LOGIN朝目覚めると。扉を開けて部屋に入ってきたロベリアや、他の女官数名が悲鳴をあげた。
私は裸で、隣には………エドウィン様が寝ているものだとばかり。「きゃあああ!!皇太子妃様、その男は一体誰ですか!!」
「まさか、皇太子妃ともあろう者が不貞行為を犯すなんて………!!」ロベリア。貴方にはもう来るなと言っておいたのに、なぜその場にいるの?
それに人の夫と不貞行為を犯したのは……
「申し訳ございません、皇太子妃様!!
誘いを断れずに……殿下に触れた私の罪でございます!!」床にひれ伏す見慣れない男。
証言が狂気じみてる。 こんな男知らない。何も覚えてないのに。 事態は瞬く間に悪い方向へと進んでいった。 ここぞとばかりにエドウィン様は皆の前で私を激しく非難し、責め立てた。 「私達の夫婦の寝室で汚らわしい不貞行為を犯した! リーリエ、お前とは離婚だ!! 我が国の法を破り、重い罪を働いたリーリエを暫く拘禁しておくように!」「エドウィン様、それなら教えて下さい。
昨夜貴方は、あの後どこに? それに法を犯したのは貴方の方では?」兵を押し退け、そう問い詰めれば、エドウィン様は大きく視線を逸らした。
その瞬間私は悟ってしまった。 「人のせいにするのか!?この、裏切り者の淫乱女め…!! 早くその罪人を連れて行け!!」そう——————エドウィン様。
私を嵌めたのは、貴方なのですね。 「エドウィン様…あなたが今言った言葉、そっくりそのままお返しします。 裏切ったのは、私ではなく貴方でしょう?」 真実を告げた私の言葉は、エドウィン様にも他の誰にも届かなかった。 一体私の何が悪かったの?明らかに仕組まれた事だったのに、皇太子という立場のエドウィン様の命令を跳ね除ける者は、誰も居なかった。
更には皇帝陛下や皇后陛下までもが、何もかも分かっている様だったのに黙秘を決め込んだ。———ああ、そうか、私が不妊だから。
お二人とも皇孫が必要だから。 4年も私に子ができないから…… 自らの手を汚さずして、手っ取り早く私を追い出せる策に乗ってしまわれたのね。 兵達に捕えられ惨めな姿を晒す私を、冷めた瞳で傍観するエドウィン様。 そして———彼のすぐ側にいるロベリアが、まさに勝ち誇ったように微笑していた。エドウィン様にロベリア。
私が何をしたというの? 正当な皇太子妃として、真っ当な意見を通しただけだったのに。これまで必死に二人の力になってきたのに、なぜ私を地獄に突き落とすの?
散々人を愛撫したアイザック様は、今夜はかなり興奮している。手袋を外したせい? 「ああ、綺麗です……リーリエ様っ!興奮が収まりそうもない。 見て下さい、私のも、もうこんなに。」 彼は自身のものを扱き、限界まで我慢する。なぜ我慢するのか。返っていやらしい。 こんな変態的行為……。 これが、ユディトやデリラ達が言っていた……変態的行為? 「も、お願いします、アイザック様。 早くきて———」 焦らされた私の方が耐えきれなくなるほど。 そして結局私はまた自分から求めてしまう。 彼が欲しくて。 アイザック様はいつも無理にはしない。私を最優先に扱ってくれる。……変態だけれど。 「ああ……!リーリエ、リーリエ!君は女神だ!美しい、かわいい、気高い!そして…… 私が最も愛する人……!分かりますか? リーリエ。貴方の中に私がいます。 貴方を悦ばせるために、孕ませるためにいるんです。」 彼が優しく抽送を繰り返すたび、下腹部の芯が切なくて辛くなる。 もっと早く、もっと激しくして欲しいと。 そう願うと彼に願いが通じたように、腰の動きが早くなる。 「わ、分かります、お腹がいっぱいです……! アイザック様、んっ、待っ、んんっ!あっ!」 「……くっ!リーリエ、私ももうっ…… 一緒に……!孕んでください、リーリエ! 私の子を……!」 果てしない快感を覚えると同時に、彼のものがまた中で同時に弾け、暴れ回る。 一緒に脈打つ鼓動。 「はあ、はあ、
