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6.団長の正体

Author: satomi
last update Last Updated: 2025-08-29 07:50:44

 昨日、というか今朝まで大騒ぎしていたわりに店の中は非常にキレイだった。女将さんに聞いたら。

「最後は酔っぱらった状態だったけれども、騎士様達に自分たちで汚した分をキレイにしてもらた。なんか酔っぱらって「誰が一番キレイにできるか勝負だー!」とか言い始めてさ。そしたらみんな全力で掃除を始めて、こんな感じ」

 なるほど。お酒の力ってスゴイな。

 昼になったらランチタイムで店を開けることとなった。

「あら、騎士団長様。いらっしゃいませ。今日も本日のおすすめで構いませんか?」

「ああ、それでたのむ。アンジーはいるか?」

「アンジー!」

「はーい!」

「騎士団長様がお呼びだよ!」

 私なんかしたかしら?騎士団の皆様を誑かした?いやいや、そんなことはないと女将さんが証言してくれるはず。

「団長様、お呼びですか?なんでしょう?」

「単刀直入に言おう。アンジェリカ=シアースミス」

「私は家を追い出されましたのでシアースミスではありません」

「ではアンジェリカは確定か…」

「ここではアンジーでお願いします」

「このままではシアースミス家が乗っ取られた挙句に没落する」

「そうでしょうね」

 ヘレナの見栄っ張りをコントロールできなければ散財した挙句に借金を重ねて没落でしょうね。

「ヘレナ嬢と当主殿との血縁関係は認められない。なおかつ当主殿の健康管理もどうだろう?」

「それは心配です。私が会いたいと言った時は「感染性の病で臥している」と言われました」

「ふむ、考慮しよう。もうすぐランチができあがる。続きは正式に我が家に招待する」

 騎士団長の家?なんか凄そう。どこなんだろう?

「団長様、すみません。今日のオススメがデザートだったので、勝手にシチューにしました」

「そんなに申し訳なさそうにしないでほしい。ここはなんでも美味しいと部下からよく聞いている。女将のそんな顔を見たくて来ているわけじゃない」

「団長様ってば、お上手ですね。団員たちも見習ってほしいわよ、全く。団員たちは皆アンジーちゃん大好きですからね」

 と、女将さんは笑っていた。

 その日の夜間営業の時間に常連となった団員さん達がやってきた。

「はぁ、今日の訓練はハードだったぁ。きっと、いや必ずエールが美味いに決まってる!女将、今日のオススメとエール!」

「今日のオススメはデザートだけどいいのかい?」

「…今日はテールスープにしよう
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Comments (1)
goodnovel comment avatar
buchi
今日は、騎士団員が集まる酒場に騎士団長が訪れたんだね!突然、アンジーに対して、アンジェリカ=シアースミスと呼びかけるか!そして、このままでは、実家は没落との展開を示すか。アンジーは追い出された旨とヘレナに聞いた父の病状を伝える。すると、騎士団員から自分の実家に来る様に誘われる。アンジーからしたら何目的か分からないよね!後に騎士団から団長の実家を聞くと王家と教えられビックリ!団長は、第2皇子・グレイ=オールディントン殿下だったんだね^o^。今後の展開が楽しみです♪
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