LOGINえ………?
私は耳を疑い、大柄な騎士の合間からユディトの顔を見た。しかし彼女は、ただ強がるように笑ってる。
「ユディト……?あの……私はその、元皇太子妃で……」
この場は私一人で愚かな者達を引きつければ、丸く収まると———皆に危害は及ばないと。
しかし、ユディトに続いて他の皆まで騎士達に抗議をし始める。「そうよ!リリーを離しなさいよ!この野蛮人!」
「帰れ!ゲス野郎共!リリーに触るな!」
どうして……皆が私を?
「は?お前ら知らないのか!
この女はなあ!皇太子殿下を裏切って下級騎士を誘惑し、淫らな不倫をした大罪人なんだよ! 心も体も汚い女なんだ!見てみろよ、この、いかにも男を誘惑しそうな顔と胸を!」娼婦達に罵声を浴びせられ、騎
皇室では、エドウィンとロベリアとの間に生まれてくる子に関する議論が行われていた。 子供の皇位継承権を巡ってだ。 貴族達はここぞとばかりに二人を攻めた。 「優秀な皇太子妃を裏切り、罠に嵌め、不貞を犯して産まれた子を正当な皇子として認めるか?」 「答えは、いいや!」 「ロベリア・モンターニュは汚い手段で無理やり皇太子妃の座についた。そんな者が産んだ子に、皇位継承権があるか?」 「答えは、ない!!」 「法律に不忠実な者はやがて国をも裏切るだろう。よって彼らの子供にも、その権利はない!」 盛り上がる貴族達。 すでにエドウィン達は辺境に送られているのに。 ロベリアも離宮にいるが、軟禁されていて、あれから一度も顔を見ていない。 どちらにせよ、皇帝不在の帝国。 彼が即位する日も近いかもしれない。 「子供に罪はないのに。」 私がつぶやくと、隣のアイザックさまが深く同調した。 追放された哀れな元皇太子妃という名目で、私は今この場にいる。 「親が無能なばかりに。可哀想な子供です。」 「継承権は無くなるかもしれませんが、私達が愛情を持って育てましょう。 子供は、親とは違いますから。」 「リーリエ、貴方という人は……はあ。 この場で貴方を抱きたい気分だ。」 「だ、駄目ですよ?」 「冗談です。ただ……」 「そうすると、残すは後継者問題です!」 「直ちに新しい皇太子妃を迎え、後継者を作るべきです!」 結局貴族達は、自分達の権力欲のために、自分達の娘をアイザック様に当てがいたいのだ。 それは分かるけれど……アイザック様は私を皇太子妃にすると。 どうするのかしら……? しばらく彼らの白熱した議論を聞いていたら、また胃がムカムカしてきた。
散々人を愛撫したアイザック様は、今夜はかなり興奮している。手袋を外したせい? 「ああ、綺麗です……リーリエ様っ!興奮が収まりそうもない。 見て下さい、私のも、もうこんなに。」 彼は自身のものを扱き、限界まで我慢する。なぜ我慢するのか。返っていやらしい。 こんな変態的行為……。 これが、ユディトやデリラ達が言っていた……変態的行為? 「も、お願いします、アイザック様。 早くきて———」 焦らされた私の方が耐えきれなくなるほど。 そして結局私はまた自分から求めてしまう。 彼が欲しくて。 アイザック様はいつも無理にはしない。私を最優先に扱ってくれる。……変態だけれど。 「ああ……!リーリエ、リーリエ!君は女神だ!美しい、かわいい、気高い!そして…… 私が最も愛する人……!分かりますか? リーリエ。貴方の中に私がいます。 貴方を悦ばせるために、孕ませるためにいるんです。」 彼が優しく抽送を繰り返すたび、下腹部の芯が切なくて辛くなる。 もっと早く、もっと激しくして欲しいと。 そう願うと彼に願いが通じたように、腰の動きが早くなる。 「わ、分かります、お腹がいっぱいです……! アイザック様、んっ、待っ、んんっ!あっ!」 「……くっ!リーリエ、私ももうっ…… 一緒に……!孕んでください、リーリエ! 私の子を……!」 果てしない快感を覚えると同時に、彼のものがまた中で同時に弾け、暴れ回る。 一緒に脈打つ鼓動。 「はあ、はあ、
