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魔術師団長アイザックの誘惑(2)

last update Veröffentlichungsdatum: 13.06.2026 19:20:00

 戸惑う私にアイザック様はどこか可笑しそうに微笑された。

 「さあ。リーリエ様。私と共にベッドへ。」

 「なぜ私の名前を………」

 先程男主人から私には「リリー」という商売名が与えられたばかりだというのに。

 それに対してアイザック様は微笑されるのみ。

 優しく誘われるように手を差し出され、ドキッと心臓が跳ねる。

 何馬鹿な事を。エドウィン様に裏切られてもう男など懲りたはず。

 単にこの人は商品である私を買い、欲の発散に抱くだけなのだから。

 アイザック様は手慣れた様子で奥にあるクロークにローブを引っ掛けた。

 娼館に慣れてらっしゃるのかしら。これまで何人もの方と……?

 でもじゃあ、あの女嫌いという噂は……

 シルク生地のような手袋越しに、彼の逞しい手が私の髪をサラッと撫でた。

 「ひゃぁいっ……!」

 意図せず変な声が出て、私は慌てて自身の口を塞ぐ。が…

 「ぷ、く、くっ。」と目の前から笑い声が。

 「あ……失礼。しかし……リーリエ様でもそのようにお可愛らしい声が出せるのですね。」

 「………???」

 さらっと笑ったアイザック様が、口元の緩みを拳で押さえた。

 かと思えばまるで手品のようにあっという間にベッドに仰向けに寝かされてしまう。

 ———怖い!!

 私はぎゅっと瞼を閉じた。

 滑らかな肌触りの手袋越しに頬をそっと撫でられ、ビクッと体が跳ねる。

 見られているわ………目を閉じていても熱い視線を感じる。

 隣にアイザック様も寝転んだ気配がした。

 ああ………

 これから私はこの方に———————。

 「それでは。リーリエ様。

 今夜はゆっくりとお休み下さい。」

 「え…………………?」

 一瞬何を言われたのか分からなかった。

 パチンと軽快な音が聞こえ、何か優しく温かいものに体が包まれた気がした。

 次の瞬間には心地の良い睡魔が襲い……

 「疲れたでしょう。リーリエ様。

 間に合って……本当………に………よか」

 アイザック様が最後何と言っているのか聞き取れなかったけれど。

 まるで鳥の羽のようにふわふわと体が軽くなり、私は深い眠りに堕ちてしまった。

 夢の中で誰かが泣いていた。

 あれは……私……?それにあの子は………

 あの独特な色をした髪が揺れていた。

 幼い頃、確かに私達は皇室と侯爵家、双方の利益のために婚約を結ばされた関係だった。

 『リーリエ。君が大好きだ。私達、必ず良い夫婦になろう。』

 『はい。もちろんです。〇〇様。」

 あれは間違いなくエドウィン様だった。

 あの時確かに私を好きだと言ったくせに。

 裏切るなんて。

 だけど、エドウィン様がなぜか苦しそうに微笑している。

 どうして?エドウィン様。なぜそんな風に苦しそうなの?

 それならどうして………

 これは夢?……それとも————?

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