Semua Bab 悠久の魔女は王子に恋して一夜を捧げ禁忌の子を宿す: Bab 1 - Bab 8

8 Bab

01:深緑の森の主

 木漏れ日が、幾重にも重なる葉の隙間から降り注ぎ、苔むした地面に光のまだら模様を描いている。 深緑の魔女エリアーリアの住む森は、今日も静寂に満ちていた。百年の時を生きる彼女にとって、この変わり映えのしない平穏こそが日常だった。  蔦の絡まる小さな小屋の前、年季の入った木製の椅子に腰掛けて、手元のカップに口をつける。  鼻腔をくすぐるのは、カモミールの柔らかな甘さと、数種類のハーブが織りなす爽やかな香り。遠くで聞こえる山鳩の鳴き声と、頬を撫でる風の涼やかさが心地よい。 春の森を吹き渡る風が、彼女の長い金の髪を揺らした。森に降る木漏れ日そのもののような、淡い金の髪。  肌は白磁のように白く美しく、汚れ一つない。伏せがちな長い金の睫毛に彩られたのは、森の深緑そのものの色。 ここは魔女の森。人の手の届かない、神秘の領域。(今日も変わりない。それでいい。それがいいの……) いずれ自らの魂と魔力がこの森の一部となり、世界を支える力となる「大いなる還元」。それこそが魔女の宿命であり、存在意義でもある。  その時が来るまでこの穏やかな時間は続く。エリアーリアは、運命を静かに受け入れていた。 ふと。視界の隅にある若木の葉先が、力なく萎れていることに気がついた。  エリアーリアはカップを切り株のテーブルに置いて、音もなく立ち上がる。彼女の素足が触れる苔は、しっとりと柔らかい。  若木のそばに屈み込み、そっと指先を伸ばした。白い指が葉に触れた瞬間、淡い緑の光が走る。萎れていた葉先は見る間に瑞々しさを取り戻した。「大丈夫。もう喉は渇かないでしょう」 幼子に語りかけるような、穏やかな声。  生命と植物を司る「深緑の魔女」。この森は彼女の庭であり、彼女自身そのものだった。 ◇  いつも通り穏やかな午後の静寂は、唐突に破られた。  若木から手を離した瞬間、不快な魔力の揺らぎが森全体を走ったのだ。  くらりと軽い目眩を覚える。森に施している結界が、無理にこじ開けられたとエリアーリアは察した。(……何かしら) 静かに凪いでいたはずの心に、小さなさざ波が経つ。魔女として生きたこの百年、このような乱暴な侵入者は存在しなかった。  ただの迷い人であれば、このようなことにはならない。誰かが明確な意志で、森の護りを突破したのだ。
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02:深緑の森の主2

 直後、森の空気が一変した。 近くの枝で木の実をかじっていたリスが、ピィッと甲高い警告の声を上げる。鳥たちが一斉に枝を蹴って空へと逃げていく。 にわかに騒がしくなった森の中に、一陣の風が吹き抜けた。(これは、血の匂い) 風が運んできたのは、鉄錆と泥とが交じりあった生々しい血の匂いである。(血……? この森に、これほど濃い血の匂いはそぐわないわ) エリアーリアの中で、疑念と警戒の意識が鎌首をもたげた。 この森に、もちろん獣たちはいる。肉食の狼や熊が獲物を狩れば、血の匂いが漂うこともある。 だがこの匂いは、彼女の知る森の営みから逸脱したものだった。食べるためではない、傷つけるためだけの悪意によるもの。 エリアーリアはゆっくりと立ち上がった。深緑の瞳に宿るのは、先ほどまでの穏やかさではない。自らの領域を侵した者への、冷たい怒りの感情だった。 彼女は迷いのない足取りで、結界が綻びた方向、血の匂いが濃い場所へと向かった。苔と土の上を歩く素足は足音を立てず、滑るように進んでいく。 森の入口に近づくにつれて、木々はまばらになっていく。木漏れ日は陽射しとなって、エリアーリアの金の髪を弾いた。 そしてまだ若い樫の木の根本に、それはいた。 エリアーリアは思わず足を止めた。木の陰に身を隠して息を殺す。 そこに倒れていたのは、一人の青年である。月の光を集めたような銀の髪は、今は泥と血に汚れて額に張り付いている。 年頃は二十歳になるかならずか。ようやく大人になったばかりの若者だった。(人間? なぜこんなところに) 警戒は解かず、観察を続けた。 青年が着ている衣服は切り裂かれて汚れていたが、生地の質感やわずかに見える金糸の刺繍は、ずいぶんと豪華なものに思えた。 ひどく苦しそうな様子で、浅い息を繰り返している音が、静かな森の中に響いている。 顔はやはり汚れていたが、品良く整っており、育ちの良さを窺わせた。 エリアーリアは慎重に、一歩ずつ青年に近づいた。 間違いない。この男はただの旅人ではない。森での暮らしが長い彼女でも分かる。こんな人間が、なぜ血まみれで魔女の森に倒れているのか。 エリアーリアの百年の孤独と静寂に投げ込まれた、異質で危険な存在。 面倒ごとの匂いしかしなかった。
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03:未練という名の楔

