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第156話

Author: 藤崎 美咲
彼女は、もう二度と戻る気がないのだろうか。悠真はそう思った。

「これだけじゃだめだ。デザイナーには、もっと正確なサイズが必要なんだ。もし合わなかったら、修正に時間がかかる。けど、もうそんな余裕はない」悠真の声は冷たく響いた。

星乃は困り果てた。サイズなんて特に問題ないと思っていたが、悠真にそう言われてしまえば、反論する気にもなれなかった。

二人は打ち合わせの時間を決めると、電話を切った。

彼女はもう、ひどく眠たかった。髪を半分ほど乾かしたところで、ベッドに倒れ込むようにして眠りに落ちた。

翌朝。体がまるで鉛のように重く、頭は鈍く痛み、胃の奥がぐるぐるとかき回されるように気持ち悪い。

それでもなんとか起き上がり、身支度を整えて外に出た。

ところが、エレベーターの前まで来たところで、視界が一瞬真っ暗になり、次の瞬間には全身から力が抜け落ちる。

意識が戻ったとき、鼻をつく消毒液の匂いがした。

目を開けると、そこは病院のベッドの上だった。

「目、覚めた?」ぼんやりした視界の中に、遥生の姿があった。彼は彼女のそばに腰を下ろし、心配そうに見つめていた。「今の気分はどう?」

「……私、どうしたの?」星乃はこめかみを押さえながら、痛みをこらえて尋ねる。

家を出たところまでは覚えている。けれど、そのあとは記憶が途切れていた。

遥生は彼女の青ざめた顔を見て、唇を引き結んだまま何も言わなかった。

窓の外はもう真っ暗だった。

「今、何時?」胸がざわめき、慌ててスマホを探す。もう夕方を過ぎていた。

彼女は布団をめくって起き上がろうとしたが、遥生が素早く手を伸ばして押し止める。「どこへ行く気?」

「まだプランが確定してないの。実験室に戻らなきゃ」星乃は答えた。

遥生は手を放さず、きっぱりと言った。「今は何も考えず、しっかり休むこと。医者も、もう無理はできないって言ってた」

「でも、時間がないのよ」

発表会まであと六日。時間はもうギリギリだ。彼女には、一日たりとも無駄にできない。

「その件は僕が対処する」遥生は続けた。「宣伝部に連絡して、発表を延期するように頼むよ」

星乃は思わず顔を上げた。「……なんで?遥生、私なら大丈夫って、あなたも分かってるでしょ?昨日だって、そう約束したじゃない」

これまでにも、突発的なトラブルはいくらでもあった。

それでも
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