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第6話

作者: お金持ちさん
凛花は軽く鼻を鳴らした。

「蒼介、あなたは毎日仕事にも集中しないで、そういう余計なことばかり熱心に首を突っ込んでいるのね。

でも、こんなことをしたからって許してあげると思ったら大間違いよ。

あなたが腹いせにカードの利用停止をしたせいで、アタシは取引先の前で大恥をかいたわ。結局、拓海があちこち駆けずり回ってお金を借りてくれて、なんとか支払いを済ませたんだから」

俺がいつまでも沈黙していると、凛花は俺がいつものように反省しているのだと勘違いし、少しだけ口調を和らげた。

「許してあげないこともないわ。でもその前に、拓海に相応の埋め合わせをしなければならないわね。

彼が今住んでいる家は最近リフォーム中で、しばらく住めないの。あなたがこの寝室を空けて、しばらくの間彼に使わせてあげるなら、今回のことは水に流してあげるわ」

俺は首を横に振った。

「この家はもう売ってしまったんだ」

「売った?」

凛花は目を丸くした。

彼女が質問する前に、拓海が先回りして口を挟んだ。

「蒼介さん、もしかしてこの家を売って、謝罪の代わりにもっと大きい家を買ってくれるつもりなんじゃないですか?」

凛花はそれに納得し、途端に嬉しそうに顔をほころばせた。

「確かに、この家には随分長く住んだし、そろそろもっと大きな家を買ってもいい頃ね。その時はアタシも少し資金を出してあげるわ。だから、この家は一旦売るのをやめましょう。ちょうど拓海が使うのに都合がいいし」

「そんなの申し訳ないですよ。家賃は相場通り払います」

「家賃なんていいわよ」

凛花はムッとして言った。

「アタシがあなたの社長なのに、家賃なんて取れるわけないでしょ?」

「それは悪いです。ダメですよ、家賃は絶対に払います」

「それなら、数千円程度でいいわ」

2人はわざとらしいやり取りを続け、凛花は家賃など気にも留めていないという態度をとった。

この家は市内中心部にあり、相場の家賃は20万円を下らない。それなのに彼女はどうでもいいと思っているのだ。

しかし俺たちがデートをする時は、彼女は食事代や映画代の支払いまできっちりと俺と割り勘にしていたのだ。

愛している時と愛していない時の態度は、見事なまでに雲泥の差だ。

「どう?あなたが承諾するなら、離婚の話は考え直してあげてもいいわよ」

「考える必要はない……」

「そうはいかないわ。こんなにあっさり許してしまったら、また同じ過ちを繰り返したらどうするの?」

凛花は俺の言葉を遮った。彼女は俺が「離婚の考えを取り下げてほしい」と懇願しているのだと思い込んでいるのだ。

拓海が傍らでへらへらと笑いながら言った。

「凛花さんの言う通りですね。でも、僕の顔に免じて蒼介さんを許してあげてくださいよ。

それに、何だかんだ言って、お2人は結婚して長いじゃないですか。今離婚するなんてもったいないですよ」

凛花は思案するような素振りを見せた。

拓海は思い切って彼女に手を伸ばし、軽く揺さぶりながら甘え始めた。

凛花は口では「やめなさいよ」と言いながらも、だらしない笑みを浮かべていた。

「仕方ないわね」

彼女はそう言ってようやく俺の方を向き、満足げに言った。

「拓海もあなたのために口添えしてくれていることだし、今回だけは許してあげる。

拓海にはしっかり感謝しなさいよ。あなたにあんな扱いを受けたのに、恨み言ひとつ言わずにあなたをかばってくれているんだから。

まあいいわ。じゃあ今回の離婚の件は……」

「勘違いしているようだ」

彼女が言い終わる前に、俺は淡々と遮り、離婚届の受理証明書を彼女の目の前に突きつけた。

「俺が言いたいのは、俺たちは、すでに離婚しているということだ」

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