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第4話

Penulis: 石垣好
「退職条件は明細に書いてある通りです。ここにサインしていただければ、明日からは来なくて結構です」

見覚えのある、勢いのある文字だ。

昔はかっこいいと思っていたこの文字が、今はただ醜く見える。

「私は妊婦よ。妊娠中の解雇は法律で禁じられているはず」

私は青美の目を見据えた。

青美は大声で笑った。

「斎藤さん、甘いですよ。健吾さんがやったからには、ちゃんと方法はあるんです」

彼女は身を乗り出し、声を潜めた。

「彼が言うには、最近あなたの仕事のミスが多くて、会社に大きな損害を与えているそうです。

証拠はちゃんと揃えてあります、ファイルの中にね。それに……」

彼女は私のお腹を指さした。

「この子はタイミングが悪いんですって。彼のキャリアの邪魔になるから。

家でおとなしくしている方が、彼のためでもあるんでしょう」

血の気が一気に引いていくのを感じた。

仕事のミスだと?

私は足手まといにならないよう、妊娠中も深夜まで働き、一度もミスをしたことなんてない。

あの時、彼が私に触らせなかった仕事は、全部私をはめるためのものだったのか。

「健吾に会わせて」

「彼はあなたに会いたがっていません」

青美は立ち上がり、私のそばに歩み寄った。

「実は私も止めたんですよ、あなたが妊婦していますから……

でも彼が私を大切に思ってくれて、私に辛い思いをさせるくらいなら、あなたに我慢してもらう方がいいって」

彼女は私の耳元に顔を寄せ、二人だけに聞こえる声で囁いた。

「今夜の集まりはね、実は私の昇進祝いなんです。

私の復帰と……ある方の退職を祝うことにね」

その時、ドアが開き、健吾が入ってきた。

彼は私たちが立っているのを見て、一瞬目をそらした。

「話は終わったか?」

健吾が青美に尋ねた。

私の方に向き直ると、表情が硬くなった。

「サインしたか?したなら早く帰れ、ごちゃごちゃ言うな」

この三年間、連れ添ってきた男を見つめる。

「私を解雇するの?」

「会社の決定だ」

彼は私の視線を避けた。

「お前は妊娠してる、確かに仕事の能率が落ちてる。

家で休んでる方がいいだろ?俺が養ってやる」

「何で養うの?あなたが彼女にあげた六百万で?」

健吾の表情が一変した。

「会社の機密を盗み見たのか?」

「秘密にしていることでも、いつかは必ず明るみになる」

私は通知書を手に取り、彼の前で真っ二つに破いた。

「サインしない」

健吾は一歩踏み出し、私の手首を掴んだ。

「汐!いい加減にしろ!サインしようがしまいが、お前には辞めてもらう!」

彼の力は強く、手首が痛い。

青美が横で口を挟む。

「まあまあ健吾さん、乱暴はダメですよ。斎藤さん、妊娠してるんですから」

そう言いながら、彼女は健吾の腕に自分の腕を絡めた。

健吾は私の手を振りほどき、皺になった袖を整えた。

「今夜、荷物をまとめろ。明日、退職証明書を送らせる」

そう言うと、彼は青美の肩を抱いて歩き出した。

「行こう、みんながケーキを待ってる」

私はその場に立ちすくみ、去っていく二人の背中を見つめた。

会議室のガラス越しに、同僚たちの歓声が聞こえる。

ケーキが運び込まれた。ケーキには【青美さん、復帰おめでとう】の文字が書かれている。

健吾がナイフを持ち、青美の手を重ねて一緒にケーキを切った。

笑い声がガラス越しに聞こえてくる。やけに耳障りだった。

スマホが震えた。

銀行からのメッセージだ。

【ご口座から一千万円が出金されました。残高は0円です】

あれは私たちがためていた育児資金だった。

ここ数年、私が必死に貯めた全ての貯金だった。

続けて健吾からメッセージが届いた。

【金は先に使わせてもらう。青美が戻ってきたんで、住まいを用意してやりたい。俺を恨むなよ、お前がこうさせたんだ】

その文字を見て、視界が滲んだ。

お腹の子が、私の感情を察したかのように激しく動いた。

痛みで、我に返る。

涙を拭い、私は会議室を出た。

私を絶望へと追い込むつもりなら、皆で地獄に堕ちましょう。

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