 倒れた青年を、エリアーリアは距離を置いて眺めた。 ぽつ、ぽつ、と冷たい春の雨が降り始めて、森の緑を濃く濡らしていく。雨粒が青年の銀髪や汚れた頬を打つ。彼の苦しげな呼吸だけが、静かな森に響いていた。(関わってはいけない) 脳裏に、師である大地の魔女テラの厳格な声が響く。『我ら魔女はただ還るための存在。人間との交わりは、魂に未練という楔を打つ。未練は、還りを妨げる毒である』 その教えは、エリアーリアの百年を支えてきた魔女の理(ことわり)そのものだった。 彼女は左の胸元を押さえる。そこに刻まれているのは、花のような紋様だ。『深緑の魔女』の証である、魔女の紋様だった。 そして目の前の青年は、自然の摂理が引き受けるだろう。獣が傷つき倒れれば、やがて森の土に還る。この人間も同じ。彼女が手を下すまでもなく、森がすべてを受け入れる。 エリアーリアは静かに踵を返し、その場を去ろうとした。「……うぅ……」 苦痛に満ちた、か細い呻き。 その声が、彼女の足を縫い止めた。 数歩進んだまま、動けない。雨脚は次第に強まって、彼の体温を容赦なく奪っていく。そのさまが、森を見通す魔女の力を通して痛いほどに伝わってくる。 魔女として生きた百年は、静謐と孤独に満ちていた。人としての心など、とうの昔に捨て去ったはずだった。 だがどうしたことだろう。 かつて人間だった頃の、人を助けたいという思い。忘れていたはずの感情が、心の奥底で動くのを感じる。 ――見捨てれば彼は死ぬ。 その事実が、理屈を超えた重みとなってエリアーリアにのしかかった。(なぜ……なぜ、足が動かないの。今の私は魔女。人としての心なんて、もう必要ないのに) エリアーリアは天を仰ぎ、深く長い溜息をついた。雨粒が彼女の長い金の睫毛を濡らして、水滴を弾いた。「……目覚めが悪すぎるわね、まったく」 呆れたような独り言は、誰に聞かせるものでもない。 エリアーリアは青年へ向けて手をかざした。彼の体は淡い緑の光に包まれて、ふわりと宙に浮き上がる。 雨に濡れる森の中、浮遊する青年を先導するように、彼女は小屋へと戻っていく。 誰もいない小屋の中は、暖炉の残り火が揺れる、ハーブの香りが満ちた穏やかな空間。外の荒れた天候が嘘のようだ。(傷が癒えたら、すぐに追い出してやるんだから) エリアーリアは自分に言い聞かせ
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04:魂喰いの呪い

