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第3話

作者: 奇跡の花畑
顔を洗ってベッドに寝転がっていると、涼太から電話が入った。

彼は単刀直入に尋ねてきた。

「志望校の出願、終わったよな?東豊大学で確定だろ?」

涼太はずっと大都会へ行くことに憧れており、帝都大学以外には絶対に行かないと公言していたほどだ。

しかし、大学受験の一ヶ月前になって突然「やっぱり地元に残る」と言い出し、第一志望を地元の東豊大学に変更してしまったのだ。

今になって、私はたまらずその理由を彼に問い詰めた。

涼太は少し言葉を濁した後、とうとう本音を口にした。

「……だって莉愛、最近の模試の成績ずっと微妙だろ。地元の東豊大学なら、受かりやすくなると思ってさ」

私は、自分の耳を疑った。

「つまり、あなたは莉愛と同じ大学に行くために……自分の長年の夢をあっさり捨てたっていうの!?」

涼太は悪びれる様子もなく、気にも留めないような口調で言った。

「たかが大学じゃないか。莉愛のことに比べたらどうってことないさ!」

私は突然、ひどく滑稽で、大声で笑い出したくなった。

当時、涼太の志望校が帝都大学だと知った時、私は焦りのあまり何日も食事が喉を通らず、夜も眠れなかった。

当時の私の成績では、どう頑張っても中堅レベルの大学に引っかかるのが関の山で、帝都大学のような名門校など夢のまた夢だったのだ。

だが、涼太とこれからもずっと一緒にいたい。

それでも、涼太と同じ大学に通いたくて、その一心で、私は命を削るようにして勉強に打ち込み、昼夜を問わず過去問を解き、英単語を暗記し続けた。

そしてついに成績発表の日。画面に表示された判定結果を見て、私は嬉しさのあまり何度も何度も泣き崩れた。この成績なら、彼と同じ大学に進学できるのだ。

それなのに、彼は莉愛のそばにいたいからという理由だけで、自分の夢をいとも簡単に投げ捨てた。

私と交わした、一緒に同じ大学へ行くというあの約束さえも、あっさりと裏切った。

私は胸の奥底から込み上げる焼きつくような痛みを無理やり抑え込み、彼に問いかけた。

「じゃあ、どうして私にまで、あなたたちと同じ地元の大学を受けろって言ったの?」

彼が答える前に、私は無数の可能性を頭に思い描いた。

私と離れたくないからとか、私一人で遠くの大学へ行かせるのは心配だからとか。

涼太は、意味深にフッと笑い声を漏らした。

そして、こう言ったのだ。

「昔から言うだろ? 華やかな主役には、それを引き立てる脇役が必要だって。

莉愛が誰からも愛される主役なら、お前は彼女を引き立てるための引き立て役なんだよ。

お前が隣で脇役に徹してくれないと、莉愛っていう華やかな主役が引き立たないだろ?」

涼太のその言葉は、冷たい鈍器となって私の胸を叩きのめした。あまりの痛みに、私は全身をガタガタと震わせるしか出来なかった。

莉愛が華やかな主役、私が彼女の引き立て役だと……

それは、私が生まれた日からずっと、悪夢のようにつきまとってきた呪いの言葉だった。

家族を含む私の周りのすべての人がいつも、こうして私を貶め、莉愛を持ち上げてきたのだ。

ただ一人、涼太だけが私にこう言ってくれていたのだ。

「結衣は結衣だ。どんなに平凡だとしても、俺の心の中では誰にも代えられない特別な存在だ」と。

私はその言葉を信じていた。

私は彼の心の中だけで、唯一無二の特別な存在になれるのだと、信じ込んでいたのだ。

そしてあの日、彼が莉愛に出会った。

かつてずっと私に向けられていたはずの彼の優しい眼差しは、もう二度と彼女から離れることはなくなった。

私は目を閉じ、心臓をえぐるような痛みを必死で飲み込んだ。

「他に用事がないなら、もう寝るね」

彼が何か言い返す前に、私はブツリと電話を切った。

部屋の電気を消そうとした時、ふと顔を上げると、莉愛がホットミルクの入ったマグカップを手に持ち、ドアの前に立っていた。

「お姉ちゃん、入ってもいい?」

私が頷くと、彼女はベッドまでやって来て、ミルクを私に手渡した。

「そうだ、明日は家族写真の撮影だからね、絶対にまた寝坊しちゃダメだよ」

そう言い残して、彼女はいたずらっぽくウインクをしてから部屋を出ていった。

本当は行かないと言いたかったが、その言葉は喉の奥で詰まって出なかった。

幼い頃、莉愛は体がひどく弱く、彼女の看病に専念するため、両親は私を田舎の祖母の家へ預けたのだ。

両親は忙しくて私に会いに来る暇もなかったが、毎年お正月や行事のたびに、必ず家族写真を送ってきてくれた。

写真の中で、莉愛は両親と兄に囲まれ、とびきり幸せそうな笑顔を浮かべている。

私はその写真を見るたびに、羨ましさで胸が張り裂けそうになり、いつか自分も家族と一緒に写真を撮りたいと強く願うようになった。

実家に戻ってからは、その夢を叶えるチャンスなどいくらでもあったはずだ。

だが不思議なことに、普段は生活習慣がきちんとしている私が、写真を撮る約束の日に限って、毎回必ず寝坊してしまうのだ。

しかも異常なほど深く眠り込んでしまい、両親がどれほど激しくドアを叩いても、全く目を覚ますことができなかった。

それが何度か続くうち、両親もついに愛想を尽かし、もう二度と私を待たなくなった。

今、私はもうこの家を出ると心に決めているが、最後に後悔は残したくなかった。

今度こそ寝坊しないように、私はアラームを3つもセットし、音量を最大にした。

いつもは10時頃に寝ているのに、今日は、9時前にはもう電気を消して目を閉じたのだ。

それでも、同じ失敗が再び繰り返されることになってしまった。

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