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第11話

Author: こそゆ風
2年後。

B市でも有名な海沿いのチャペルでは、ステンドグラス越しの光が、白いバージンロードに降り注いでいた。

新郎控室では、スタッフが俺のタキシードの襟元を整えていた。

ベストマンの渉は隣のソファでスマホを眺めながら、さっきから何度も愉快そうに笑っていた。

「慎一、面白い話が入ってきたぞ」

「何だ?」

鏡越しに目を向けると、渉はにやにやしながら口を開いた。

「石井の会社、とうとう倒産したらしい。

2年前、氷室社長があのパーティーで取引を打ち切るって言ってから、ほかの会社も次々に手を引いたんだと。大口の取引先も、ほとんど残らなかったらしい。

その後も判断を誤ってばかりで、とうとう資金が回らなくなった。昨日は差し押さえまで入って、今じゃ借金が2億円近くまで膨らんでるらしい。あれだけ大事にしてたマンションも、競売に出されたってさ」

カフリンクスを整えていた指先が、ほんの一瞬だけ止まった。けれど次の瞬間には、何事もなかったように動作を続けた。

「そうか。相沢は?」

「あいつは相変わらずだよ」

渉は呆れたように笑った。

「石井の会社が潰れたと分かった途端、口座に残って
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    2年後。B市でも有名な海沿いのチャペルでは、ステンドグラス越しの光が、白いバージンロードに降り注いでいた。新郎控室では、スタッフが俺のタキシードの襟元を整えていた。ベストマンの渉は隣のソファでスマホを眺めながら、さっきから何度も愉快そうに笑っていた。「慎一、面白い話が入ってきたぞ」「何だ?」鏡越しに目を向けると、渉はにやにやしながら口を開いた。「石井の会社、とうとう倒産したらしい。2年前、氷室社長があのパーティーで取引を打ち切るって言ってから、ほかの会社も次々に手を引いたんだと。大口の取引先も、ほとんど残らなかったらしい。その後も判断を誤ってばかりで、とうとう資金が回らなくなった。昨日は差し押さえまで入って、今じゃ借金が2億円近くまで膨らんでるらしい。あれだけ大事にしてたマンションも、競売に出されたってさ」カフリンクスを整えていた指先が、ほんの一瞬だけ止まった。けれど次の瞬間には、何事もなかったように動作を続けた。「そうか。相沢は?」「あいつは相変わらずだよ」渉は呆れたように笑った。「石井の会社が潰れたと分かった途端、口座に残ってた最後の200万円を持ち逃げしたらしい。今は20歳以上も年上の金持ちの女に取り入ってるんだと。数日前には、その女に買ってもらった偽物のブランド時計をSNSに載せて、自慢してたらしいぞ」ひとしきり笑ったあと、渉はふと声を落とした。「それから石井だけど、もうまともな状態じゃないらしい。毎日、お前たちが一緒に暮らすはずだったマンションの前に座り込んで、空の酒瓶を抱えたまま泣いたり笑ったりしてるんだと。誰に会っても、もうすぐ夫がここに越してくるって言い張って、警備員に追い払われてもまた戻ってくるらしい。もう、まともに話も通じないってさ」そこまで聞いても、心は不思議なくらい静かだった。ようやく報いを受けたのだと喜ぶ気にもなれず、かといって、彩香を哀れむ気持ちも湧かなかった。まるで、赤の他人の話を聞いているようだった。誰かが罰を与えなくても、人を傷つけ、欲に任せて生きていれば、いつか自分で自分の首を絞めることになる。2人はただ、そうなるべくしてなっただけだった。「もういい。せっかくの日に、あいつらの話はやめよう」腕時計を着けて立ち上がると、控室のドアがそっと

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