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第4話

Author: 神原清
明美は家を綺麗に片付けた。

荷物をまとめて、明承寺へ向かった。

新幹線が轟音とともに高速で駆け抜けていく。

彼女は高校時代を思い出した。普通車で四時間、さらに乗り換えに二時間かかった。あの時は期待に胸を膨らませていた。

明承寺は霊験あらたかだと聞いた。

彼女はあのブレスレットを買い、毎日颯真のためにお祈りしていた。

ついでに共白髪の無謀な願いもした。その絵馬は明承寺の大木に掲げた。

彼女は颯真との関係を断つつもりなら、それを外すべきだと思った。

本当は残り三日の年休を使って、ついでに隠れるつもりだった。

しかし、暴雨のため、山の上で一晩過ごさなければならなかった。

そこで、明美は最も会いたくなかった人と出くわした。颯真と優愛だ。

颯真は仏様の前に跪き、その姿勢は九年前の明美と変わらず、敬虔だ。

当時、明美は颯真の勇気に惹かれたから、一人で他の町へ行き、四十九日間も滞在した。

ただ彼が無事に帰ることを祈るためだった。

生まれて初めて、彼女はこんなにも迷信深くなった。

だが今、彼が跪きながらお祈りしたのは、優愛のためだ。

明美はその気持ちを言葉にできなかった。

胸が重苦しく、息が通らない。

彼女は背を向けて去ろうとしたが、優愛がついてきた。

空は暗く、庭には苔が生い茂っていた。

優愛は冷たく言った。

「あなたは諦めて離れると思ったけど、ここまで追ってきたのね。結局、何がしたいの?」

明美はうんざりして答えた。

「私がどこに行こうと、あなたに関係ある?」

予想外に優愛は恥じることなく言った。

「まだ分からないの?あなたたちの結婚は名ばかり。叔父さんが好きなのは私だけ。

あなたは叔父さんにとってどうでもいい存在なのよ。早く諦めて、私たちの愛を邪魔しないで」

薄暗い空の下で、優愛は高慢だ。

このとき、明美はただ、優愛がわがままな子供のようで、歪でありながらも哀れに思えた。

明美は微笑み、同情を込めて言った。

「そんなに颯真の愛がほしいの?なんだか可哀想だわ」

言い終えると、明美は優愛を避け、そのまま部屋に戻った。

夜半、雨はますます激しく降った。

明美はノックの音を聞いた。

颯真だ。彼の声は重かった。

「明美、優愛がいなくなった」

午後にまだ優愛を見かけたばかりなのに……

旅人に尋ねると、山の麓に行った可能性があるという。

明美は当時あまり深く考えず、彼と一緒に探すことにした。

真っ暗な道を下り、山の中腹までたどり着いた。

夜の風は冷たく、周囲は揺れる枝葉ばかりだ。

颯真のスマホがかすかな光を放っている。

彼は突然立ち止まった。

「どうしたの?優愛から連絡でもあったの?」

優愛はまだ二十代前半で、少しわがままな面もあった。

だが、明美は自分もまだ二十五歳だということを忘れていた。

颯真は沈黙した。周囲の気温はますます低くなった。

ついに彼は問い詰めた。

「お前、知ってるだろ?彼女はうつ病を抱えていることを。なぜ俺たちの結婚の話で彼女を刺激したんだ?」

彼は明るく光るスマホの画面を見せた。そこには優愛が送ったメッセージがあった。

【わかってる。明美さんは私が嫌いだって。あなたたちは結婚してる。私はべったり叔父さんにくっついてはいけない。

自分が嫌われてるのもわかってる。先に下山して、邪魔しないね。叔父さん、探さなくていいよ】

スマホの弱い光で、颯真の額の血管が浮き上がり、彼はほとんど歯ぎしりするように言った。

「俺を追いかけてここまで来たのか。そんなに俺を信用していないのか?」

雨で路面は滑りやすく、彼女は立っていられず、無意識に弁解した。

「私……」

だが颯真は嫌悪の表情を浮かべ、懐中電灯を彼女の顔にまっすぐ向けて照らした。

「お前の偽善的な態度、本当に気持ち悪い」

明美は足を滑らせて体のバランスを失い、倒れてしまった。そばの枝や石が彼女の足首を傷つけた。

彼女は必死に立ち上がろうとしたが、襲い来る痛みで動けなかった。冷たい雨が葉から滴り落ちて、彼女の体を濡らした。

暗闇の中、影のように揺れる木々はまるで幽霊のようだ。

明美は昔から暗闇を恐れていたため、本能的に恐怖を感じた。

彼女は手を伸ばし、声を震わせて颯真に訴えた。

「颯真、足を怪我したの。ちょっと助けて」

颯真の懐中電灯の光が彼女に当たり、今の狼狽ぶりをすべて照らし出した。

彼は怒りを抑えた声で言った。

「明美、懲りないなら、ここで反省していろ」

そう言うと、彼は背を向けて去った。

明美は寒さと恐怖で震え、激痛が襲いかかってきた。手は傷だらけで、服もぼろぼろだ。

周囲が徐々に闇に沈んでいく中、彼女の心に恐怖が湧き上がった。

「颯真!私を一人にしないで!」

闇の夜、明美は無力で孤独だ。細かい冷たい汗が首筋を這い、寒さが骨まで突き刺さった。

遠くで颯真は冷たく言い放った。

「お前はいつも懲りないさ。なら、ここでしっかり反省しろ。一時間後、助けに来るさ」

言い終えると、彼は背を向けて去った。

彼女は体を制御できず、何度も滑り続けた。枝が体に刺さり、痛みで声も出せなかった。

周囲には真っ暗な闇しかなかった。

彼女は助けを呼んでも、誰も応答しない。

スマホを開くと、山中の電波は弱い。最悪なのは、スマホの電池が切れて電源が落ちてしまったことだ。

山の冷気が少しずつ体温を奪っていった。

滑り落ちないように、彼女はそばの大木にしがみついた。

耳には風と雨の音が混ざり、未知の生物の叫びのように聞こえた。

明美は恐怖で全身を震わせ、体を丸めた。

しかし眠るわけにはいかなかった。

以前、会社の訓練で緊急時の機体離脱とサバイバルに関する知識を学んだことがある。

眠ってしまえば、二度と目覚められないかもしれない。

一時間がどれほど長いかもわからなかった。

今、彼女にはそれがまるで一生のように長く感じられた。

夜明けがかすかに見え始めるころ、明美は体が凍りつき、周囲には乾いた血の跡が広がっていた。

最初は寒かったが、今は全身が熱くなっていた。

熱で頭がふらふらする。そして、喉が渇き、水が欲しかった。

彼女は自力で起き上がろうとしたが、手が思うように動かず、動けなかった。

山は人里離れており、一晩の暴雨の後では誰にも発見されることはなかった。

絶望の中、颯真が現れた。隣には無傷の優愛がいた。

見るまでもなく、明美は自分の惨めな姿を察し、優愛の目に浮かぶ得意げな様子も見て取った。

優愛はまるでこう言っているかのようだ。

「ほらね、あなたの一番愛する男は私をこんなにも気にかけるのよ。あなたは負けた、完膚なきまでにね」

颯真は見下ろすように彼女を見つめた。

「反省したか」
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