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第2話

Author: セイ
皇帝の手にある朱筆がピタリと止まり、墨汁が上奏文にじわじわと滲んでいった。

彼は殿中に跪く女を見下ろし、眉をひそめた。

「清瑟よ、お前は長離が流蛍を側妃にするという話を聞いたのか?安心せい、朕の勅命はまだ……」

「陛下」

清瑟は彼の言葉を遮り、その口元には痛ましい笑みが浮かんでいた。

「私は、もう皇太子殿下には嫁ぎとうございません」

彼女は深く頭を下げ、冷たい床に額を擦り付けた。

「私は和親の降嫁を志願し、両国の安寧と引き換えとうございます!」

皇帝は長い沈黙の後、ついに深くため息をついた。

「本気で決めたのだな?北狄への道のりは遠くて険しい。一度行けば、二度と都に戻る日は来ないのだぞ」

「覚悟の上でございます。陛下、どうかお聞き届けください」

皇帝は再びため息をつき、ついに筆を取って詔書に印章を押した。

「……そこまで言うなら、朕が最高の嫁入り道具を整えてやろう。一ヶ月後、盛大な和親の儀を執り行う」

東宮へ戻った時、清瑟はすでに目の前が真っ暗になるほどの痛みに襲われていた。

彼女が横になった途端、殿舎の扉が押し開かれた。

「清瑟?目を覚ましたか?」

長離の声が殿内に響いた。清瑟が振り向くと、揺らめく蝋燭の灯りの中に彼が立っていた。玄色の錦衣にはまだ夜露が少し残っている。

彼女が胸元を押さえているのを見て、彼の顔色が微かに変わった。そして弁解するように言った。

「昨夜、東宮に刺客が潜り込んだのだ。余の護衛が至らず、お前に傷を負わせてしまった」

清瑟は思わず吹き出しそうになった。

刺客?よくもまあ、そんな嘘を。

彼は手を伸ばして彼女の傷に触れようとしたが、痛ませるのを恐れるように手を引っ込めた。

「まだ痛むか?」

清瑟は静かに首を振った。

「痛くありません。流刑への道中、殿下の代わりに受けたあの剣傷に比べれば」

長離の手が宙で止まった。

あの年、荒れ果てた山野で、彼女は彼を庇って山賊の刃を受け、あわや命を落としかけたのだ。

沈黙が殿内に広がった。しばらくして、彼は低い声で言った。

「清瑟、余はすでに勅命を乞うた。一ヶ月後、お前を正妃として迎える」

一呼吸置き、さらに付け加えた。

「同時に、流蛍を側妃として迎える」

清瑟は目を伏せた。

一ヶ月後には、自分はもう北狄へ向かう途上にいるというのに。

「彼女を側妃に娶るのも、復讐のためですか?」

彼女は静かに尋ねた。

長離の表情が微かに強張り、一瞬、時が止まったかのようだったが、やがて彼女の手を握った。

「当然だ。そうしてこそ、彼女を常に手元に縛り付け、じわじわといたぶることができる」

清瑟は顔を上げ、目の前の端正な顔立ちを見つめた。

なんて滑稽なのだろう。彼がこれほど真剣に芝居を打っているというのに、彼女にはもう、それに付き合う気力すら残っていなかった。

「殿下のお好きなようになさってください」

彼女の口調は平坦だった。

この言葉に、長離はハッとして立ち尽くした。

泣いて騒ぐか、それとも問い詰められるかと思っていたのに、これほどまでに淡白な反応は予想外だった。

得体の知れない苛立ちが胸に込み上げ、彼は手を伸ばして彼女をその腕に抱き寄せた。

「清瑟、あの流刑の道を、共に歩んでくれたのはお前だけだ」

彼の声は少し掠れていた。

「余は言ったはずだ。この生において、決してお前を裏切らぬと」

清瑟は彼に抱かれるままにしていた。

いつからだろうか、この胸に抱かれることだけが、彼女のすべての切なる願いだったのは。

「では、私を愛していますか?」

彼女は小声で尋ねた。

長離の体は明らかにこわばり、長い沈黙の後、低く呟いた。

「……当然、愛しているとも」

彼は嘘をついている。

清瑟は彼のことを知り尽くしていた。嘘をつく時、彼は決まって無意識に袖口を指でこする。ちょうど今、彼がしているように。

実際のところ、清瑟にはずっと理解できなかった。なぜなのか……

彼は皇太子で、清瑟は丞相の正室の娘であり、流蛍は国公(こっこう/皇族に次ぐ最高位の貴族)の令嬢であった。三人は幼い頃から共に育ったというのに、幼い頃からずっと、長離の目には流蛍しか映っていなかった。

