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第2話

Author: 石垣好
「ちょっと皆さん、仕事一旦止めて。こちら、会社が特別にお招きした水原顧問です。

今後のプロジェクトの最適化を担当していただきます」

彼の視線が場内を見渡すが、なぜか私だけを飛ばした。

青美はさわやかに挨拶をし、その目が最後に私に止まった。

彼女はまっすぐに歩いてきて、私の机の前で立ち止まった。

「お久しぶりです、斎藤さん」

私は爪を掌に食い込ませ、腰を支えながら立ち上がった。

「お久しぶり」

健吾が歩いてきて、私の椅子を指さした。

「汐、お前のその腰当てクッション、青美に貸してくれないか?」

私は言葉を失った。

その腰当てクッションは、恥骨痛で座っていられない私のために特注で作った妊婦専用のものだ。

「青美は、昔腰を痛めててさ、硬い椅子はつらいんだよ」

健吾は、まるで古紙を一枚せがむような気軽さで言った。

周りの同僚たちの視線が一気に私に集まった。

私は健吾を見つめ、その目に一片の後ろめたさでも見つけ出そうとした。

しかし、そこにはなかった。

彼の目にあるのは、苛立ちと催促だけだった。

「汐、新しいのを買えばいいだろ。

青美が来たばかりなんだ。つらい思いさせたくない」

私は深く息を吸い込み、クッションを取り出して差し出した。

「どうぞ」

青美はそれを受け取り、抱きしめた。

「ありがとうございます、斎藤さん。やっぱり健吾さんは覚えてくれているんですね。

私、腰が痛いって彼に言ったこと、すっかり忘れてたのに」

彼女は健吾の方を向いた。

「仕事に戻ろう」

健吾は彼女の肩を軽く叩いた。

二人は並んで部長室へと歩いていく。

私はゆっくりと椅子に腰を下ろした。

恥骨の痛みがすぐに襲ってきて、冷や汗がこめかみを伝った。

その夜、家に帰ると健吾が箱を一つ持って帰ってきた。

中には高級な最新型の足用マッサージ器が入っていた。

彼は床にしゃがみ込み、私の足を機械の中に入れ、自ら調節をしてくれた。

「汐、今日は我慢させて悪かった」

彼は顔を上げた。

「あの青美だが……本社から無理やり押し付けられたんだ。

どうやらコネがあるらしく、今の俺は逆らえないんだ」

彼は私の手を握り、優しくマッサージした。

「あのクッションの件も仕方なかった。芝居を完璧にしないと。

もう少し我慢してくれる?この騒ぎが落ち着いたら、すぐに彼女を異動させるから。

明日、同じものをすぐに買ってくる。な?」

彼の顔を見ていると、胃のあたりがむかむかした。

もしリストラのリストを見ていなかったら、もし彼が嘘をついていると知らなかったら、また感激していたかもしれない。

本社から押し付けられた?コネがある?

健吾、彼女をかばうために、そんな嘘までつくのか。

私は手を引き抜き、淡々と言った。

「ええ、あなたの仕事のためなら、我慢できる」

彼は笑い、私を抱きしめた。

「やっぱり俺の妻は一番優しんだ」

翌日昼、私は給湯室に水を汲みに行った。

プリントコーナーの前を通ると、青美が何かを印刷しているところだった。

彼女はこちらに背を向け、電話をしながら歌を口ずさんでいる。

「安心してください、全部うまくいきました。六百万、全額で……

ええ、彼はもちろん私に優しいですよ」

私の足音に気づくと、彼女はすぐに電話を切り、印刷物を手早く取って、足早に去っていった。

私はプリンターのところに行こうとしたが、画面には赤いランプが点滅していた。

【前のジョブが未完了、紙詰まり】

私は側面のカバーを開け、詰まった紙を抜き出した。

それは途中まで印刷された書類だった。

おそらく紙詰まりのため、青美が置き忘れたものだ。

タイトルは太字のゴシック体で書いている。

【水原青美氏の特別人材採用及び過去の貢献に関する説明について】

原稿を作ったのは、健吾だった。

私は手を震わせ、危うく紙を落としそうになった。

内容にはこう書かれていた。

【水原青美氏は、かつて会社創設期に多大な犠牲を払い、長期間の残業により腰を負傷した。これは会社に対して計り知れない貢献をしたものである……】

【一身上の都合により惜しまれつつ退職したが、長年にわたり会社の発展を気にかけていた……】

最後の一節には、私の全身が震えるような内容が記されていた。

【今回の呼び戻しは、業務上の必要性のみならず、功労者への補償でもある。一時金として六百万の手当てを支給し、前職の労働トラブルによる賠償金の支払いについても、その解決を支援することを提案する】

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