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7.

Auteur: satomi
last update Dernière mise à jour: 2025-08-05 07:08:43

俺は思い切ってハルカにこの想いをぶつけた。

「……殿下。正気ですか?」

「正気だ」

「私は伯爵家です。この間髪を切りました」

「そんなものは関係ない!」

いやぁ、我が家では結構死活問題だと思う。お兄様は跡を継いでくれるんでしょうけど。髪の毛は勝手に伸びるか……。貴族の派閥問題とか?私はよくわかんないけど。

「それにですねぇ、殿下には既に麗しいワーグナー公爵家のフェブラリ様という立派な婚約者がいらっしゃるではありませんか!嗚呼、私が男で彼女と婚約出来たら……と思いますよ!!」

「彼女は正妃として、ハルカは側妃ではだめか?」

「ダメですよ!!何を血迷ってるんですか?二股なんてサイテー。フェブラリ様をまさか?!お飾りの王妃にするつもりでいるんじゃないでしょうね?王妃教育に一生懸命力を注いでいるというのに!それも幼い頃から。そんな彼女を裏切って二股?ハァ、あり得ないですね。誠意が感じられません。私の中でカイル様の株がただ下がりです」

「そこまでなのか?」

「そこまでです。全貴族の女性の鑑のようなフェブラリ様をお飾りにしようなんて……。あり得ない……。絶句です」

「わかった。とりあえず、想いを伝えただけだ。今後どうこうという話ではない(ことにしよう(色々怖いから))」

「それでは本日の事務的な話に移ります。本日は孤児院訪問を予定しています。そうだ!次回の孤児院にはフェブラリ様と共に訪問してはいかがでしょう?」

「そもそも孤児院とはどういう組織なのだ?」

あぁ、お金持ち……。というか、俗世間から離れて生活し過ぎだなぁ。

「そうですね……。簡単に言うと、捨てられた子とか、望まれずに生まれた子とかを収容して育てている施設です」

「そんなものがあるのか?望まれずに生まれる?」

「一例として娼館はわかりますよね?そこで意図せずに妊娠をしてしまった場合、そして子供を産んだ場合、その子供は捨てられてしまいます」

「そんなことがあっていいのか?」

「それが現実です。というか、知らなかったのですね。国のトップとして恥ずべき事案ですよ」

「そうだな」

「孤児院の運営資金は寄付金です。しかしながら、寄付金が十分ではなく孤児院で暮らす子供はひもじい生活をしています。多くの孤児院では専門の経理を行う者が存在せず、ドンブリ勘定で経営をしています。悪徳孤児院になると、経営者が寄付金の一部を着服し、子供が
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