少年時代、三人で宮中の庭園で遊ぶ時も、長離の視線は常に流蛍を追っていた。宮中の宴席では、流蛍の盃が空になったことに誰よりも早く気づくのは彼だった。先帝が彼に流蛍を下賜した日、彼は狂喜して一晩中酒を飲み明かした。

彼がこれほどまでに流蛍を愛していること、清瑟はとうに受け入れていた。

だが、流蛍はどうだったか?

彼が廃嫡され流罪となった時、彼女は真っ先に婚約破棄の文を送りつけ、きれいさっぱり縁を切ると言い放ったのだ。

あの日、長離はその手紙を握りしめ、雨の中で一晩中立ち尽くした。腸がちぎれるほどの悲しみに目を血走らせていたというのに、流蛍は屋敷の門さえ開けようとはしなかった。

傘を差し掛けて彼を見つけ出したのは清瑟であり、看病し続けたのも彼女であり、果てしない流刑の道を共に歩んだのも彼女だった。

「俺を置いていかないでくれ」と彼が咽び泣いた時、「私はここにいる、ずっとここにいるわ」と耳元で何度も囁き続けたのも清瑟だった。

それでも、彼の心が温まることはなかったのだ。

幸いなことに、彼女はもうはっきりと目を覚ました。これ以上、冷たくなった心を温めようとあがくのはやめる。

清瑟は微かに微笑んだ。

その笑い声に後ろめたさを感じたのか、長離は胸が締め付けられるのを感じ、口を開きかけたが、その時、殿舎の外から慌ただしい足音が聞こえてきた。

「殿下!慕殿がひどく胸の痛みを訴えておられます。どうかすぐにお越しを!」

長離はすぐに清瑟から手を離し、冷ややかな美貌に焦りの色を浮かべた。

「清瑟、少し様子を見てくる。あいつが死んでしまっては、後でどうやって復讐すればいいのだ?」

彼が足早に去っていく背中は、夜の闇に吸い込まれるように消えていった。

清瑟は揺れる殿舎の扉を見つめ、静かに笑った。

そして、彼がこの日を境に戻ってくることは二度となかった。

それからの日々、東宮のあちこちで、皇太子が流蛍を寵愛しているという美談がまことしやかに囁かれた。

彼は「星を見るのが好き」という流蛍の言葉一つで星を観るための高楼を再建し、彼女を笑顔にするためだけに、遠く江南から新鮮なライチを取り寄せた。さらには自らの手で彼女の眉を引き、髪を梳くなど、仲睦まじい夫婦がするようなことをすべてやってのけた。

「お嬢様!あの下賤の者たちめ、裏で陰口を叩きおって。『あの皇太子妃の座は、遅かれ早かれ慕流蛍様のものになる』などと!私めが奴らの口を引き裂いてまいります!」

侍女の青吟(せいぎん)は悔しさに目を赤くしていた。

「やめなさい」

清瑟は静かに花嫁衣裳に刺繍を施していた。

それは、和親のために用意しているものだ。

「言わせておけばいいのよ」

もとより彼女は、長離の皇太子妃になるつもりなどないのだから。

ある日、彼女が中庭で花の枝を整えていると、ふと侍女たちが噂話をしているのが耳に入った。

「聞いた?慕殿が身籠られたそうよ!殿下は大層お喜びになられて、宮中の者全員に三ヶ月分の給金を下賜されたわ!」

ポキッという音がして、清瑟の手が震え、花の枝が手の中で折れた。

流蛍が身籠ったというのか!?

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