記憶を改ざん?
そんな事を出来るのは特殊な魔法を使える人だけのはず……この学園にそんな人物っていたかな。生徒はまだそういう魔法は使えないし、もしいるとしたら職員の誰かって事になる。
それとも外部から来た人間に狙われている? 色々考え事をしながら歩いていると、目の前に突然現れた誰かとぶつかった衝撃で、書類が散らばってしまうのだった。 「ご、ごめんなさい!考え事をしていたものだから……」 私が書類を拾いながら謝ると、ぶつかってしまった相手は女性で、散らかった書類たちを一緒に拾ってくれていた。優しい人だなと顔を上げると、ルビーピンクのウェーブがかった髪をゆるく結い上げた、美しい大人の女性がニッコリと笑ってこちらを見ていた。
すっごく素敵――――大人の余裕すら感じる。肌も綺麗だし、唇もプルンとしていて魅惑的。
こんな女性、ゲームの中にいたかな…… 「焦らなくて大丈夫ですわ、クラウディア先生」「あの、あなたは…………」
「まぁ!私を忘れてしまったのです?養護教諭のカリプソですわ、やっぱり頭を強打したという話は本当でしたのね……」
カリプソ?う――ん、ゲームに出てきたかな…………何回考えても思い出せない。きっと頭を打ったから記憶が混乱しているのね。 こんな美人、一度見たら忘れるはずないもの。 「ごめんなさい、ちょっとまだ混乱してるみたい」 カリプソ先生は全ての書類を一緒に拾ってくれて、最後の一枚を私に渡してくれると、誰もが魅了されてしまいそうな笑顔で私を気遣ってくれた。 「まだ復帰されたばかりですし、無理しないでくださいね。もし具合が悪くなったら保健室に来ていただければベッドもありますし」 「カリプソ先生……ありがとうございます!」 なんて素敵な先生なの――――今日はそれだけでとってもいい一日になりそうな気がした。ひとまずその場はカリプソ先生に別れを告げ、颯爽と自分のクラスへと向かったのだった。 ――――放課後―――― 「初日からなかなかハードだったわね…………」 魔法学園は13歳から入学で1~4年生まであり、1学年に4クラス編成で火、水、風、土のクラスに分けられていた。私が担任を受け持つクラスは4年生の風クラス。
時々1年生のクラスに教えに行ったりはするけど基本的には4年生の風クラスを主に教えている。
最上学年なだけあって皆色々な魔法を使えるし、人間的にも一筋縄ではいかない曲者が揃っていた。
伯爵令息のバリス・レガーテ君は自身の魔力に自信があるのか、皆でウィンドエッジ(中級風魔法)の練習をしていたのにジェットストームという周りを弾き飛ばす上級魔法を使い始め、何人か吹き飛ばされそうになってしまう。
咄嗟に私は召喚魔法でエキムを召喚し、ジェットストームを無効化してもらったのだった…………召喚魔法なんてゲームでは使った事はあったけど、実際に自分で使うのは初めてでドキドキしちゃったわ。
エキムは巨大な鬼のような姿――――だと思っていたのに実際に召喚してみると可愛らしいマスコットみたい。
足元は竜巻になっていて、ジェットストームもしっかり吸収してくれたのだった。お腹いっぱいになって満足したように消えていく姿が可愛すぎて……しかも有能なんて素晴らしいわ!
そんなハプニングもあり、召喚魔法も使ったりでぐったりと疲れてしまった私は、学園の裏側にある庭園で少し癒しの時間を過ごしていた。 「ここはゲームでも魔力回復に使われる憩いの場なのよね。空気もいいし、とっても癒されるわ」 手入れされた庭園の花たちを愛でながら奥の方へ入っていくと、茂みの中からガサガサと何かが動く音がする。何?何かがいるの?
