เข้าสู่ระบบフォートデールで過ごした数日間、4人はそれぞれ楽しい時間を満喫していた。ある時はプライベートビーチでダイビングや日光浴を楽しみ、またある時はオアシス公園でカヤックに乗り、手付かずの自然が残る景色を堪能した。その後も美術館を巡ったり、オーラス大通り沿いのギャラリーを訪れたり、個性的なテーマレストランを食べ歩いたりと、充実した日々を過ごした。何日も遊び続けたあと、ようやく心身ともにゆっくり休める時間が訪れた。朝、由奈と祐一が部屋を出ると、オーブンから漂ってくる香ばしい甘い香りに気づき、キッチンへ向かった。大理石のテーブルに調理器具や材料などが並べられていた。心愛は手袋をはめ、オーブンから焼きたての黄金色のエッグタルトを取り出しているところだった。「すごくいい匂いですね!」由奈は嬉しそうにテーブルへ駆け寄った。「古澤さんはエッグタルトまで作れるんですか?」「ええ、まあ。暇だったから、ネットで作り方を調べて、パイ生地のエッグタルトを作ってみたんです。でも……失敗してないかな?あまり上手くできてない気がして」心愛は少しうつむきながら、不安そうにため息をついた。すると由奈はすぐに彼女のそばへ行き、励ますように声をかけた。「そんなことないですよ!これだけできているんだから、十分すごいです。早速、味見してもいいですか?」「もちろんです!」心愛がそう返事すると、由奈は皿にエッグタルトを一つ取り分け、一口食べる。「美味しい!甘さもちょうどいいです!」由奈は満足そうに頷いた。その様子を少し離れたところで見ていた祐一は、腕を組みながら小さく笑った。「そういえば、兄は?」そこでようやく由奈は、智宏の姿がないことに気づいた。心愛の動きが止まる。「中道さんなら……たぶん、まだ寝てるんじゃないかな」「それもそうですね。ここ数日、私たちの面倒を見てくれてたし、かなり疲れてるんじゃないかな」「それなら、一番疲れているのは、俺じゃないか?」祐一はテーブルにもたれかかり、不満そうなふりをして言った。たとえ相手が義理の兄でも、そこは負けるつもりはないらしい。由奈は彼の隣へ歩み寄ると、苦笑しながら答えた。「はいはい、それもそうね。祐一が一番頑張ったんだから、ありがとう」「どういたしまして」心愛は思わず固まってしまった。――絶対に自
智宏は本を読みながら、淡々とした口調でそう言った。まるで「これを使う?」と日用品でも貸すかのような自然さだった。心愛は、驚いたように彼を見つめた。本当に好きな女性相手に、これほど冷静でいられるのだろうかと、考えずにはいられなかった。「すみません。少し先走ってしまいましたね」智宏は視線を落とし、本を閉じた。指先で表紙をなぞりながら、静かに続ける。「先に聞くべきでした。あなたの返事を」心愛は言葉に詰まった。落ち着かない視線が行き場を失い、膝の上をさまよう。「……今、返事を出さないといけないんですか?」「……僕は軽い気持ちで女性に近づくつもりはありません」智宏はまっすぐ彼女を見た。「あなたの返事次第で、肩を貸すことはできないかもしれません」心愛は目を見開いた。しばらく呆然と彼を見つめたあと、とうとう堪えきれずに吹き出し、慌てて顔を背ける。「池上さんが、あなたは今まで彼女がいなかったって言ってたけど……本当だったんですね」もし智宏が女性慣れした人間なら、こんなにも不器用なはずがない。智宏は薄い唇をわずかに引き結び、低く答えた。「……はい。彼女はいませんでした」心愛は髪を後ろへ払ってから、そっと彼の方へ顔を向けた。「じゃあ……昨日言ってたこと、本気なんですね?」探るような声音。指先は無意識に髪の先を弄んでいた。智宏は顔を上げる。静かな瞳が、美しい彼女の顔をまっすぐ捉えた。そこに迷いも、誤魔化しもない。「はい。恋愛に関して、冗談を言うつもりはありません」「そうですか……実は、私も――」その瞬間、飛行機が大きく揺れた。続けるはずだった言葉は途切れ、突然の浮遊感に心愛の顔から血の気が引く。恐怖に駆られた彼女は、反射的に智宏の手を掴んだ。智宏は彼女の震えに気づくと、ごく自然な動作でその手を握り返す。「大丈夫です、落ち着いてください」機内アナウンスが流れた。現在、強い気流に入り、このあともしばらく揺れが続くという。心愛は気づいていなかった。自分が今、智宏の手を強く握りしめていることに。ただ、一刻も早くこの揺れが収まってほしいと、それだけを願っていた。すると突然、智宏の手が彼女の後頭部へ回り、そっと引き寄せる。「……え?」心愛は驚いて固まった。「僕を見てください」彼の顔が近い。言葉を交わす
