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第350話

Author: 藤崎 美咲
星乃は、外に見張りがいるのかどうか分からず、そっと顔を出して外の様子をうかがった。

倉庫の前には小さな庭があり、そこに車が一台停まっている。

まわりはうっそうとした森で、倉庫の前だけが山の上へと続く細い道になっていた。

周囲に誰もいないのを確かめ、星乃は結衣を連れて出ようとした。

だが振り返った瞬間、倉庫の中の光景を見て、思わず動きを止めた。

倉庫の扉が、いつの間にか開いていた。

涼真が車椅子に座り、面白そうにこちらを見ている。その周りには二、三人の男が立ち、結衣はそのうちの一人に口を塞がれていた。

別の男が近づき、気絶していた二人に水をぶっかける。

「この野郎、よくも不意打ちなんかしやがって!」男たちは水で目を覚ますなり、怒鳴りながら星乃に向かって突っ込んできた。

涼真が手を上げて制した。

星乃は唇を噛みしめ、観念したようにゆっくりと地面へ降りた。

「星乃さん、あんた本当に頭が切れるね。なんでもできるじゃないか」涼真が冷たく笑う。

星乃は無言のままだ。「……」

――まあ、監禁されたことなんて何度もあったし、そのたびに少しずつ覚えただけ。

涼真は彼女の背後に目をやり、薄く笑った。「ここにカメラを仕掛けておいて正解だった。なかったら、危うく逃げられるところだったよ」

その言葉のあと、男の一人が前に出て、星乃の両手を乱暴に縛り直した。

力任せに腕を引っ張り、彼女を涼真の前へ突き出す。

「その指輪、外せ」

涼真の指示に、男が即座に動く。

荒っぽく手を掴まれ、強引に指輪を引き抜かれた瞬間、星乃の指の関節が砕けそうな痛みが走った。

指輪が涼真の手に渡る。

彼はそれをつまんで軽く押し、刃が飛び出すのを見て、興味深そうに眉を上げた。「へえ、面白いな。でも……もう使う機会はないだろう」

星乃が意味を理解する前に、涼真はその指輪を放り投げた。

律人が贈ってくれたダイヤの指輪が、闇の中に消えていくのを星乃は呆然と見つめる。

歯を食いしばった。

「連れて行け」

涼真の一言で、星乃と結衣は車へ押し込まれた。

頭には再び黒い布がかぶせられる。

エンジンがかかり、車が動き出す。右のまぶたが激しくぴくつき、理由の分からない不安が胸の奥をざわつかせた。

涼真が何を企んでいるのか分からない。今は下手に動くべきじゃないと思って、星乃は息を殺した
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Comments (1)
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ルート
涼真はこの事件が終わった後に自分がどうなるか本当に分かってやってるのかなぁ 律人と悠真がいがみ合うと考えてたけど、二人が手を組んで自分を徹底的に闇に葬るとかは想像出来ないのかな これから始まる悠真と結衣の悲劇のヒロインショーは興味無いから、早く律人の登場求む 悠真の星乃と結衣の間で揺れる感情とか今更もう必要ない クソ男が悲劇のヒーローぶる展開もいらない
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