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第2話

Autor: KIKO
高橋先生は首を横に振り、眉をひそめて私に問いかけた。

「旦那さん……は、このことを知っているのか?」

私はうつむいたまま、何も答えられなかった。

先生は私の肩に手を置いた。

「彼に話しなさい。彼は君を深く愛しているはずだ。君が自分を犠牲にしてまで子どもを選ぼうとするのを、絶対に放っておきはしないよ」

その言葉を聞いた瞬間、私は何かに憑りつかれたかのように、診察室で息もできないほど激しく泣き崩れてしまった。

最後、どうやって病院を出たのかさえ覚えていない。

帰り道、ずっと頭はぼーっとしていた。

区役所の前を通りかかった時、私は足を止めた。

この子を産むべきか、諦めるべきか。

私は入り口の前に腰掛け、気の遠くなるほど長い時間考え込んだ。

もし尋也が私を愛していないなら、この子が生まれてきても、彼はちゃんと可愛がってくれるのだろうか。

もし尋也が月子と結婚したら、あんな意地の悪い女が、良い継母になれるはずがない。

でも、この子をおろすなんて……私にはできない。

私は孤児だった。自分の両親についての記憶は、何一つない。

幼い頃からずっと、私のそばにいてくれたのは尋也だけだった。

だけど今、尋也も私のものではなくなってしまった。

私には……もうこの子しかいない。

区役所の前に、気づけば半日以上も座り込んでいた。

いつの間にか、すっかり日は暮れていた。

尋也から電話がかかってきて初めて、もう夜中の1時を過ぎていることに気づいた。

彼は苛立った声で聞いてきた。

「なんでまだ家に帰ってねえんだよ」

私は薄手の服をきゅっと握りしめた。

「区役所の前にいるの」

10分後、尋也がバイクに乗って私の目の前に現れた。

私が動こうとしないのを見て、彼は歩み寄るなり、私の腕を掴んで無理やり引きずり起こした。

私の額を指さして怒鳴りつけようとしたが、彼はその怒りをぐっと力ずくで抑え込んだ。

自分の上着を脱いで私に着せると、背を向けてタバコに火をつけた。

私は黙って、バイクの後部座席に腰掛けた。

道中、私たちは一言も交わさなかった。

家に着いた後、私は下腹部に手を当て、戸惑いと複雑な思いを抱えながら問いかけた。

「尋也、あなたは月子を愛しているの? それとも私?」

彼は振り返って私を見つめた。

「じゃあお前は? 美嘉、お前は高橋を愛してんのか、それとも俺か?」

「あなたよ!」

私はほとんど迷わずに答えた。

彼は手を伸ばし、私が無意識に流した涙を拭うと、自嘲気味に笑った。

「美嘉、お前は嘘つきだ」

明らかに、彼は信じていなかった。

「美嘉、もし俺がお前を愛してなかったら、お前は今こうして生きていられたと思うか?

俺のプロポーズを受け入れたのは、本当に愛しているからか? それとも、ただの罪悪感からか?」

私が答えようとしたその時、けたたましい着信音に遮られた。

「尋也くん、なんか雷が鳴りそう。一人だと怖いの。

それに……あの時、つけてくれなかったよね……

あと半ヶ月もすれば検査できるから。もしかしたら、パパになっちゃうかもね」

月子の甘ったるい声が、はっきりと私の耳に飛び込んできた。

尋也は私をチラリと見ると、うつむいて忌々しそうに悪態をついた。

彼は適当に上着を羽織ると、急いで出て行こうとした。

私は彼を呼び止めた。

「尋也、行かないで」

彼は一瞬、呆然とした。

私はなおも食い下がった。

「行かないでって言ってるの!」

けれど、しばらくの沈黙の後――彼は結局、私を置き去りにすることを選んだ。

私はソファの上で膝を抱え、テーブルの上に飾られた写真立てに目をやった。

私は卒業ガウンを着て、彼はデリバリーの配達ウェアを着て、カメラに向かってクシャッと無邪気に笑っている。

あの頃、私たちは輝かしい未来を夢見ていた。

あの頃の私たちは、本気で信じていた。

「愛さえあれば、どんな困難も乗り越えられる」と。

私は顔を背けて視線を遮り、ソファに寝転んだ。

無理にでも眠りについて、何もかも忘れてしまいたかった。

けれど、目を閉じるたびに、あの言葉が――

「俺がお前を愛してなかったら、お前は今こうして生きていられたと思うか?」

その声が、何度も、何度も脳内でリフレインする。

そう、その通り。私が今こうして生きていられるのは、彼のおかげだ。

私をきつく抱きしめ、「諦めないでもう一度だけ踏ん張ってくれ」と言ってくれた、あの日の尋也のおかげなのだ。

それから半ヶ月もの間、尋也はアパートに戻ってこなかった。

だけど、私のもとに一つの朗報が届いた。

副業で書いていた小説が売れたのだ。

かなりの額の印税がもらえるはずだ。

そのお金があれば、私はもっと長く生きられるはず。

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