下の方がガサガサしていたので大きな生き物ではなさそうだけど…………警戒して動けずにいると、茂みから突然可愛らしい生き物が飛び出してきたのだった。 「きゃっ」 私は驚きのあまりその場で尻もちをついてしまう。 地面に肘をついて転んでいる私に「クゥゥ――」と少し高めの鳴き声をして近寄ってきた。私は目の前の生き物をジッと見つめてみる。
目はクリッとしていて大きく、鷲のような体に羽は孔雀かな?足は犬の足のようだけど歩く時の動きがとても可愛い。まだ幼くて手の平に乗れるくらいの小さな幼鳥だった。ふわふわしていて触り心地も素晴らしいわ。
「ねぇ、あなたはどこから来たの?お家は?」 私の問いかけに首をかしげ「クゥゥー」と楽し気に答えるだけ。 「どこも帰る場所がないなら、私の家に来ない?ちょうど私もこの世界で一人なの、あなたがいてくれたら嬉しいなぁ」 そう言って手の平に乗せて笑いかけると、その幼鳥はとても嬉しそうに羽を広げて「クゥクゥ」と可愛らしく鳴いたのだった。クラウディア先生も孤独だったけれど、私も転生して知り合いが誰もいないので、凄く孤独感がつきまとっていた。
私と出会えた事が嬉しそうな幼鳥の存在が、心を癒してくれる。 「ふふふっ喜んでくれるの?じゃあ今日からあなたは私と一緒に暮らしましょう」 どの道こんな小さな幼鳥をここに置き去りにしていく事なんて出来ないし、この世界には動物を保護してくれる施設などないだろうから、連れて帰るか置いていくかの二択しかなさそう。小さなペットを見つけたような気持ちで我が家で保護する事に決めた私は、一旦帰りの馬車に乗るまで幼鳥には鞄の中に入っていてもらい、すぐに馬車へと向かった。
そして馬車では名前を付けたり戯れたりしてすっかり仲良しになったのだった。
ちなみに名前は鳴き声が”クゥー”なので「ラクー」に決めた。
短い方が呼びやすいし、実際に呼んでみたらラクーも喜んでくれたから。私はラクーと出会って仲良くなれたことが嬉し過ぎて、この庭園でのやり取りをシグムント王太子殿下に見られていたとは夢にも思っていなかったのだった。
ドロテア王国の第一王子として生まれた私は、ドロテア魔法学園を主席で卒業後、父上の跡を継いで学園の理事長に就任した。 父上も年齢を重ね、理事長職と国王としての職務を兼務する事が大変になってきた事もあり、私の社会経験の一環として早期に就任せよという話だった。 我が弟のダンティエスも同じような理由で卒業後に校長に就いたのだが、父上の思惑としては我々兄弟を競わせる意味もあったらしい。 今のところ私が王太子ではあるが、父上はダンティエスの能力が私より上回れば彼に王位を渡す事も考えていると仰っていた。 そこには無能な者に王位を渡す気はないという、国を想う国王としての断固とした考えがあると私は思っている。 だからこそ、この理事長という職をしっかりと全うしたいと常々考えていた。 我が学園に職員として入ってきた公爵令嬢のクラウディア・ロヴェーヌ嬢は、学園の風紀を乱す存在として見過ごす事の出来ない人物だった。 彼女とは幼馴染で昔は仲よくしていた事もあったが……一時期から疎遠になり、どんどん見た目が派手になっていった。 胸元を大きく開け、歩くだけで男を誘っていると言わんばかりの服装だ。 それとともに様々な良くない噂が私の耳をかすめていく。 男遊びが激しく、貴族令息を誘惑して回っているというものだ。見た目が見た目だけに誰もがその噂を信じていく。 私は昔の印象もあるので信じがたい気持ちだったが、学園の教職員として就任した彼女と話して愕然とした。 昔の面影は全くなく、ねっとりとした話し方で誘うような言い方をしてくるので思わず拒否反応が出てしまったのだ。 それでも信じがたかったが、私の目の前で男性職員に密着している姿を見た時は、もう昔の彼女はいないのだなと悟った。 いずれにしても学園の風紀を乱す者は許し難い事なので、彼女に会う度に何度も注意をしたが全く聞き入れる気はなく、私を堅物で融通が利かない人間だと言い放つ。 口を開けば甘ったるい話し方でそれについても注意をしたが「理事長が意識しすぎなんですよ。生徒にも特に何も言われた事はありません」と言い始める始末――――生徒が先生に意見出来ないでいるかもしれないのに、あまりに能天気過ぎる。 これ以上注意しても無駄だと放置してしまえば楽だっただろうが、理事長という立場上そうもいかないので様々な手を考