アイザック様の皇太子即位に、エドウィンの廃位、皇帝夫妻の追放など。 皇室も帝国も大混乱しているというのに。 今夜も、アイザック様は私の魔力を求めて離さない。 彼が新しく皇太子宮に指定した部屋で、すでに私達は裸同然で抱き合う。 「あ、あの……!私はいつかここを去る身です……! アイザック様が皇太子にお戻りになったなら、新しく皇太子妃を迎える必要があります。 必要なら魔力供給は行いますので、その辺りはしっかり線引きをされた方が……」 引き離そうとすると、アイザック様は眉を吊り上げられた。 「誰がここを去ると?そんな事……私が許しません。」 「きゃ!」 アイザック様に魔術で拘束され、ベッドに仰向けに寝かされてしまう。 そしてついに彼は、あの手袋を口で外された。 初めて見た、アイザック様の逞しい手。 しなやかで品があって……骨張って、指も長い。すごく逞しい手だわ。 「あ、アイザック様……?」 薄暗い部屋で彼は逞しい体で、私を鋭く、捕食者のように見つめる。 「言いましたよね?リーリエ様。 私は貴方を妻にすると。そして……貴方を孕ませると。 私は有言実行する男です。 今から貴方が私から離れるなどと考えないよう、孕ませる事にします。覚悟してくださいね。 リーリエ様。」 「え……?アイザック、様?」 彼は妖艶なため息を吐く。その後、ありとあらゆる手を尽くして、魔力供給……を行った。 いや、これは魔力供給という名の。 彼の手に直に触れられ、いつもよりも私の体が悦んでる。 こんなの教え込まれたら、もう戻れない。 アイザック
裁判で私は勝利を。アイザック様は皇太子の座に返り咲いた。 「ゆ、許してくれ、フェリクス……あの頃は魔術師なんてよく分からない存在だったんだ。 な?落ち着いて……」 彼をいつ死ぬともしれない死地に追いやり、平和を維持した皇帝。しかし今はアイザック様に情けなくそう懇願する。 あの大きな魔獣は倒したが、彼がいなければ再びあの地に魔獣が蔓延るだろう。 まだ戦わせたいのだ。しかしアイザック様は自分がされたように、無慈悲に告げる。 「陛下。今度は貴方が国を守る番です。 私は何年も戦場にいたので、そろそろ交代する時ですよ。 エドウィンと一緒に。」 皇帝が膝から崩れ落ちると、背後にいた皇后が擦り寄ってくる。 「私は許して……ね?貴方の母親でしょう?」 「母上。父上とエドウィンには母上が必要でしょう。側で二人を支えてあげて下さい。 それが、リーリエを傷つけたあなた方への罰です。」 自分の事ではなく、私の事を……。 彼が両陛下を切り捨てると、今度はエドウィンが縋りつく。全くこの家族は学習しないのね。 「いやだ、魔獣退治なんて……死ぬに決まってる……いやだ、いやだ!兄さん!考え直してください!」 「そんな場所と知りながら喜んで送り出したのはエドウィン、お前達だろう?」 お見事です。アイザック様。 全てを冷酷に切り捨てるこの勇ましさ。鋭さ。 どこまでもついていきます。 背後で彼を見守りながら、私はまたアイザック様に惚れる。 「あ、ロベリアは身重だから、生まれるまでは皇室で預かろう。 と言っても別宮に軟禁だ。 子供に罪はないから、私達が引き取ろうと思う。 だが、それだと寂しいだろうから…… ロベリアにも出産後には辺境に行ってもらおう。」
私はこれまで、リーリエの何を見てきたのだろうか? 兄さんが私を脅しにきたすぐ後、他の女官達からの密告があった。 「告白いたします! ずっと、皇太子妃……ロベリア様に脅されて言えませんでしたが…… 本当は、元皇太子妃のリーリエ様は素晴らしい女性でした。 私達にはいつも優しくしてくれたんです。 ですが私達は……ロベリア様に……言うことを聞かなければクビにすると言われて。 だから、宮廷にリーリエ様に関する悪い噂を流しました。」 「なん、だと?噂?何の?」 それは、リーリエが実際には一度も言ったことがない言葉だったという。 「《エドウィン様が無能》だと。 《彼はできそこないで、仕方なく仕事を手伝っている》と。……まるでリーリエ様が言ったように噂を流せと……」 「《夜を共にするのも面倒臭いし、あれも下手くそだ、》とも。」 「何だと!!」 そんな恥部まで!? 「《私は優秀だ、エドウィン様は無能》。」 そんな……嘘だ。すべてロベリアが? じゃあ、夜の誘いを断ったと思っていたあの全ては? ロベリアが手紙を止めていて、リーリエは知らなかったのか?一人のあの食事も? 「それにロベリア様は、殿下と関係を持つ前に、複数人の男性と寝ていたそうです。 そのおかげで殿下を落とせたと、やけに自慢していたそうですよ。」 嘘だろう?私が初めての相手ではなかったのか!?ロベリア!君は! さらにリーリエ付きだった補佐官も言う。 「いつも、エドウィン様の事をお考えになっていましたよ。」 「仕事の手柄は、全てエドウィン様のものにするようにと。」 出てくるのはリーリエが私のために懸命に働いてくれていた事実と、ロベリアの多くの嘘。