アイザック様の皇太子即位に、エドウィンの廃位、皇帝夫妻の追放など。 皇室も帝国も大混乱しているというのに。 今夜も、アイザック様は私の魔力を求めて離さない。 彼が新しく皇太子宮に指定した部屋で、すでに私達は裸同然で抱き合う。 「あ、あの……!私はいつかここを去る身です……! アイザック様が皇太子にお戻りになったなら、新しく皇太子妃を迎える必要があります。 必要なら魔力供給は行いますので、その辺りはしっかり線引きをされた方が……」 引き離そうとすると、アイザック様は眉を吊り上げられた。 「誰がここを去ると?そんな事……私が許しません。」 「きゃ!」 アイザック様に魔術で拘束され、ベッドに仰向けに寝かされてしまう。 そしてついに彼は、あの手袋を口で外された。 初めて見た、アイザック様の逞しい手。 しなやかで品があって……骨張って、指も長い。すごく逞しい手だわ。 「あ、アイザック様……?」 薄暗い部屋で彼は逞しい体で、私を鋭く、捕食者のように見つめる。 「言いましたよね?リーリエ様。 私は貴方を妻にすると。そして……貴方を孕ませると。 私は有言実行する男です。 今から貴方が私から離れるなどと考えないよう、孕ませる事にします。覚悟してくださいね。 リーリエ様。」 「え……?アイザック、様?」 彼は妖艶なため息を吐く。その後、ありとあらゆる手を尽くして、魔力供給……を行った。 いや、これは魔力供給という名の。 彼の手に直に触れられ、いつもよりも私の体が悦んでる。 こんなの教え込まれたら、もう戻れない。 アイザック
裁判で私は勝利を。アイザック様は皇太子の座に返り咲いた。 「ゆ、許してくれ、フェリクス……あの頃は魔術師なんてよく分からない存在だったんだ。 な?落ち着いて……」 彼をいつ死ぬともしれない死地に追いやり、平和を維持した皇帝。しかし今はアイザック様に情けなくそう懇願する。 あの大きな魔獣は倒したが、彼がいなければ再びあの地に魔獣が蔓延るだろう。 まだ戦わせたいのだ。しかしアイザック様は自分がされたように、無慈悲に告げる。 「陛下。今度は貴方が国を守る番です。 私は何年も戦場にいたので、そろそろ交代する時ですよ。 エドウィンと一緒に。」 皇帝が膝から崩れ落ちると、背後にいた皇后が擦り寄ってくる。 「私は許して……ね?貴方の母親でしょう?」 「母上。父上とエドウィンには母上が必要でしょう。側で二人を支えてあげて下さい。 それが、リーリエを傷つけたあなた方への罰です。」 自分の事ではなく、私の事を……。 彼が両陛下を切り捨てると、今度はエドウィンが縋りつく。全くこの家族は学習しないのね。 「いやだ、魔獣退治なんて……死ぬに決まってる……いやだ、いやだ!兄さん!考え直してください!」 「そんな場所と知りながら喜んで送り出したのはエドウィン、お前達だろう?」 お見事です。アイザック様。 全てを冷酷に切り捨てるこの勇ましさ。鋭さ。 どこまでもついていきます。 背後で彼を見守りながら、私はまたアイザック様に惚れる。 「あ、ロベリアは身重だから、生まれるまでは皇室で預かろう。 と言っても別宮に軟禁だ。 子供に罪はないから、私達が引き取ろうと思う。 だが、それだと寂しいだろうから…… ロベリアにも出産後には辺境に行ってもらおう。」
