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第三話「大地への信頼」

ผู้เขียน: 北野塩梅
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-07-07 19:13:54

第三話「大地への信頼」

 昨夜、風呂あがりに母から

「明日、今薗さんの息子さんが授与所いるみたいだから、神社に行く前に電話してから訪ねなさいね」とメモを渡されたので、今日、大地が家に来てから、さっそく電話して秩父神社の授与所を訪ねた。

 授与所から出てきたのは、浅葱の袴をはいた身長はそれほど高くない、一六〇センくらいの男性だった。颯太が少し見上げたくらいで視線を合わせられる小柄な体形で、ぱっちりした目が印象的な、若そうに見えるけれど年齢が予想できない人だ。

「浅賀颯太です」

「千島大地です。よろしくお願いします」

 颯太が自己紹介すると、大地も頭をさげた。

「颯太くんのお母さんから、お話は聞いています。今薗尊です。よろしくお願いします」

 尊も頭をさげた。小学生にも尊は丁寧な口調で、なんだか変った人なのかと、颯太は思った。

 大銀杏の木の横まで移動して、大地が百分の一スケールに起こした図面を尊に見せた。

「これなんですけど、合ってますか?」

 じっくりと図面を見た尊が

「配置は変わっていないので、合っていると思います。全部再現するんですか?」

「はい」

 二人で頷くと

「そうですね、『北辰の梟』と『子育ての虎』と『つなぎの龍』を押さえておけば大丈夫じゃないでしょうか。秩父神社の見所ですし。それぞれの説明はしたほうがいいですか」

「なんとなくしか知らないので、お願いします」

 大地が不安そうに答える。

「地元の人でも、身近なものだと返って知らないものですよね。なんとなく知っていても改めて知るいい機会になると思います」

 尊に言われて、それもそうか、と納得する。意外に地元民でも知らなかったりする。

「歩いてみましょう」

 尊に促されて境内を歩き始めた。

「まずは拝殿正面の『子育ての虎』です。戦国時代、甲斐武田の「信玄焼き」によって消失した際、家康によって再興され、家康が「寅の年、寅の日、寅の刻生まれ」ということで、それにちなんで二頭の子虎と戯れる母虎を彫刻したと言われています。母虎だけヒョウ柄なんですよ」

 尊が静かに説明する。

「あ、本当だ」

 大地が口を開けて『子育ての虎』を見上げて言った。

「子宝、子育て、子孫繫栄として信仰されています。『赤子には肌を離すな、幼児には手を離すな、子供には目を離すな、若者には心を離すな』と言う親の心得が伝えられています。ちょっと難しいですかね」

 こちらを見た尊が

「私は親になってはいないので、親が子を思う気持ちは正直わからないのですが、なんとなく心に留めておいて将来、お子さんを授かったときに思い出せばいいと思います」

 尊の話に頷いて大地が『子育ての虎』の彫刻をスマホで写真に撮っていた。ゆっくり尊が拝殿を左に回り込む。本殿の左脇に来る。

「ここに三猿がいます。秩父神社では「よく見て、よく聞き、よく話す」三猿です。『お元気三猿』として現代に親しまれています。家康ゆかりの東照宮にあるのは「見ざる聞かざる言わざる」ですね。ダジャレのセンスは伝説的だと思います」

「あー、ダジャレだったんですね」

 颯太は笑う。

「東照宮の三猿と写真で比較しても面白いかもしれませんよ」

「それいいな」

 尊の案に大地が乗って、三猿を撮っていた。

 そして尊が本殿の裏に歩いていく。片手を上げる。

「『北辰の梟』です。梟の体は本殿を向き、頭は正反対の真北を向いて昼夜問わず、ご祭神をお守りしています。古来から梟は知恵のシンボルとして信仰されていますね」

「大地はご利益もらったほうがいいんじゃない」

「颯太もだろう」

 小声で言い合った。

「中学生になると北辰テストがありますが、その『北辰』はこの梟が由来だとも言われているので、学力を向上させたい場合は是非、知恵梟守りを身に付けてみてください」

「頭良くなる?」

 大地が期待を込めて問うと

「努力して、最後のひと押しをするのが神様なので、お守りを身に付けているからと言って、なにもしない人にはお力添えいただけないでしょうね」

 穏やかな口調で尊が大地を諭した。

「あーあ、やっぱり……」

 大地が残念そうに肩を落とす。

「私も勉強は苦手でしたよ。心の底から太宰府天満宮の宮司の息子に生まれなくて良かったと思っていたくらいですから。ほら、学問の神様でしょう。受験に失敗するわけにはいきませんからね。相当なプレッシャーでしょう? それに比べたら、私なんてまだ自由にやらせてもらったほうですよ」

「すっごいプラス思考ですね。尊さんは秩父神社を継ぐんですか」

 颯太が尋ねた。

「たぶん、そうなりますね」

 尊は穏やかに笑っているが、長い歴史を背負うのもプレッシャーだろう、と颯太は感じた。

 大地が『北辰の梟』を写真におさめると、本殿を歩いて儀式殿の向かいの、有名な『つなぎの龍』の前に来た。

「ここは秩父神社の裏鬼門です」

 尊が『つなぎの龍』の前で立ち止まる。

「秩父神社の東側を守るのが青龍ですね。天ヶ池に住みついた龍が暴れた際、この龍の彫刻の下に水たまりができていて、彫刻を鎖でつないだところ、龍が現れなくなったと言われています」

「もし龍がいるとすれば、この龍ですか」

 龍が空に昇ると雨が降り始めるのだと、颯太は感覚で知っていた。思わず尋ねた颯太に、尊が答える。

「どうでしょうね、いてもいいと思います。そう言う伝承ですが、この彫刻が裏鬼門を守っていることに意味があるのかもしれませんね」

 急に颯太は自分の感覚に自信をなくした。大地は『つなぎの龍』を撮り終えたのか、じっと颯太の様子を見ていた。颯太の腕を引いた大地が、尊に礼をした。

「他に何かあったら、またお願いします。今日はありがとうございました」

 尊は、にこやかにお辞儀して授与所へ戻っていった。

「俺は颯太の言っていることを、信じるよ」

 大地は颯太を安心させるように、力強く言って、ずんずんと境内を歩いて行った。

 大地が信じてくれるのなら、颯太を信じる大地を信じようと思った。

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