理事長室を後にして廊下を歩きながらさっきの王太子殿下からの話を思い出し、考えを巡らせていた。 記憶を改ざん? そんな事を出来るのは特殊な魔法を使える人だけのはず……この学園にそんな人物っていたかな。 生徒はまだそういう魔法は使えないし、もしいるとしたら職員の誰かって事になる。 それとも外部から来た人間に狙われている? 色々考え事をしながら歩いていると、目の前に突然現れた誰かとぶつかった衝撃で、書類が散らばってしまうのだった。 「ご、ごめんなさい!考え事をしていたものだから……」 私が書類を拾いながら謝ると、ぶつかってしまった相手は女性で、散らかった書類たちを一緒に拾ってくれていた。 優しい人だなと顔を上げると、ルビーピンクのウェーブがかった髪をゆるく結い上げた、美しい大人の女性がニッコリと笑ってこちらを見ていた。 すっごく素敵――――大人の余裕すら感じる。肌も綺麗だし、唇もプルンとしていて魅惑的。 こんな女性、ゲームの中にいたかな…… 「焦らなくて大丈夫ですわ、クラウディア先生」 「あの、あなたは…………」 「まぁ!私を忘れてしまったのです?養護教諭のカリプソですわ、やっぱり頭を強打したという話は本当でしたのね……」 カリプソ?う――ん、ゲームに出てきたかな…………何回考えても思い出せない。きっと頭を打ったから記憶が混乱しているのね。 こんな美人、一度見たら忘れるはずないもの。 「ごめんなさい、ちょっとまだ混乱してるみたい」 カリプソ先生は全ての書類を一緒に拾ってくれて、最後の一枚を私に渡してくれると、誰もが魅了されてしまいそうな笑顔で私を気遣ってくれた。 「まだ復帰されたばかりですし、無理しないでくださいね。もし具合が悪くなったら保健室に来ていただければベッドもありますし」 「カリプソ先生……ありがとうございます!」 なんて素敵な先生なの――――今日はそれだけでとってもいい一日になりそうな気がした。ひとまずその場はカリプソ先生に別れを告げ、颯爽と自分のクラスへと向かったのだった。 ――――放課後―――― 「初日からなかなかハードだったわね…………」 魔法学園は13歳から入学で1~4年生まであり、1学年に4クラス編成で火、水、風、土のクラスに分けられていた。 私が担任を受け持つクラスは4年生の風クラス。
「う――ん、素晴らしい」 この世界で目覚めてから10日ほど経って、その間健康的な食事と運動(主にジョギングと筋トレ)をしながら魔法を試したり、使いこなせるようにしたりと色々頑張った結果、美しい筋肉の筋が見えるようになってきて、自分の腕を見ながら感動していた。 やっぱり食事と運動って大事よね。 転生前の世界で運動部だった私は、その辺の知識を生かして筋肉が全然ついていないクラウディア先生の肉体改造に踏み切ったのだった。 クラウディア先生の体はとても女性的で魅力的だけれど、私には少し動きにくい。 胸も大きいので布を巻いてあまり揺れないように固定してみた。 この状態で運動してみたところ、とっても動きやすい! 学校の先生って肉体労働も多いだろうから、この状態で出勤しよう、そうしよう。このスタイルなら変に周りを誘惑する事もない……と思うし、あの堅物の王太子殿下も話しやすくなるんじゃないかな、なんて。 これから色々とお世話になりそうだから、悪印象は避けたいものね。 