 小屋の中には、ランプの揺れる明かりと薬草をすり潰す音が満ちている。 エリアーリアは手際よく薬研を使い、乳鉢に移して薬草を練り上げた。 ベッドに寝かされた青年は呪いの熱に浮かされて、浅い呼吸を繰り返している。時折、悪夢にうなされるように眉を寄せてはうわごとを呟いていた。 エリアーリアは薬草を青年の傷に塗り込んで、それを触媒に魔力を込めた。 彼女は植物と生命の魔女。魔力は純粋な治癒の光、生命の魔法となって、エリアーリアの指先から青年の体へと注ぎ込まれていく。(治癒は得意。まだ死ぬべき定めではない動物たちを、何匹も癒やしてきた) 傷口を浄化し、断たれた肉と骨を繋ぎ、命の力を与える。いつも通りの手順を冷静にこなしていく。 けれどその瞬間、エリアーリアは未知の感覚に襲われた。 傷を癒やすはずの魔力が、黒い茨の紋様に「喰われて」いく。乾いた砂が水を吸うように、注げば注ぐほど呪いは強く脈打った。まるで歓喜するかのように。(私の生命魔法を、喰らっている? 魔力だけでなく、魔女の魔法まで?) エリアーリアの冷静さは、焦りへと変わった。こんなことはありえない。彼女の魔法は、命の力そのもの。それを糧とするなど、あまりに邪悪な術だった。◇ 呪いの脈動は強まって、青年は苦しげにうめき声を漏らした。シーツを強く握り締めて、もがくように身をよじっている。 エリアーリアは彼の額の汗を拭う。(まさか、私の――魔女の力が通用しないなんて) 魔女の魔力は人間をはるかに凌ぐ。その強大な力で百年、森を護り侵入者を拒んできた。 深緑の森にいる限り、エリアーリアはほとんど万能の存在だった。木々や獣たちは彼女にひれ伏して、彼女もまた彼らを慈しんで暮らしてきた。 それがどうだろう。 苦しむ青年を前に、彼女は無力だ。 禁忌を犯してまで助けると決めたのに、何もしてあげられない。 蠢く黒い茨から目を逸らして、青年自身へと注意を向ける。彼の苦しげなうわごとに、耳を澄ませた。「兄上……。なぜ、ですか。私はただ国と民を……」 途切れ途切れの悲痛な響き。(兄? 身内に裏切られたというの? あなたは一体、何者?) 彼の悲しみが、エリアーリアの心に染み込んでくる。 魔女としての理性を超えた同情が、彼女の心に芽生え始めていた。
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05:魂喰いの呪い2

 エリアーリアは治療を一度中断すると、小屋の奥にある書棚に向かった。 書棚には多くの薬草の瓶の他、古びた羊皮紙の巻物や革の装丁の古文書が並んでいる。彼女はその中から一冊、特に丁寧な装丁がされている分厚い書物を手に取った。 それはかつて師である大地の魔女テラから写本を許された、魔女の叡智が詰まった古文書。禁術や呪詛についても記された、安易に開くべきではない知識の集積である。 青年の言葉と、呪いの紋様。二つの情報がエリアーリアの頭の中で結びついていた。もう何十年も前にこの書物で学んだ、禁忌の魔法に関する記述の記憶。(茨のような紋様。高貴な人間への裏切り……。まさか、あの禁術のはずがない。あれはただの伝説のはず) 嫌な予感が確信へと変わっていく。動揺する心を押し殺して、目当てのページを探し始めた。 ぱら、ぱらと乾いた羊皮紙をめくる音だけが、やけに大きく響いた。 ランプの灯りの下、ついに目的のページが開かれた。 そこには、今まさに青年の胸で脈打っているものとよく似た、黒い茨の紋様が禍々しく描かれている。 エリアーリアは息を呑んだ。 書物に記されていたのは、特定の血族だけを標的とし、その魂ごと喰らい尽くして存在を抹消するという、人間の闇魔術の極致――「魂喰いの呪い」。 屍の魔女の魔法を応用し、古い時代の人間たちが編み上げた禁忌の魔術だ。 書物には、あまりの悪辣さと強力さから、心ある人間の魔術師たちによって封印、破棄されたとある。 (封印……。では、誰かが破棄された術を掘り返したのね。そしてまた、人を傷つけるために力を振るっている) エアーリアは書物を手に、青年の元へと戻った。 書物によると、黒い茨は魔法陣でもある。対象の血族を指定し、相手を逃さないための術式が組み込まれているようだ。 エアーリアは青年の茨に指を伸ばし、内容を読み取っていった。「血族名、アストレア……!?」 アストレアの名を関する一族は、一つしかない。この一帯を支配するアストレア王国、その王家の血。 目の前の青年が、この呪いの標的となる高貴な血筋――アストレア王家の人間であるという事実を示していた。 エリアーリアは思わず、先ほど青年の服から転がり出た指輪を見る。その紋章に見覚えがあった。そう確か、王家の。 エリアーリアは古文書と、ベッドで苦しむ青年を交互に見つめた。
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06:偽りの身分

