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あれから。 私と滝川さんは、警察署に向かった。 信じられない事に、麗奈と清水瞬は滝川さんを不法侵入したと通報し、被害届を提出していたようだ。 そんな事をすれば、自分たちがどうなるか。 それすらも分からないのだろうか。 滝川さんが麗奈の部屋に乗り込んだのは、私が攫われたから。 私のスマホに入れていたGPSのアプリを追って、私を助けに来てくれた。 そして、私は麗奈に連れ去られた時、部屋に入れられた時に玄関の鍵を開けたままにしておいた。 麗奈が興奮していた隙をつき、玄関の鍵をこっそり開けておいたのだ。 きっと、駐車場から姿を消した私に1番最初に気づいてくれるのは秘書の持田さん。 そして、持田さんはすぐに滝川さんに知らせてくれるだろうと思った。 だから、スマホのGPSが切れないように気をつけ、部屋に入った時に鍵を開けておいた。 絶対に滝川さんが助けに来てくれる、と思ったから──。 警察署に着いた私は、この事情を警察官とその上司の方に話し、証拠として間宮さんがタブレットで滝川さんの会社の防犯カメラ映像を流してくれた。 そして、私が連れ去られた時間とGPSの位置情報を照らし合わせ、間宮さんが補足説明をしていく。 始めは、不遜な態度で私たちの話を聞いていた警察官と刑事も、話が進むにつれて青い顔をして、真剣な表情になっている。 そして、私は最後に滝川さんの家にやってきた警察官を睨みながら、話した。 「それなのに、そちらの警察官は、私の証言に聞く耳を持たず、関係ないと一蹴しました。…しかも、あろう事か私の松葉杖にぶつかり、転倒した際にも自分の保身のために言い訳ばかり。私を助けるために、濡れ衣を着せられた滝川さんが怪我をしたんです」 私の言葉を聞いた警察官の上司は、自分の部下に視線を向け、「本当か」と問いただす。 警察官がもごもごと口を動かし、自分の非を認めない態度を見て、間宮さんがタブレットを再び差し出した。 「社長のご自宅の玄関、及びリビングに通じる廊下には防犯のためにカメラを設置しております。映像を流しましょうか」 「も、申し訳ございません……」 間宮さんの言葉に、ようやく警察官が謝罪を口にする。 彼が謝罪をした事で、私の証言が全て真実だと分かったのだろう。 上司は額を抑え、怒鳴っ
突然の私の発言に、警察官は一瞬呆気に取られたような表情をしたけど、私の言葉を鼻で笑い、軽くあしらった。 「拉致って…、そんな事をする訳がないでしょう。いいから、無関係な人は下がっていて」 「無関係じゃないです。被害届を提出したのは清水瞬と、柳麗奈ですよね」 松葉杖をつき、近づいて行く私を心配するように滝川さんが視線を向けてくる。 警察官は煩わしそうに目を閉じつつ、私を追い払うように手を振った。 「いいから。無関係な人は──」 「──あっ」 ガツン、と警察官の払った腕が私の松葉杖に当たる。 そのせいで、私はバランスを崩した。 「加納さん!!」 ガシャン!と松葉杖が倒れた音が派手に響く。 私は、倒れそうになった所を滝川さんに抱き止められ、滝川さんと一緒に床に倒れ込んだ。 警察官は流石に顔を真っ青にしていたが、はっとして言い訳を口にした。 「か、関係ない人が話に割り込んでややこしくしたから……!それに、わざとじゃない…!」 「ふざけるなよ。警察官ともあろう人が、守るべき市民に暴力を働くとは何事か!」 滝川さんが声を荒らげ、警察官に叫ぶ。 滝川さんの気迫に押された警察官は、狼狽えつつそれでも言い訳を続けた。 「わ、わざとじゃないし、証拠がないだろう!?こ、この女性が勝手に近づいて、転倒しただけで──」 「証拠は、ございます。ここは、社長のご自宅ですから。玄関回り、リビングの入口には防犯カメラがございます」 警察官の言葉に、持田さんの冷静な声が答える。 持田さんを振り返ると、持田さんは恐ろしく冷たい目で警察官を見据えていた。 「しゃ、社長……?」
