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第123話

Author: 藤崎 美咲
悠真が出ていったあと、遥生は星乃にちらりと目を向けて声をかけた。「大丈夫か?」

ここに来る前、彼は部屋の中から言い争う声を聞いていた。

相手が悠真だろうと察しはついていた。

星乃は首を振った。「大丈夫」

「それで、あいつが何しに来たんだ?」と遥生は尋ねた。

星乃は少し考えてから答えた。「ちょっとした用事よ」

いずれ遥生との協力関係は悠真の耳にも入る。無理に隠す必要はない。ただ、帰国したばかりでまだ立場が不安定な遥生に、自分と悠真の問題まで背負わせたくはなかった。

それに、悠真にとって子どものことなんて本当に「些細な事」にすぎない。

流産したくらいで、わざわざここまで来て問い詰めるほどのことじゃない。

いつかまた子どもができれば、希のことなんてすぐに忘れてしまうだろう。

彼女がそれ以上話すつもりがないと悟ると、遥生も深く追及はしなかった。

その後の数日、星乃は新製品の開発に全力を注いだ。

作業台の上には、実験用のロボットアームと、日常でよく使う数十種類の物を並べてある。

処理したアルゴリズムとコードをロボットアームに入力し、指示した物を最短時間で正確に取れるかどうかをテストする。

十数回の試験を重ねた結果、多くの物はきちんと認識できた。

けれど、非常に似ているいくつかの物品については、まだ判別できなかった。

たとえば丸いガラス製のコップと、同じく丸いガラス製の花瓶。

ロボットはどっちが飲み水用で、どっちが花を挿すためのものかを判断できない。

だから、人が水を欲しがったとき、差し出すべきなのがどちらなのか決められないのだ。

用途を正確に見分けさせるには、もっと複雑な命令が必要になる。

星乃は行き詰まりを感じ、疲れた足取りで実験室を出た。

オフィスに戻ると、人だかりができていて、その中心には千佳がいた。

「すごい、千佳!これ、彼氏さんからのプレゼント?めちゃくちゃロマンチックじゃん」

「このブレスレット、最近出たばかりの新作でしょ?結構高いはず。去年のバレンタインの贈り物もロマンチックだったって聞いたよ」

「……」

褒め言葉に囲まれ、千佳は得意げな顔をしていた。

彼女は手首を揺らして見せびらかす。「値段なんて大したことじゃないの。大事なのは、このブレスレットを買うのに、彼が二時間も並んでくれたってこと。

でもさ、二時
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