裁判は滞りなく進み、時々ロベリアが馬鹿みたいに反論してきたけれど、皆分かっていた。 “いかに私の揃えた証拠に信憑性があるか”。 いかにロベリアの言っている事が嘘っぽく聞こえるか。 そしてついに彼女は墓穴を掘る———。 「何よ、皆して! リーリエを裏切って不貞を働いたのは、エドウィン様じゃない! 白状します、裁判長! リーリエを嫌って、不倫していたのはエドウィン様です! 彼は喜んで私を抱いてました! 不妊用のワインも、彼が積極的に飲ませていたんです! 皇帝陛下も皇后陛下も、子供が欲しくてリーリエを追い出したんですよ!どうです!?これで、私だけが悪いなんて言えないですよね!! 私は悪くありませんよね!ねえ!」 ———本当に馬鹿なロベリア。 私は彼女が必死に叫ぶのを見て、思わず吹き出してしまいそうになった。 まさか自分のみならず、エドウィン様や両陛下の企みまで暴露してしまうなんて。 長年親友していた、こちらが恥ずかしいわ。 傍聴席のアイザック様が微笑し、一般から選ばれたデリラも、ぐっと拳を掲げてくれる。 「——— 皇太子エドウィン・カディスと皇太子妃ロベリア・モンターニュは、皇室の法を犯し、不貞行為を働きました。 あげく、元皇太子妃に不妊のワインを飲ませ、罪を着せて娼館送りにした! これは皇族に最もあるまじき、重罪です! よって、ここに二人の有罪判決を言い渡します!」 わぁ!っとデリラを始め、傍聴席の貴族や帝国民達が一斉に歓喜の声を上げる。 その時———。 「裁判長、少し宜しでしょうか。」 アイザック様……? 傍聴席のアイザック様が立ち上がり、裁判長に挙手をして訴える。 彼は裁判長に何かを見せたよ
戸惑う私にアイザック様はどこか可笑しそうに微笑された。 「さあ。リーリエ様。私と共にベッドへ。」 「なぜ私の名前を………」 先程男主人から私には「リリー」という商売名が与えられたばかりだというのに。 それに対してアイザック様は微笑されるのみ。 優しく誘われるように手を差し出され、ドキッと心臓が跳ねる。 何馬鹿な事を。エドウィン様に裏切られてもう男など懲りたはず。 単にこの人は商品である私を買い、欲の発散に抱くだけなのだから。
*** 「貴方の、1095日分を私が買いました。」 「え……………?」 この方は、今一体何と言ったの? 辺境にある娼館に送られてから私は、そこの男主人に色々と説明を受け、風呂に入り、薄い衣服を着用するようにと命令された。 まさにピンク色のシュミーズのような。 「いきなりだが、今夜客を取るからな。」 先に部屋で待機するようと、半ば背中を押される形で押し込まれた。 彼は私が元皇太子妃なのを知っているようだが扱いは雑だった。 狭くて薄
ロベリア!一体何を企んでるの? すぐに追い払おうとしたが、逆に腕を強く掴まれてしまう。 「ロベリ———」 「可哀想なリーリエ。 まさか娼館送りだなんて。 あんな所に送られて、本当に惨めね。 私…………ずっと貴方が嫌いだったの。 いつも偉そうに上から人に物を言ってくる貴方が。単に高貴な家に生まれたというだけで。 感謝してよね?皇太子妃の座は私が継いであ・げ・る。 貴方と違ってエドウィン様に愛されながら、彼の子をたくさん産んであげるから!ふふ!」 イタズラ好きな子供の様に、ロベリアは私の耳元で小さく囁いた。 ………………この女は悪魔だ。 親友だからと、ロベリアには二人き
*** 「皇太子殿下を裏切って、下級騎士と姦通したんですって。」 「まあ!なんて淫乱な。確かになんか冷たい方だとは思っていたよ! それにあの見た目だもの。白銀の髪に豊満な胸。あの妖艶な青い瞳なんて、いかにも浮気しそうよねえ。 元皇太子妃のリーリエ様って。」 あの忌まわしい事件から流れる様に時が過ぎ、今日私は裁判で決められた通り【娼館】に送られる。 「不貞を犯した皇族が罰で娼館送りになるのはまだマシな方だよ! 処刑じゃなかっただけでも良しとしないと」 「元皇太子妃がねえ。御愁傷様。」 気づいたら帝国中に私の悪い噂が広まっていた。 これはエドウィン様が意図的に流したものと思