友達申請を無視しようとした瞬間、律がすかさず彼の手を押さえる。「いいから追加しろって!」「断る」「これはお前のためなんだぞ!」智宏は眉をひそめた。「どういう意味だ?」律はすぐに冗談めいた表情を引っ込め、真剣な顔になる。「古澤さんの気持ちを確かめるためなんだよ!もし彼女がお前を追いかけてる女の子の存在を知って、嫉妬したら?それってつまり、あの子もお前のことが好きってことだろ?」「必要ない」智宏は彼の手を振り払った。「他人を利用して古澤さんの気持ちを探るのは、彼女に対して失礼だ。それに、相手の女性にも失礼だろ」智宏は友達追加申請をそのまま無視し、律を見据えた。「これ以上くだらないことをしたら、ブロックするからな」そう言い残すと、ゴルフバッグを手にしてそのままコートを後にした。「おい!待てよ!何をムキになってるんだ?」律はさっさと去っていく智宏の背中を見つめ、腰に手を当てながら額を押さえた。呆れて言葉すら出ない。智宏の性格は昔から分かっているが――いくらなんでも真面目すぎる。こんな調子で、いつになったら彼女ができるんだ?2日後。由奈は休みを取り、久しぶりに心愛のライブ配信を応援しに行こうと思い立った。だが、配信ページを開いてみると、心愛はもう何日も配信していないことに気づく。祐一は片手で頭を支えながら、画面越しに麗子から会社の細々とした報告を聞いていた。コーヒーを一口飲み、何気なく隣で自分と過ごしている由奈へ視線を向ける。その瞬間になってもなお、少し実感が湧かなかった。こんな穏やかで温かな日常こそ、彼がずっと望んできたものだった。「分かった。対応に困っているなら、俺が帰国してから引き継ぐ。今は焦らなくていい」祐一は再び画面へ視線を戻す。麗子は一瞬きょとんとしたものの、すぐに返事をした。「承知しました」やはり、妻と仲直りしただけで、心持ちがいい方へ変わるのだろう。祐一はノートパソコンを閉じると、腕を伸ばして隣に座る由奈へ身を寄せた。「何を見ているんだ?」「別に何も。え、祐一は仕事中じゃなかったの?」顔を上げた由奈は、すでにビデオ通話が終わっていることに気づく。「会議、もう終わった?」「うん」祐一は少しだけ座る位置をずらし、彼女のそばへ寄る。そして指先で由奈の髪先を軽く弄びながら言
「ぷっ……!」心愛は口に含んだばかりのジュースを、思わず盛大に吹き出した。慌ててティッシュを取り出して拭き取り、体を強張らせながら由奈のほうを振り向く。「いきなり何を言うんですか?冗談はやめてくださいよ」「冗談じゃないですよ。本気です」「……お兄さんの気持ちは聞かなくていいんですか?」由奈は目を伏せ、唇を軽く噛んで微笑むと、姿勢を正して言った。「兄は、女の子に自分から近づくことなんてほとんどないんです。でも昨日、古澤さんがなかなか帰ってこなかったから、探しに出たんでしょ?それはつまり、古澤さんのことが気になるってことなんです」心愛はグラスを握る指にわずかに力を込めた。何か言おうとして口を開いたものの、結局言葉が出てこない。由奈は続けた。「今のはあくまで私からの提案です。古澤さんが兄を好きじゃなかったら、私がいくら勧めても意味がないですし。ただ、兄が古澤さんのことを大切に思ってるって伝えたかっただけ。たとえ古澤さんが兄とうまくいかなかったとしても、私たちはずっと友達ですから!」由奈がそんなことを言ったのは、心愛に余計なプレッシャーを感じてほしくなかったからだ。心愛は俯いたまま、胸の奥に小さな波紋が幾重にも広がっていくのを感じていた。……「え?もう古澤さんに告白したのか?」律は智宏を信じられないという顔で見つめた。智宏は普段、何があっても焦らない慎重な男だ。タイミングをじっくり見極めてから動くタイプなのに、まさか昨夜のうちに想いを伝えるとは思わなかった。智宏はゴルフクラブを振り、地面に置かれたボールを正確に打ち抜く。ボールはまっすぐ旗の立つホールへ吸い込まれていった。「僕たちの会話、彼女に聞かれたからな」「え?いつ?」律は目を丸くする。「昨日、古澤さんはいなかっただろ?」「一度、戻ってきていた」律はすぐに察した。手にしていたクラブを地面につきながら、納得したように頷く。「なるほど。だから気持ちを打ち明けたのか。彼女が誤解しないようにって」そう言ったあと、興味津々といった様子で身を乗り出す。「それで?彼女はなんて返事した?」智宏は手にしたゴルフクラブを淡々と拭きながら答えた。「返事を急かすつもりはない」律は期待していた分だけ、盛大に肩を落とす。「はいはい、急がないんだな。だったら、俺が
