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第6話(3)

Auteur: 甘寧
last update Dernière mise à jour: 2025-09-18 16:00:00

その後、見合いの場は滞りなく終了した。……と言いたい所だったが、やはりそうはいかなかった。

奏の両親は柚の存在に驚いたが、どこの誰とも知らない女より、しっかりとした家柄で身分の知れた者の方がいいに決まっている。

ご両親は怒りを内面に隠し、努めて冷静を装いながらその場をやり過ごした。

「お疲れ様。助かったよ」

「え、あぁ、いいえ…」

帰りの車の中、笑顔で缶コーヒーを手渡された柚は、顔を引き攣らせながら受けとった。

「どうした?」

ぼーっと放心状態の柚を心配した奏が顔を覗かせてきた。

柚は驚いて飛び退いた。その様子に奏は眉を歪めていたが、綺麗な顔が目の前に飛び込んでくれば、誰でも驚いて飛び跳ねてしまう。

「ご、ごめんなさい」

真っ赤に染まる顔を逸らし、取り繕いながらコーヒーを口に運んだ。苦いはずなのに、味がよく分からない。

「それじゃぁ、私の役目も済みましたし……」

私の役目は、この人に彼女がいるとご両親に認識させること。その役目は十分に担えたと思っている。

「待って」

ドアを開けようとするのを阻むように手を掴まれた。息がかかりそうなほど近い距離で見つめられ、柚の心臓は驚く程に脈打っている。

「もう少し、もう少しだけこの関係を続けてくれないか?」

「え?」

「一度顔を見せた程度じゃ両親《あの人》達は納得しない。周囲に君の事を認識させる必要があるんだ」

切実な想いは伝わったが、これ以上は危険な気がする。身元が知られてしまう不安もあるが、忘れていた熱が再熱してしまうのではという恐怖の方が大きい。

断らなきゃ…

「えっと」そう口にしたところで、ポスンッと奏の頭が肩に落ちてきた。

「頼む。君しかいないんだ」

「ッ!」

そんなこと言われたら決意が鈍ってしまう。頭では分かってるはずなのに、言葉が出てこない。

「君の事は僕が絶対に守る。だから──!」

真剣な眼差しに、思わず息を飲む。

吸い込まれそうなほど、綺麗な瞳で見つめてくる。その瞳を見て思い出した。

……そう言えば、彼は一度決めたことを簡単には曲げない人だった。それで何度か喧嘩になり掛けたこともあったほど。

(ほんと、変わってない)

昔を思い出し、クスッと笑ってしまった。

「あぁ、ごめんなさい」

怪訝な顔
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