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第8話

作者: ユキ
その鋭い刃先を見て、雪乃は息を呑み、瞳が震えた。

「気をつけて!」

声を聞いて湊が顔を上げた時、男はすでに彼の目の前まで迫っており、刃先は莉子の胸元を真っ直ぐに狙っていた。

彼は一切の躊躇なく、莉子を安全な場所へと力いっぱい突き飛ばし、自らの体でその致命的な一撃を受け止めた。

迸る鮮血がシャツを赤く染め、ポタポタと地面に落ちた。

湊の体は激しく震えたが、それでも歯を食いしばり、男を地面に組み伏せた。

ナイフを奪い取った後、彼は雪乃の方を振り返り、一言だけ告げた。

「莉子を……連れて、ここから……離れろ!」

その瞬間、雪乃は全身の血が凍りつくような感覚に陥った。

彼女は彼をじっと見つめ、喉から言葉を絞り出した。

「あなたは?」

湊は首を振り、消え入りそうな声で言った。

「奴が……狙っているのは……莉子だ。早く……彼女を連れて逃げろ。莉子に……何かあってはダメだ。俺は……どうでもいい」

血まみれになりながらも、最後の力を振り絞って莉子を救おうとする彼の姿を目の当たりにし、雪乃の頭の中で轟音が鳴り響き、言葉を失うほどの衝撃を受けた。

雪乃はもう一言も発することができず、無理やり心を奮い立たせ、恐怖で気を失いかけている莉子を引きずってその場から逃げ出した。

雪乃が莉子を連れて安全な場所まで逃げ延びた頃、救急車とパトカーが到着した。

彼女は、血まみれの湊が救急隊員たちによって運び出されるのを目の当たりにし、一緒に救急車に乗り込んだ。

出血多量で彼の意識はすでに混濁していたが、それでもうわ言のように呟いていた。

「怖がるな……莉子、俺が……守ってやる……」

この時になって、雪乃はついに悟った。湊が誰かを愛する時、どんな姿になるのかを。

冷たい殻を無意識のうちに脱ぎ捨て、あらゆる危険から莉子を庇い、生死の境を彷徨う時でさえ彼女の無事を案じるのだ。

そして、彼のその優しい愛情も気遣いも、雪乃には何一つ向けられることはなかったのだ。

一晩に及ぶ緊急手術の末、湊は一命を取り留めた。

莉子は手術室の外で泣き崩れ、病室に飛び込むなり湊に何度も謝った。

「先輩、どうして私にここまでしてくれるんですか?先輩にとって、私は命を懸けるほど大事な存在なんですか?」

湊の低くかすれた声が聞こえた。

「ああ、俺にとって、お前はとても大切な存在だ」

それを聞き、雪乃は血走った目を閉じ、病室へ入るのを諦めた。

感覚がなくなるほど強く握りしめていた手を緩め、時間を確認した。

飛行機の出発まで、あと数時間しかなかった。

彼女はそれ以上留まることなく、一人で家に帰り、全身の汚れを洗い流した。

その後、パソコンとカメラ以外の自分の持ち物をすべて捨て、その二つだけをスーツケースに詰め込んだ。

午後一時、彼女はタクシーを拾い、空港へ急いだ。

飛行機に搭乗した直後、突然湊からメッセージが届いた。

【雪乃、病院にいないようだが、蒼海市に帰ったのか?俺は怪我をして一緒に帰ってやれなくなった。また今度、一緒におじさんたちに会いに行こう】

雪乃はしばらく沈黙した後、ついに自分が去るという真実を彼に告げた。

【その必要はないわ、湊。今回私が帰ったのは結婚するためなの。新郎はあなたじゃないわ】

【私たち、別れましょう。あなたと莉子ちゃんこそお似合いのカップルよ。二人で末長く幸せにね】

そう打ち終えると、相手の反応を待つこともなく、彼女は彼の連絡先をすべてブロックした。

そして、スマートフォンの電源を切った。

今度こそ、自分という当て馬の脇役は、主人公たちの世界から完全に退場するのだ!

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