翌朝、心愛は部屋を出ると、リビングの様子をそっと覗き込んだ。智宏はダイニングテーブルの前でコーヒーを淹れている。ついでに朝食まで用意してくれているようだ。昨夜、あんなことを言ったのは智宏だったのに、なぜか一晩中眠れなかったのは彼女のほうだった。心愛は深く息を吸い、意を決してリビングへ出ていく。智宏は視線を上げ、椅子を引いて座る彼女をさりげなく見ると、焼きたての卵トーストとサラダを彼女の前へ置いた。「僕が作れるのはこれくらいです。よかったらどうぞ。明日には家政婦さんが来ます」「え、本当に家政婦さんを雇ったんですか?」それもそうだ。智宏たちの身分を考えれば、家政婦を一人雇うくらいのお金は持っているのだろう。「家政婦を雇うこと自体は二の次です。ただ、この家に他の誰かがいるだけで、あなたも楽に過ごせると思って」心愛は思わず固まった。彼は、自分が懸念していることに気づいたのだ。智宏が勘違いしないよう、慌てて説明する。「誤解しないでください。中道さんが紳士なのは分かっていますし、警戒しているわけでもないので……」説明すればするほど、なぜか妙な方向へ進んでいる気がした。これではまるで、彼と一つ屋根の下で暮らすことに抵抗がないと認めているようなものではないか。智宏はスプーンでコーヒーをかき混ぜながら、指先でカップの縁に軽く触れた。そして顔を上げる。「僕は完璧な紳士というわけではありません」心愛の動きが止まった。智宏の喉仏がわずかに動く。彼は視線を逸らすと、ゆっくりとコーヒーカップを持ち上げた。「あなたも、あまり無防備になりすぎないほうがいいです。僕は一応、男ですから」心愛はぼんやりしたまま、卵トーストを手に取り、一口かじった。耳の先が、抑えきれず赤く染まる。彼を一人の男性として意識してしまったからこそ、一晩中あれこれ考えてしまったのだ。……昼頃、智宏が出かけたあと、心愛は由奈のもとを訪れた。由奈はジュースを心愛の前に置く。「昨日の夜は本当に心配したんですよ。何かあったのかと思いました」心愛はすぐには返事をしなかった。由奈は顔を上げると、彼女が明らかに寝不足で、どこか上の空になっていることに気づく。「元気がないですね、何かあったんですか?」「え?」心愛はそこでようやく我に返り、
「私には経営なんてできないよ。それに、私は昔から自分の好きなように生きてきたから、誰かを率いる立場なんて務まらないと思う」祐一は小さく笑い、彼女の手を握った。「大丈夫。無理に経営を覚える必要なんてないよ。会社のことは俺に任せるといい。君は、君がやりたいことをすればいいんだ」由奈が何か言おうとしたその時、智宏から電話がかかってきた。……窓の外は、いつの間にか夕闇に包まれていた。智宏は腕時計に目を落とす。けれど、どれだけ待っても、心愛が戻ってくる気配はなかった。彼女は寮を出た。由奈のところにもいない。なら、一体どこへ?ふと、今日、庭の外で一瞬だけ見えた人影が頭をよぎる。彼は眉を寄せ、少し迷った末に車の鍵を手に取った。その頃、心愛は由奈からのメッセージに返信しないまま、静かな公園で一人過ごしていた。先ほどまで人の声で賑わっていた公園も、時間が経つにつれてすっかり静まり返っている。彼女は誰もいない周囲を見渡し、そしてようやく気づく。自分には、本当に行く場所がないのだと。その時、由奈から電話がかかってきた。心愛は画面を見つめたまま、長い間動けなかった。けれど結局、音を消すだけで電話には出なかった。今、智宏に向き合うべきなのだろうか。いつまでも逃げ続けるわけにもいかない。そう思い、由奈へ返信を送ってから、心愛は立ち上がった。気づけば、ずいぶん遅い時間になっていた。帰り道、心愛はずっと落ち着かなかった。この通りにはほとんど人影がなく、時折、ゴミ箱を漁るホームレスの姿が見えるだけだった。心愛は俯いたまま、歩く速度を上げる。靴底が古びたコンクリートの道を叩く音が、静まり返った路地にやけに大きく響いた。その時、背後から乱れた足音が聞こえた。心臓が跳ねる。思わず走り出しそうになったが、次の瞬間、数人の酔っ払いが笑い声を上げながら別の路地へ曲がっていった。心愛はほっと息を吐く。そして最後の角を曲がった瞬間――目の前に現れた黒い影に驚き、思わず声を上げた。相手も驚いたように足を止める。「驚かせてしまってすみません……中道です」聞き慣れた声に、心愛の身体が固まった。数歩先に立っていたのは、智宏だった。街灯の淡い光が斜めに彼の肩を照らしている。その眉間には、本人も気づかないほどの緊張が