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第3話

Author: 魚ナゲット
「星奈は儀式感が好きだ。だからこそ、今日は彼女に素敵なプレゼントを選んで、正式に告白するつもりだ」

それは宴久の声だった。

彼は一群の御曹司たちに囲まれ、優雅な雰囲気を漂わせていた。その眼差しは、杏と一緒にいた時とは違って、慎重さと輝きを帯びていた。

「めでたいことだ!

じゃあ、あの安っぽい女はどうするんだ?何か買ってやるのか?」

宴久はその美しい眉をわずかに上げた。

「もう買ったよ。彼女に教えてもらった貧乏人用の通販アプリで、ものすごく安い偽物の星命名証書を、いくつか買ってやった。それで十分だろう」

その言葉に、周囲の男たちはみんな嘲笑した。

「確かに、そんなものにはお似合いだな!」

「宴久は本当に愛情深いな。星奈の一言で、あんな安っぽい女と一緒にいるなんて、すごいよ!俺だったら絶対に耐えられない」

「そういえば、宴久が二年間も我慢してたのだ。もしかして、あの安っぽい女、何か特別なところでもあったのか?」

杏は足を止め、静かに宴久の答えを待った。

しばらくして、彼の薄い唇が開いた。

「確かに悪くないな。体が柔らかいし、テクニックもいい。しかも簡単に抱ける」

周囲の爆笑の中で、杏の顔は完全に血の気を失った。

彼女はよろけながら、スタッフに案内されて自分の個室へと向かった。

彼女の心が落ち着くまで、オークションはすでにかなり進行していた。

今、オークションで出品されているのは一つのダイヤモンドのネックレスだった。

杏は手を挙げ、すぐに入札を始めた。すると、画面に宴久が入札したことが表示された。

彼女は唇をかみしめ、さらに入札を続けた。

宴久は一歩も引かず、入札額を次々と上げていった。

その時、杏は気づいた。これは星の形をしたデザインのネックレスだ。

星奈の名前に「星」という字が含まれているから、彼がどうしても欲しがっている。

杏は一瞬そのネックレスを諦めたが、それでも入札を続けた。彼女は、宴久が星奈のためにどこまでしてくれるのか知りたかった。

そのネックレスは、最初の起始価格が二億だったが、最終的には二十億にまで上がった。

その時、会場の天井の明かりが突然明るくなった。それを点けたのは宴久だ。

天井の明かりを点けるということは、どんな金額で落札されても、彼は必ずその値段に合わせて入札するという意味だ。

彼が本当に誰かを愛する時、何事も厭わずに全てを捧げることができるのだ。

それらを合わせても二千円にもならない偽の星命名証書を思い出すと、杏は思わず自嘲的に笑った。

彼女は自分が本当に好きな別のネックレスを選び、それを落札した。

宴久は彼女を愛していないなら、彼女は自分で自分を愛することに決めた。

最初は今夜、宴久が戻ってこないと思っていた。

しかし、星奈のインスタの最新投稿を見て、状況が少し変わったことに気づいた。

【どんなに高価なダイヤモンドのネックレスも、あなたが私のために歌ってくれた一曲には敵わない】

その動画には、宴久が彼女に贈った星形のネックレスを無造作に身につけた星奈が、ギターを弾きながら歌う男に愛情を込めて視線を注いでいる様子が映っていた。

彼女は新しい恋人ができたようだが、それは宴久ではなかった。

少しして、宴久は酩酊しながら帰宅した。

「愛してる、すごく愛してるんだ......」

彼は杏を強く抱きしめ、頭を彼女の首元に埋め、熱い息を吐き出していた。

「君なしでは生きていけない。お願い、離れないでくれ」

一緒にいたこれまでの間、彼はこんな愛情深い言葉を口にしたことはなかった。

杏は少し驚き、そして宴久の震えた声を聞こえた。

「俺は心を君に捧げたのに!どうして他の男が手を振れば、君は行ってしまうんだ?」

杏は目を閉じ、苦々しく笑った。

この愛情深さは、星奈に向けられたものだった。

彼女はとっくに気づくべきだった。

杏は冷たく彼を押しのけた。「酔ってるんだ」

宴久はぼんやりと目を開け、杏だと気づくと、微笑んだ。

「杏、残業で疲れた。すごく辛い。今夜、ちゃんと俺に付き合ってくれ」

杏はすぐに宴久にベッドに押し倒された。彼の目には愛情の欠片もなく、ただ感情を発散しているだけだった。その瞬間、杏の胸は鈍い痛みに包まれた。

深く愛していた人は、実はずっと自分を軽んじていたのだ。

杏は全身の力を振り絞って宴久を押しのけたが、元々かなり酔っていた彼は、そのまま眠りに落ちていった。

彼は酔っているが、それでも横顔が素敵だ。しかし、杏の心の中には過去の優しさや愛情がもうどこにも残っていなかった。

もし全てをやり直せるのなら、彼女は宴久を受け入れることはなかったし、自分の心も決して許さなかっただろう。

時間は戻せないが、今からでも自分を守ることはできる。

これからは、自分の心を完全に取り戻すつもりだ。
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