奈は天音を抱き寄せながら外へ歩き出した。「招待状は後日お宅へお送りしますので、必ず来てくださいね」

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