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侍女長メアリー

last update Terakhir Diperbarui: 2025-07-29 07:04:48

ノックが響く。入って来たのは昨日挨拶してくれた侍女長のメアリーともう一人の侍女。私付きのメイドでは無い人だ。

「おはようございます、ジル様」

メアリーは朗らかにそう言う。もう一人の侍女が言う。

「はじめまして、侍女のケリーと申します」

メアリーはその場で私に聞く。

「お風呂を準備させて頂きます、どちらのお風呂をお使いになりますか?」

聞かれて私は思う。そうか、テオ殿下専用のお風呂ももちろんあるだろう。でもそれを使うのは気が引けた。

「では私の部屋のものを」

言うとメアリーは私に近付きながらケリーに言う。

「すぐにお風呂の準備を」

ケリーは失礼しますと言ってパタパタと部屋を出て行く。メアリーは私に近付いて来る間に床に落ちている私の服を拾い、私の側まで来るとベッドの端に座り聞く。

「お体は大丈夫ですか?」

恥ずかしくて俯く。

「大丈夫です……」

メアリーは少し笑って言う。

「お顔をお上げください。恥ずかしい事など何もありません」

メアリーを見るとメアリーは目を細めて微笑んでいる。

「お風呂の準備が整うまで少しお話しても?」

聞かれて頷く。私の部屋と繋がっているドアが開いてケリーが何かを持って来て、メアリーに渡すとそのまままた戻って行く。メアリーはそれを受け取ると私に掛ける。

「これは……?」

メアリーはクスッと笑って言う。

「殿下がジル様の為に用意したガウンです。殿下とお揃いのものです」

肌触りの良いガウンは薄いピンク色だった。

「綺麗な色……」

言うとメアリーが微笑んだまま言う。

「ジル様の為に何もかもご自分でご用意されたんですよ?お部屋の調度品も、ベッドも、身に付ける物も」

メアリーはクスクス笑って私の手を取る。

「ここ何年も殿下のお心は暗く閉ざされておりました。表面上は誰にも弱さを見せない方ですが、人一倍そのお心は傷付き易く、ここ何年も塞ぎ込んでしまって。私たち使用人一同心を痛めておりました。それが数日前に殿下は変わられたのです。急に婚約した! 婚約者を屋敷に住まわせる! 全て自分が指示する! 完璧に用意をする! と息巻いて」

メアリーは嬉しそうに笑う。

「あんなに嬉しそうな殿下を見るのは初めてです。もう妙齢も過ぎて正直、結婚など諦めておりましたのに」

メアリーの瞳には涙が浮かんでいる。

「私はこの屋敷に来てからずっと殿下に仕えております。もう何年になりますか…
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