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第15話

Auteur: 路1
その言葉が終わると、車の中には静寂が広まった。

康穂は目を逸して、頭の中には色んな思いが駆け巡っていた。

最初に司のところに来た時、彼は本当に康穂に良くしてくれた。だから、あの時の康穂には微かな恋心はあった。

だけどそれから色んなことを経て、その微かな恋心も跡形もなく消えていった。

彼女は環奈はいずれ戻ってくることが分かっていた。そして、環奈と自分だと司は決して自分を選ばないだと彼女は理解していた。

それを確信してから、彼女はただ仕事のように彼の傍にいるだけだった。

だから鏡北市から離れた時、彼女は仕事が終わった時の解放感しか感じなかった。

彼女が司に対する感情は好きとも、愛とも言えない気持ちだった。

それで彼女は誠実に自分の気持を司に伝えた。

「立川様、私が貴方の傍にいる時、貴方はずっと私が替え玉でしかないと言っていました。私もそうだと思って、ずっと最上さんの真似をしてきました。最上さんの替え玉としては貴方を愛していると言えます。ですが、私自身の答えとしては、一度も愛したことはありませんでした」

彼女が口を開く前でも、司は焦燥感にかられていた。

そして彼女の答えを聞いて、司の心が段々と沈んでいった。

彼は冷たく康穂を見つめて、彼女を嘲笑った。

「一体いくらだ?あんたが文句1つ言わずに俺の傍に3年間もいさせたその金額はいくらなんだ?」

「1億6千万です」

その金額を聞いて、司は更に笑った。

「たったそれっぽっちの金で、今までの生活を演じることが出来たのか!」と彼は思った。

彼はポケットの中からカードを取り出して康穂に向けて投げつける、それと同時に氷のような言葉を投げつけた。

「そのカードには16億が入ってる、30年分にはなるのだろう、今すぐ俺と鏡北市に戻るぞ!」

康穂は自分の膝の上に投げつけられたカードを拾い、その黒く光っている装飾を見て、暫く考えた。

司は彼女が受け入れるだろうと思っていた時、彼女はそのカードを彼に返した。

「立川様、申し訳ございません。私は既に最上さんに二度と鏡北市には戻らないのと、貴方と彼女とは二度と関わらない赤の他人でありますように約束しております」

彼女の言葉はとても力強く、まるで氷で出来た刃のように司の心に突き刺さった。

彼は自身の理性を保つことが出来なくなり、声を荒らげた。

「最上さん、最
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