私はこれまで、リーリエの何を見てきたのだろうか? 兄さんが私を脅しにきたすぐ後、他の女官達からの密告があった。 「告白いたします! ずっと、皇太子妃……ロベリア様に脅されて言えませんでしたが…… 本当は、元皇太子妃のリーリエ様は素晴らしい女性でした。 私達にはいつも優しくしてくれたんです。 ですが私達は……ロベリア様に……言うことを聞かなければクビにすると言われて。 だから、宮廷にリーリエ様に関する悪い噂を流しました。」 「なん、だと?噂?何の?」 それは、リーリエが実際には一度も言ったことがない言葉だったという。 「《エドウィン様が無能》だと。 《彼はできそこないで、仕方なく仕事を手伝っている》と。……まるでリーリエ様が言ったように噂を流せと……」 「《夜を共にするのも面倒臭いし、あれも下手くそだ、》とも。」 「何だと!!」 そんな恥部まで!? 「《私は優秀だ、エドウィン様は無能》。」 そんな……嘘だ。すべてロベリアが? じゃあ、夜の誘いを断ったと思っていたあの全ては? ロベリアが手紙を止めていて、リーリエは知らなかったのか?一人のあの食事も? 「それにロベリア様は、殿下と関係を持つ前に、複数人の男性と寝ていたそうです。 そのおかげで殿下を落とせたと、やけに自慢していたそうですよ。」 嘘だろう?私が初めての相手ではなかったのか!?ロベリア!君は! さらにリーリエ付きだった補佐官も言う。 「いつも、エドウィン様の事をお考えになっていましたよ。」 「仕事の手柄は、全てエドウィン様のものにするようにと。」 出てくるのはリーリエが私のために懸命に働いてくれていた事実と、ロベリアの多くの嘘。
裁判は滞りなく進み、時々ロベリアが馬鹿みたいに反論してきたけれど、皆分かっていた。 “いかに私の揃えた証拠に信憑性があるか”。 いかにロベリアの言っている事が嘘っぽく聞こえるか。 そしてついに彼女は墓穴を掘る———。 「何よ、皆して! リーリエを裏切って不貞を働いたのは、エドウィン様じゃない! 白状します、裁判長! リーリエを嫌って、不倫していたのはエドウィン様です! 彼は喜んで私を抱いてました! 不妊用のワインも、彼が積極的に飲ませていたんです! 皇帝陛下も皇后陛下も、子供が欲しくてリーリエを追い出したんですよ!どうです!?これで、私だけが悪いなんて言えないですよね!! 私は悪くありませんよね!ねえ!」 ———本当に馬鹿なロベリア。 私は彼女が必死に叫ぶのを見て、思わず吹き出してしまいそうになった。 まさか自分のみならず、エドウィン様や両陛下の企みまで暴露してしまうなんて。 長年親友していた、こちらが恥ずかしいわ。 傍聴席のアイザック様が微笑し、一般から選ばれたデリラも、ぐっと拳を掲げてくれる。 「——— 皇太子エドウィン・カディスと皇太子妃ロベリア・モンターニュは、皇室の法を犯し、不貞行為を働きました。 あげく、元皇太子妃に不妊のワインを飲ませ、罪を着せて娼館送りにした! これは皇族に最もあるまじき、重罪です! よって、ここに二人の有罪判決を言い渡します!」 わぁ!っとデリラを始め、傍聴席の貴族や帝国民達が一斉に歓喜の声を上げる。 その時———。 「裁判長、少し宜しでしょうか。」 アイザック様……? 傍聴席のアイザック様が立ち上がり、裁判長に挙手をして訴える。 彼は裁判長に何かを見せたよ
「私———リーリエ・アスターグレンは、皇太子殿下とその妻、ロベリア・モンターニュの二人に罠に嵌められました。 二人は姦通の罪を誤魔化すため、私を罪人に仕立て上げたのです。」 手っ取り早く私の潔白を照明するには、公開裁判が一番だ。 早くに裁判所で手続きをしており、エドウィン達だけでなく、二人の罪を黙認した皇帝達も引き摺り出した。 この裁判で、私は関係者だけでなく、一般からも傍聴者を募る。 事実は、カディスの国民によって広げられるからだ。国民の口は遥かに緩い。