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第5話

作者: お金持ちさん
相場よりかなり安く価格設定をしたため、1週間も経たずに家は無事に売却された。

不動産屋へ行き、契約書にサインをして買主との引き渡し日を決めた後、俺は家に戻った。

しかし、ドアを開けた途端、部屋の中から楽しげな笑い声が聞こえてきた。

玄関にあったペアのスリッパは消えていた。

その代わりに、見知らぬ男物の革靴と、凛花の誕生日に拓海がプレゼントした彼女の1番お気に入りのパンプスが並べられていた。

中にいるのは凛花と拓海だとすぐに気づいた。

彼らはあと2日は帰ってこないはずではなかったのか?

そう考えていると、物音に気づいた拓海が歩いてきた。彼は俺のスリッパを履き、俺のパジャマを着て、まるでこの家の主であるかのようにくつろいだ様子だった。

「蒼介さん、どうしてこんな時間に帰ってきたんですか?会社はまだ就業時間中ですよね」

そう言いながら、彼はわざと傍らにあったマグカップにタバコの灰を落とした。

それは、凛花が俺にプレゼントしてくれたペアのマグカップだった。

以前の俺はそれを愛用し、いつも手のひらで大切に包み込んでいた。

その時、凛花もリビングから歩いてきた。拓海が俺のマグカップを灰皿代わりにしているのを見ても、彼女は見て見ぬふりをした。

タバコの匂いを嗅ぐだけで吐き気を催し、俺に強硬に禁煙を命じた彼女が、今は全く不快な様子を見せていない。

拓海と一緒にいるこの期間で、彼女は本当に変わってしまった。

俺を見ると、彼女の顔には一瞬だけ気まずそうな色が浮かんだ。

しかしすぐに、その顔は不機嫌そうなものに変わった。

「また会社を抜け出してきたの?

蒼介、いくらアタシの夫だからといって、しょっちゅうこんなことをしていいわけじゃないのよ!

あなたが規律を守らないのに、これからアタシがどうやって社員を管理すればいいの?」

規律?

俺は思わず吹き出しそうになった。

規律を守らないことに関して、凛花の右に出る者がいるだろうか?

1年前、会社が軌道に乗り始めた頃、凛花は業界経験すらない拓海を特例で会社の管理職に抜擢した。

俺は疑問に思ったが、凛花が「拓海は必ず大きな戦力になる」と言うのを聞いて、彼を熱心に指導しようと決めた。

しかし、拓海は毎日ゲームをするか寝てばかりいた。就業時間を無為に過ごした後、わざと深夜まで残り、会社のグループチャットに「残業中」の写真を送るのが日課だった。

俺はそのことを凛花に報告したが、彼女は「仕事に疲れたからゲームでリラックスしているだけかもしれないじゃない」と取り合おうとしなかった。

俺が凛花に少し注意して見てほしいと頼んでも「時間がない」と言われ、監視カメラを設置してはどうかと提案しても「プライバシーの侵害だ」と一蹴された。

その後、プロジェクトで立て続けにミスが発生し、数千万円もの損失が出たにもかかわらず、拓海は悪びれる様子もなかった。俺が我慢の限界を超えて彼を解雇しようとすると、凛花は猛烈に反対した。

最後に彼女は俺にこう言ったのだ。

「あなた、拓海が優秀すぎて自分を超えるのが怖いから嫉妬してるんでしょ?」

その後も拓海は会社に残り、俺が担当していた顧客やプロジェクトを次々と横取りした。凛花はそれを明らかに見て知っていたはずなのに見て見ぬふりをし、それどころか拓海を「優秀な社員」と称賛し、俺を「同僚に嫉妬する反面教師」として扱った。

以前の俺は、そんな理不尽な扱いにやり場のない思いを抱えていた。

しかし今考えてみれば、あれほどの辛抱強さがあれば、別のどんな会社に転職しても、今のようなどん底の惨めな思いを味わうことはなかっただろう。

俺が黙っていると、拓海が傍らで凛花の背中を軽く叩き、優しい声でなだめた。

「きっと蒼介さん、凛花さんが帰国するのを知って、わざわざ駆けつけてくれたんですよ」

凛花は明らかに彼の言葉を信じ、満更でもない顔を浮かべた。

「まあいいわ、今回だけは大目に見てあげる。でも、どうしてアタシが今日帰国するって分かったの?」

拓海は笑って言った。

「凛花さん、忘れちゃったんですか?帰りの航空券は人事部が手配したんです。きっと人事部が蒼介さんに教えたんですよ」

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