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last update Date de publication: 2025-11-07 18:06:27

「守ってあげられなくて、すまなかった」

 これからはどうか頼ってほしい。言いかけて、口をつぐむ。

 父親らしいことは何一つできなかった。今さらどの面を下げて言うというのか。

 双子たちは顔を見合わせて、口々に言った。

「守ってくれたよ? 悪い王様をやっつけて、税金を安くして、助かったって町の人が言ってたもん。かあさまの店にも、怖い顔で税金を取り立てに来る人が来なくなった」

「かあさまの店に来る人も、前より増えたの。新しい王様になってから、街道が安全になって、旅がしやすくなったからだって」

 アレクはカップを握りしめた。

 王として成した事々が、こうして認められている。他でもないエリアーリアと彼の子どもたちに。

「ありがとう……」

 その一言を言うのが、精一杯だった。

 扉の向こうで声を聞いていたエリアーリアは、身を切るような思いを感じていた。

(アルト、シルフィ。ずっ

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    「歩きやすい。すごい」 早速履いてみたシルフィが、歩き心地に感動している。「これを履いたら、元の靴に戻れそうもないや」 アルトも笑顔だ。 職人たちも満足そうにしていた。「それじゃあ、靴の売出し計画を作ろう。本来ならば貴族を優先させるのだろうが、これは人々のための靴。身分にかかわらず売るものとする」「王子殿下。それでは平民と同列に並べられた貴族たちが、不満を抱きかねません」 職人の一人が不安そうに言うので、アルトは首を振った。「そうだろうな。だが俺は、貴族がこの靴を独占するのを望まない。父上だって同じ意見だろう。ただし貴族の面子を立てるため、仕様を変える」「というと?」「平民用にはシンプルに、この靴の利点を最大限に生かせるように、安価な路線を。貴族向けには趣向を凝らして、革に刻印を押したり着色をしたり、一人ひとりのサイズに合わせたりなど、高級路線とする。これならば貴族の不満を抑えながら、平民に流通もできるはずだ」「なるほど! それであれば、できそうです!」◇ 数カ月後、王都で売りに出された新しい靴は、爆発的な人気を博した。 長い距離を歩く旅人はもちろんのこと、町を行き交う町民もこぞってこの靴を買い求める。性能の割に安価で、しかも王子殿下のお墨付きなのだ。 貴族たちに向けては、豪華に飾り立てた靴を作った。華やかな見た目の靴は貴族たちの虚栄心を大いに満たし、それでいて靴の機能性は変わらないので、彼らもすっかり靴の虜になった。 作れば作るほど売れる有り様で、靴事業は大きな利益を上げる。 職人や魔法使いの雇用や弾力の木の収穫、植林や森の管理まで含めて、波及した経済効果も大きかった。 王都の景気は大いに賑わって、失業者の吸収もできた。 この国だけではなく外国への輸出も盛んになり、外貨獲得にも一役買ったのである。 その年の暮れになると、アルトとシルフィは事業で得た莫大な利益を金貨として積み上げて、父であるアレクの前に差し出した。「父上。これ

  • 悠久の魔女は王子に恋して一夜を捧げ禁忌の子を宿す   49

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    last updateDernière mise à jour : 2026-03-22
  • 悠久の魔女は王子に恋して一夜を捧げ禁忌の子を宿す   46:新しい世界へ

     そして何より。森全体の魔力が、彼女の腹に宿る人間の子を異物とみなして、明確に拒絶している感覚があった。肌を刺すような冷たい不快感は、ほとんど敵意に近かった。 魔女としての高い魔力は健在で、肉体に変化も見られない。恐らく以前と変わらず、不老のまま長い時を過ごすだろう。 けれど彼女は、決定的に変わってしまった。還るべき森を失い、絆を失った。 お腹の子の巣立ちを見届けた後は、悠久の時を真なる孤独に過ごすこととなるだろう。 エリアーリアは、冷淡な敵意を向けてくる森を見渡した。(……ここはもう、私

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  • 悠久の魔女は王子に恋して一夜を捧げ禁忌の子を宿す   43

     夜明け前。鷲ノ巣砦のほど近く、霧が立ち込める谷。アレクは計画通りに、五十名の精鋭を率いて崖を登っていた。崖を行くこの部隊は、作戦の中でも元も危険な役割を担う。だからこそアレクはこの場所に居た。 精鋭部隊の靴は、特殊な登攀靴である。靴裏にある種の弾力性のある樹木の樹皮を用いて、さらに深い溝を彫り込んである。 これにより滑りにくく、また、音を立てずに動くことができた。(エリアーリア、君が教えてくれた知恵だ。この樹皮を靴に使うなど、考えたこともなかった) アレクは愛しい人を思い出し、すぐに振り払った。戦場はすぐそこに迫っている。気を引き

    last updateDernière mise à jour : 2026-03-22
  • 悠久の魔女は王子に恋して一夜を捧げ禁忌の子を宿す   42:王の旗のもとに

     南の砦の作戦室では、壁には松明が掲げられ、重厚な木製のテーブルには巨大な地図が広げられている。 集まっているのは白髪の老将軍ヴァレリウスと、指揮下の屈強な騎士たちだ。 アレクは彼らの中心に立って、集めた情報をを聞いていた。「殿下、我らの兵力はおよそ千。対する王都の兵力は、少なく見積もってもその十倍。このまま王都を目指すのは、無謀としか言えませぬ」 ヴァレリウスが、苦渋の表情で現状を告げた。「将軍の言う通りだ」 アレクは頷いた。「今の我らが王都へ進軍すれば、叩き潰されて終わるだろう。反

    last updateDernière mise à jour : 2026-03-21
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