「警察……?」 滝川さんの声が、低くなる。 訝しげに持田さんに視線を向けているが、持田さんも何が何やら、と言う様子で持田さんも珍しく狼狽えていた。 「分かった、下に行って話を聞いてみるか。加納さんは部屋にいて?警察の話が終わったら、朝食にしよう」 「わかりました……」 滝川さんは私を安心させるように笑ったあと、ぽん、と頭を撫でて部屋を出て行く。 私は、階段を降りて行く滝川さんの背中を見つめる。 滝川さんの後ろには持田さんも着いて行っている。 持田さんも、間宮さんもいるし、滝川さんだって会社の社長を務めている人だ。 「きっと、何もないわよね…。大丈夫、よね…?」 もやもや、と不安が胸に渦巻く。 私は自分の部屋にある松葉杖を取りに急いで室内に戻った。 松葉杖を使い、慎重に階段を一段一段降りていく。 すると、玄関で話をしている滝川さんの声と、聞きなれない男の人の声が聞こえてきた。 聞きなれない方の声は、警察の声なのだろう。 「昨夜、あなたは他人の家に勝手に侵入しましたね?」 「侵入?」 「ええ、被害者から被害届が提出されております。住居侵入の件で、滝川さんには署まで同行を」 「──はっ、ふざけた事を……」 「その態度は何だ?逮捕状を請求してもいいんだぞ!」 警察官の怒声が響き、私は急いで階段を降り、玄関に向かう。 持田さんや間宮さんがぎょっとして、私を止めようとしてくれたけど、このままでは、滝川さんが連れていかれてしまう。 信じられない! 私を拉致したのは、麗奈なのに!それなのに、あろう事か警察に通報したのだ。 滝川さんを不法侵入の罪で通報した。 大事にしたくなかった。 それに、顔見知りではある。 だから警察に通報しようか、と言う滝川さんの言葉を私は断ったのに…! それにきっと、麗奈だけじゃない。 清水瞬だって手を貸している。 麗奈1人じゃあ、ここまで早く被害届を提出する事はできないだろうし、受理だってされない。 清水瞬が被害者になったのだろう。 だから、あっさり被害届は受理されたし、こうして翌日に警察が滝川さんの家までやってきた。 本当に、信じられない……! 麗奈
ころり、と寝返りをうつ。 カーテンの隙間から朝日が差し込んでいるようで、私は眩しさに顔を顰めた。 「──んん」 まだ、眠っていたい。 そう考えた所で、私の意識が急速に浮上する。 「──っ!?」 眠る!? それに、朝日!? そこまで考えた所で、私はばちっと目を開けた。 がばり、と勢い良く起き上がった私の体から、バサリと何かが落ちる。 ベッドの下に落ちたそれを確認すると、それは──。 「滝川さんのスーツ……!?」 どうして、滝川さんのスーツが、と混乱してしまう。 落ちてしまった滝川さんのスーツを拾う。 何度確認してみても、それは間違いなく昨日滝川さんが着ていたスーツだ。 そして、それが皺になってしまっているのを見て、私はサッと顔を青くした。 昨夜、病院に行き、帰宅中の途中から記憶が無い。 車の中で少し寝ていい、と滝川さんに言われた事は覚えている。 けど、それ以降の記憶がなくて……。 そこまで思い出した私は、頭を抱える。 十中八九、起こしてくれたのに私が目を覚まさなかったのだろう。 そして、滝川さんのスーツがここにあるって言う事は、滝川さんに私を運ばせてしまったのだろう。 スーツを握って離さなかった私に困り、滝川さんがスーツを脱いで部屋を出た。 確実に、そうだ。 「わ、私はなんて失礼な事を……!お、追い剥ぎだわこれじゃあ……!」 私が頭を抱えて叫んだ途端。 部屋の扉の方向から殺しきれない笑い声が聞こえて、はっとして顔を向ける。
