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番外編・第2話。

Auteur: 愛月花音
last update Dernière mise à jour: 2025-06-08 09:52:15
 それはレイヴァン達が『魔導育成アカデミー』の高等科に進学した頃から、置き始めた。このアカデミーは魔法、剣術、教養などが学べる。

 そして18歳の3年生になった頃。ある1人の聖女が転入してきた。名前はレイナ。

 美しい黒い髪のストレートロングヘアに少し垂れた大きな目。色白で華奢な身体。

 守ってあげたくなるような可愛さを持った絶世の美女という印象ではあったが、絶世美女ならエルザの方が相応しいと思った。

 あの眩しいような美しさを見た後だと、なおさらそう思う。

 しかし、数日も立たずに周りの反応はガラリと変わってしまう。クラスメートだけではなく、他の学年や教師達も聖女の虜になってしまった。崇拝するように彼女を褒めちぎる。何かがおかしい。だが、その魔の手はレイヴァンにも降りかかる。

「レイヴァン様ってお呼びしてもよろしいかしら? 私はレイナ。レイヴァン様って、皇太子様なんですって?」

 甘ったるい声でレイヴァンに話しかけてきた。本来なら目上の人から挨拶しない限り、話しかけるのはタブーとされていた。

 何故だろうか? レイナには、そう思わなかった。

 いや……それすら、天真爛漫というのだろうか? レイヴァンは魅力的にも感じた。

 そうしたらレイナは、レイヴァンの腕に絡ませるように組んできた。そして上目遣いで引っ付いてくる。その動作にドキッと心臓が高鳴った。

「私まだ入って来たばかりでアカデミーの事よく分からないんです~。レイヴァン様。案内して下さらない?」

「あぁ……いいけど」

 自分はエルザという婚約者が居るにも関わらず、レイヴァンは自然とその言葉が出てしまった。むしろ悪くないと思う自分が居た。

 その後もレイナは無邪気な笑顔でレイヴァンに何度も話しかけてきたり、スキンシップをしてくる。レイヴァンはそんなレイナに注意をする事はなかった。

 しかし、それを見ていたエルザは複雑そうな表情をしていた。そしてレイヴァンが皇宮で会った時に、それとなく注意する。

「最近レイナ様と親しいようですが、あまりそういう事は良くありませんわ」

「……どうしてだ?」

「どうして……それは」

 言葉を濁すエルザ。何だろうか? その曖昧な態度がイラッとする。

「私が誰と居おうと私の勝手だろ!?」

 思わず強めに否定をしてしまった。その言葉にハッとした。自分は彼女になんて事を言ってしまったのかと、後
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