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第 88 話

last update Fecha de publicación: 2026-08-25 13:02:50
「ありがとうございます」

「ミレーヌ様、報告を」

ミレーヌは、はっと背筋を伸ばした。

「はい」

紙を見ながら、少し硬い声で読み上げる。

「招待状の宛名、封筒、敬称、慶弔文面の確認は完了しております。ヴェルナー伯爵夫人には祝い文言を避け、王妃陛下へのご厚情に感謝する文面へ変更済みです。ローゼン侯爵夫人の敬称は、慈善委員会名誉職を含めた正式表記です。ノルヴァルト大使夫人には、花材確認済みの案内状をお送りしています」

最後まで言い切った。

途中で声は一度だけ震えたが、止まらなかった。

クラリスは頷く。

「よく確認できています」

ミレーヌの目が、少しだけ揺れた。

褒
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    セリア記録官も加わっていた。 彼女は慈善物資に関わる受領記録側から、商会名を照合している。 「リーヴェ商会は、過去三年で慈善向けの中継取引が複数あります。ただ、受領先名まで記載されたものと、“王宮指定先”で止まっているものが混在しています」 「王宮指定先」 クラリスはその言葉を繰り返した。 嫌な言葉だった。 便利すぎる。 「王宮指定先とは、具体的にどこですか」 セリアは紙をめくる。 「施療院、孤児院、仕立て場、備蓄倉庫などが含まれるようです。ただし、書類によって意味が違います」 「つまり、実務記録としては曖昧」 「はい」 オスカーが記録する。 “王宮指定

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    商会主たちとの協議が終わった翌朝、王宮筆頭実務顧問室には、商会別の反応表が広げられていた。 協力検討。 条件付き協力。 持ち帰り検討。 消極的反応。 回答保留。 並べてみると、会議室で感じた空気が紙の上に戻ってくる。 マルクス・ハルデンのハルデン商会は、条件付きで協力検討。 オルガ・ベルクのベルク運輸商会は、港湾運用が現実的なら協力。 サムエル・リーヴェのリーヴェ商会は、持ち帰り検討。 そして、いくつかの小規模商会は回答保留。 クラリスは、その中でリーヴェ商会の欄に目を止めた。 会議の最後まで、サムエル・リーヴェは渋い顔を崩さなかった。 反対

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    会議が終わり、商会主たちが退室した後、クラリスは椅子に座ったまま少し息を吐いた。 「お疲れですか」 セルゲイが言った。 「商会との協議は、別の疲れ方をします」 「彼らは利益で語りますから」 「はい」 「しかし、利益で語る者は、利益と信用の線が見えれば動きます」 セルゲイは窓の外を見た。 「善意だけで動く者より、時に扱いやすい」 クラリスは苦笑した。 「大使らしいお言葉です」 「褒め言葉として受け取ります」 グレゴールが資料を閉じながら言った。 「商会側は必ず費用を出してきます」 「出すでしょうね」 「財務院としては、すべてを認

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    「範囲を広げる時は?」 「再協議です」 クラリスが答えた。 「少なくとも、今回の同意だけで全商会全取引に広げることはしません」 商会主たちの緊張が、わずかに緩む。 完全ではない。 だが、全取引へいきなり網をかけられるのではないと分かっただけでも、彼らには重要なのだろう。 それでも、反発は残った。 別の小規模商会主が言った。 「慈善物資に関わると、手間だけ増えるなら、今後は扱わない商会も出るでしょう」 静かな脅しだった。 クラリスは彼を見る。 「あり得ます」 「困るのは王宮では?」 「困ります」 クラリスは認めた。

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