クラウディア先生は公爵家の令嬢でもあるから女性的なのは素敵な事なのだろうけど、その魅惑のボディで男性を誘惑していくキャラクターなものだから、殿下にはふしだら認定されている。 先生自体は全く男性と遊んでいた記憶もないし、勝手に言い寄られていただけなのに傍から見たら誘惑しているように見えるのね。 彼女自身も高慢な性格を演じていた事も相まって、男性がクラウディア先生につかまっているような構図が出来上がってしまっていた。 婚約者がいないのは好都合だけれど、皆に嫌われるのは避けたい。 何より何も悪くないクラウディア先生がなぜ孤独にならなければならないのか、釈然としないもの。 自分の中では極力周りを誘惑しないように服装に万全を期して出勤の準備を済ませ、馬車に乗り込んで魔法学園に向かったのだった。 魔法学園に出勤する時のクラウディア先生の服装は、丈の長いローブを腰の位置に太めのベルトで締め、ドレス状にして着こなしていた。 セリーヌに「いつものように胸元を開けますか?」と聞かれ、胸に布を巻いているし肌を見せるのは落ち着かないから、襟はハイカット。首元にはレースのクラヴァットをあしらうカッコいい装いにしてもらったのだった。 「お嬢様、今日の装いは一段と素敵です~~!」 セリーヌが服装を
セリーヌに言われて眠ったはずなのに、なぜか私はクラウディア先生の後ろにいて、彼女は学園での服を着て学園内を歩いている。 何度もプレイしたゲームなので、ここがドロテア魔法学園の校舎内である事はすぐに分かった。 どこに向かっているのだろう…………廊下を歩いていると生徒たちが声をかけてきて、クラウディア先生も楽しそうに言葉を返していた。 「先生、次の授業は何を教えてくれるの?」 「クラウディア先生、この魔法のコツを教えて」 その様子を後ろから見守るような形になっていた。幽体離脱というより、夢で彼女の記憶を見ているって事かな? もちろん生徒たちには私の姿は見えていないようだ。 生徒達との会話が終わり、広い校舎内を一人歩いていくクラウディア先生の後をついていくと、エントランスホールに下りる大きな階段にさしかかった。 クラウディア先生は普通に下りようとしていたのだけど、突然時が止まったかのように彼女が動かなくなる。 どういう事?これは魔法なの? 今の私は幽体みたいな状態だからなのか、私自身は自由に動く事が出来ているわ。 クラウディア先生の前に行って先生を起こそうとしてみたものの、透けてしまって触る事も出来なかった。 そりゃそうよね……記憶を見ているのかもしれないし、もしこれが過去の出来事なら私がどうこう出来るわけがない。 じゃあ、この後ってどうなるんだろう。 確か私が目覚めた時にセリーヌや殿下が階段から落ちてって言ってたような……するとクラウディア先生の後ろからノイズのような性別が分からない声が聞こえてきたのだった。 「さようなら、クラウディア先生」 その声とともに時間が動き出し、誰かに背中を押されたクラウディア先生は階段を一直線に滑り落ちていったのだった―――― 『クラウディア先生!』 もちろん私の声など届くわけはないんだけど、先生の元に駆けつける前に突き落とした犯人の方を振り返ると、影のようになっていてよく見えない。 誰なの?誰が先生を――――――絶対に見つけてみせる――――! そう決意したところでゆっくりと目が覚めて、今いる世界に意識が戻っていく。 「…………夢……」 目覚めると酷い汗をかいていて、ネグリジェのようなドレスも汗で湿っていた。