最初は、顔見知りが事故に遭ってしまったから、助けた。 最初は、本当にただただ純粋な気持ちだった。 昔も、誘拐されかけていた所を助けた事があったから。 その時に、彼女が話してくれた内容がとても心に残っていて、心を打たれた。 俺より年下なのに、しっかり自分の将来を見つめ、家の為に勉強を頑張る姿もとても好印象だった。 それに比べて俺は。 家の、いや、親の決めたレールに従うだけの人生なんてつまらないと思って、反発してた。 反発するだけで、将来の事とか親の気持ちとか何も考えず、どうしてこんな家柄に生まれてしまったんだと嫌気が差してたのに。 そんな俺の悩みや鬱憤なんて一瞬で吹き飛ばしてしまったその子の事をただ純粋に尊敬してただけなのに。 それから、数年後に再開した彼女はあの頃の輝きを失ってた。 ひたむきに家のため、将来のために前を向いていた顔は俯き、輝いていた瞳は陰り、笑顔も失っていた。 助けたい。という気持ちが、俺が隣で支えたい。俺が彼女を笑顔にしたい。俺が彼女を幸せにしたい。 と、そう考えるようになったのはいつ頃だっただろう。 気持ちの変化がいつだったのか、いつ変化したのか、覚えていない。 俺は、自分の肩に頭を乗せて眠っている加納さんの頬にそっと手を添える。 暖かくて、柔らかくて、脆い。 きっと今、加納さんは色々なものを失って深く傷ついている。 加納さんを傷つける全部から守ってあげたい、と強く思った。 「……間宮」 「はい、社長」 もうすぐ1時間ほど経つ。 それまでただただ黙って車を運転していてくれた間宮に声をかける。 「そろそろ家に戻ろう。……運転ありがとう」 「とんでもございません。かしこまりました、これから戻りますね」 バックミラー越しに間宮に頷いた俺は、加納さんの温もりを感じながら窓の外に視線を移す。 柳麗奈。 加納さんを拉致して、怪我を悪化させた。 そして、加納さんから婚約者を奪い、彼女を傷つけた。 加納さんは被害届は出さなくていいと言ったが、どうしても許す事はできない。 刑事罰を与えられなくとも、それ以外の方法で加納さんを傷つけた報いは受けさせたい。 柳には、何が効くだろうか──。 そんな事を考えている間に、車は家に到着した。 俺は
玄関を出て、廊下を歩きながら滝川さんが私に話す。 「加納さん。病院に行こう。以前入院していた病院が診察してくれるって」 「えっ」 「無理やり柳麗奈に立たされて、動かされただろう?しっかり見てもらった方がいい」 そう話しながら、滝川さんの私を抱く腕にぎゅっと力が入る。 心配させてしまった。 また、滝川さんに迷惑をかけてしまった事を悔いるように私は「はい」と小さく答えた。 病院に着いた私たちは、主治医の先生に診察してもらった後、帰路に着いた。 「先生に怒られてしまいましたね」 私が苦笑いを浮かべながら隣に座る滝川さんに話しかけると、滝川さんは眉を下げて答える。 「加納さんのせいじゃないのにな…先生もそれは分かってくれたから良いけど…。凄い形相だった」 「ええ。私以上に麗奈に対して先生が怒ってくれて…。滝川さんも、先生も麗奈に怒ってくれたから、何だかすっきりしました」 「…本当に警察に被害届は出さない?徹底的に争ってもいいんだ。非はあちらにあるんだから」 滝川さんの言葉に、私はゆるゆると首を横に振る。 「本当に大丈夫です。…これ以上、あの2人の事で時間を使うのは勿体ないですから」 「加納さんがそう言うなら…」 納得いっていないような顔の滝川さん。それでも、私の意思を尊重してくれている。 それがとても有難かった。 車の揺れと、車内の暖かさ。 今日1日で、とても色々な事が起きた。 その疲れが出てきてしまったのだろうか、私は眠くなってしまい、何度も目を擦る。 私の行動に気づいたのだろう。 隣に座っていた滝川さんが、私に声をかけた。