瞬く間に私の無実が伝わるだろう。 「な!私達は姦通なんかしていません! この女が在位中も、清い関係でした!」 ———ロベリア。私がもう何者でもないからって、たいした口の利き方ね。 「被告人は静粛に。」 「裁判長、証人を呼んでも?」 「認めましょう。」 今回の裁判長は熟年のベテラン女性で、面識もある。 公正な判断をしてくれるだろう。 さっきまで原告席の私の隣にはアイザック様がいて…… なんの心配もいらないと、手を繋いでくれていた。優しい彼の前で、私は堂々と戦う。 ———証言台に現れたのは、アウトローの魔術師だ。 彼はアイザック様を見てはビクビクと怯えてる。 何をされたのか分からないけれど、とにかく都合がいい。 「私はロベリア様に依頼され……約3年の間、不妊になるよう魔術を施したワインを作っていました。 ロベリア様はそれを、元皇太子妃に飲ませると言っていました。皇太子殿下の子を産ませないようにと……」 「!!」「!?」 エドウィンも、ロベリアも、皇帝達も皆面白いほど顔が青ざめる。 身に覚えがあるみたいでよかった。 「こんなの嘘よ!あの女の作り話です!」
*** 「貴方の、1095日分を私が買いました。」 「え……………?」 この方は、今一体何と言ったの? 辺境にある娼館に送られてから私は、そこの男主人に色々と説明を受け、風呂に入り、薄い衣服を着用するようにと命令された。 まさにピンク色のシュミーズのような。 「いきなりだが、今夜客を取るからな。」 先に部屋で待機するようと、半ば背中を押される形で押し込まれた。 彼は私が元皇太子妃なのを知っているようだが扱いは雑だった。 狭くて薄
ロベリア!一体何を企んでるの? すぐに追い払おうとしたが、逆に腕を強く掴まれてしまう。 「ロベリ———」 「可哀想なリーリエ。 まさか娼館送りだなんて。 あんな所に送られて、本当に惨めね。 私…………ずっと貴方が嫌いだったの。 いつも偉そうに上から人に物を言ってくる貴方が。単に高貴な家に生まれたというだけで。 感謝してよね?皇太子妃の座は私が継いであ・げ・る。 貴方と違ってエドウィン様に愛されながら、彼の子をたくさん産んであげるから!ふふ!」 イタズラ好きな子供の様に、ロベリアは私の耳元で小さく囁いた。 ………………この女は悪魔だ。 親友だからと、ロベリアには二人き
*** 「皇太子殿下を裏切って、下級騎士と姦通したんですって。」 「まあ!なんて淫乱な。確かになんか冷たい方だとは思っていたよ! それにあの見た目だもの。白銀の髪に豊満な胸。あの妖艶な青い瞳なんて、いかにも浮気しそうよねえ。 元皇太子妃のリーリエ様って。」 あの忌まわしい事件から流れる様に時が過ぎ、今日私は裁判で決められた通り【娼館】に送られる。 「不貞を犯した皇族が罰で娼館送りになるのはまだマシな方だよ! 処刑じゃなかっただけでも良しとしないと」 「元皇太子妃がねえ。御愁傷様。」 気づいたら帝国中に私の悪い噂が広まっていた。 これはエドウィン様が意図的に流したものと思
かつてこの宮廷で法を犯し、皇帝陛下と不貞行為を働いた子爵夫人は重い罰を与えられこの帝国を追放された。 今度もそうであって欲しかったのに。 ロベリアは全てが暴露され、皇帝陛下が事態を把握したはずなのに私の目の前に堂々と立ち、太々しく言った。 彼の子を妊娠した伯爵令嬢ロベリア。 美しい桜色の髪に金色の瞳。 社交界の花と言われる程の美貌の持ち主。 「陛下が特別に赦免《しゃめん》下さるそうです。 皇太子殿下の血を引く子供の母親だからと。 ……許してね?リーリエ。私、エドウィン様を愛してしまったの。 ここにはすでに愛おしい彼の子が宿っているのよ。」 彼女が大事そうに自身の腹を撫で