目の前にシグムントがいる。 あのゲームでは一番人気で能力もずば抜けて高いチートキャラクター。 全ての魔法が得意なのに加えて、光の魔法が使えるただ一人の人物。 でも私がクラウディア先生なのだとしたら、2人は幼馴染でありながら犬猿の仲だったはずよ。どうしてシグムント殿下がクラウディア先生の邸に? 彼は極度の堅物で、クラウディア先生のようなふしだら(に見える)女性は嫌悪の対象なので、二人は顔を合わせれば嫌味の押収だった。 今一番会いたくなかったな……中身はクラウディア先生じゃないのに、いつも嫌味を言ってくるシグムント殿下にどうやって立ち向かえばいいの?! クラウディア先生なら負けじと言い返す事が出来るのだろうけど……私がそんな事を悶々と考えているとセリーヌが彼に挨拶をし始める。 「王太子殿下、大きな声を出してしまい申し訳ございません!お嬢様が頭痛で倒れられたので――」 「頭痛?ああ、あそこから落ちたのだから頭を強打しているのは知っている。私は学園の理事長だからな、今日は職員の見舞いに来ただけだ。しかし君は仮にも風魔法の教師なのだから、目覚めたらすぐに癒しの魔法を使えばいいのではないか?」 そう言えばそうだ。クラウディア先生が得意な魔法は風魔法で、癒しの魔法もあるはず。 でも中身が私なのでそもそも使い方が分からない。 転生したばかりで混乱している状態で癒しの魔法を使ってもボロが出そうだし、今は止めた方が良さそう。どうにかして切り抜けないと……。 「王太子殿下、ご心配には及びません。後ほど癒しの魔法を使いますので私は大丈夫です。お引き取りくださっても構いませんから……っ」 殿下にそう言って一人で立ってみたものの、やっぱり無理かも……立った瞬間に頭がグラっとして目が回り、目の前が暗くなっていく―――― 「お嬢様!」 「ロヴェーヌ先生!」 2人の声が遠くに聞こえる…………体が地面に倒れ込もうとしたところで誰かが私を受け止めてくれて、事なきを得たようだった。 「…………っ……いたたっ」 思わず声が漏れてしまったけど、倒れた衝撃で頭がガンガンするだけで、体に痛みはなかった。 私を支えている力強い腕、これはセリーヌのものではない。 …………だとすると、殿下?ハッとして
――ズキン――ズキン――――――頭が割れるように痛い―――――― ――どうしてこんなに痛いの―― ――こんなところで寝ている場合ではないのに―― ――だって今日は―――――― だんだんと意識が暗闇から光のある方へのぼっていく。 その間も頭痛が止むことはなく、この痛みが夢か現実か分からずに、とにかくこの痛みから解放されたいと願っていると、目の前にパアァァと光が広がってハッと目を見開いた。 そこには、今までの人生で見たことのない景色が広がっていたのだった。 「え……何?この部屋……………………」 目が覚めて最初に飛び込んできた景色は、よくあるおとぎ話に出てくるお姫様のような部屋だった。 さっきまでうなされていたのか、額には汗が滲んでいる。 「ここは日本、じゃない……?」 ベッドに寝ながら呟いたひと言は、静まり返っている部屋に虚しく響いただけだった。 私は大学でバレーボール部に所属していて、今日は春季リーグがある大事な日。 そして、そんな日に限って寝坊したものだから、焦りながら走って試合会場へ向かったはず……会場近くの横断歩道を渡れば着くと思ったところでトラックが………………こちらに向かってきたところまでは覚えている。 その後は? まさか私、あのトラックにはねられて……? 「うそ…………そんなの信じない…………」 背が高い事がコンプレックスで、何か自分に自信をつけたいとバレーボールを始めた。 そしてそのバレーボールで強豪の大学に入る事が出来、レギュラーにもなれて優勝目指して頑張っていたのに……練習を頑張り過ぎて寝坊してしまうなんて。 何が現実で何が夢なのか、訳が分からないのでひとまず体を起こしてみる。 ――――ズキーンッ―――― 起き上がった瞬間に頭が異常なほど痛みだし、ズキズキするので布団の上でうずくまってしまう。 痛すぎる――――もし死んだとしてもどうして頭が痛むの?死後の世界なら痛みなんてないハズじゃ―――― そこまで考えて、ふと違う考えが私の頭を過ぎっていった。 ここは死後の世界じゃないかもしれない……布団は妙にリアルだし、周りの景色もリアルな感じがするのよね。頭は痛むけれど、ここがどこ