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第903話

Penulis: 汐
トラウマの記憶を消し去ってからというもの、静奈の容態は目に見えて快方へ向かっていた。

瞳に淀んでいた絶望の影は次第に薄れ、一日中ふさぎ込むようなこともなくなり、少しずつだが食事も喉を通るようになってきた。

量はまだ少ないものの、身体機能は確実に回復しており、青白くやつれていた頬にも微かな赤みが戻りつつあった。

ただ、時折胸の奥がチクッと痛むことがあった。まるで細い針が刺さっているかのように。致命傷ではないが、何か大切なものが欠落していることを絶えず突きつけてくるような、そんな痛みだった。

たまに、脳裏に断片的で曖昧な映像が閃くこともあった。

光と影が交錯し、誰かの面影が揺らめく。

しかし、その映像を掴み取ろうと意識を集中させると、瞬く間に霞のように消え去ってしまい、後にはさらなる喪失感と理由のない切なさだけが残った。

医師は湊に、これは記憶操作後のよくある後遺症だと告げていた。

トラウマを完全に癒やし、残された記憶の破片を抑え込むには、週に一度の深い心理介入治療を最低でも半年は続ける必要がある。そうして初めて、あの苦痛に満ちた過去を完全に封印できるのだという。

湊は静
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