 翌朝。嵐が過ぎ去った後のように、小屋に静けさが戻っていた。 柔らかな朝日が室内に差し込み、舞い上がる塵を金色に照らしている。ベッドの青年は、穏やかな寝息を立てていた。  呪いの解呪には至らなかったものの、エリアーリアの治療は一定の効果を発揮していた。生命の魔法が喰われるのであれば、対症療法として解熱の薬草や魔力抑制の煎じ薬を使う。その結果、危険な状態は脱することができた。  青年の肌に刻まれた黒い茨の紋様は、今は脈動をやめて古びた入れ墨のように沈んでいる。  エリアーリアは夜を徹した看病の疲れから、椅子に座ったまま浅い眠りに落ちていた。 ばさり、と。布が擦れる物音で、エリアーリアの意識は浮上した。  彼女が目を開けると、青年がベッドの上に半身を起こして、じっと見つめているのに気付いた。彼の顔色はまだ悪かったが、熱は引いたようだ。  心臓がドキドキと嫌な音を立てる。 青年の正体を知ってしまった今、視線の一つ、動作の一つに意味を探ってしまう。エリアーリアはいつでも魔法を発動できるよう、油断なく感覚を研ぎ澄ませた。 青年がゆっくりと口を開いた。「ここは……?」 熱に浮かされていた濁りが消えて、夏空のような澄んだ青い瞳が、まっすぐにエリアーリアを射抜いている。「君が、助けてくれたのか……? 君は……女神様か……?」「寝言はそれくらいにして。私は魔女よ。この森の主である、深緑の魔女。――気分はどう?」 エリアーリアは、努めて冷静な声を出した。  青年はゆっくりと身を起こし、見慣れない小屋の中を戸惑いの表情で見回した。「気分はいい。あれほど苦しかったのが、嘘のようだ」「そう、それなら良かったわ」「ここは深緑の森なのか? 魔女の森と名高い、禁断の森」「ええ、そうよ。人間の身でよく入り込んだものだと感心していたの」「魔女は人と関わらないと聞いている。それでも助けてくれたのか?」「……気まぐれよ」 エリアーリアが冷たく言うと、青年はどこか安心したように頷いた。「ありがとう、深緑の魔女。俺の名はアレクという。それ以外のことは……よく思い出せない」(嘘ね。瞳の奥が揺れている。身分を明かすつもりはないのね) 呪いによって刻まれた、彼の本当の身分。忘れるはずもない。  だが、ここでアレクの嘘を暴く必要もない。傷がもう少し治れば、追い出す
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-17
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07:偽りの身分2

 エリアーリアは台所に立って、手早くスープを作った。数種類の薬草を組み合わせた、滋養効果のあるものだ。 アレクはそれをおずおずと受け取って、一口ずつゆっくりと飲んだ。少し苦みのある温かいスープが、呪いと傷とで弱りきった彼の体に染み渡っていく。 頭を傾けるたび、彼の銀の髪がさらりと揺れた。 その姿を冷静に観察しながら、エリアーリアは言った。「傷が癒えれば、すぐにここから出て行ってもらうわ。それまでは、私の指示に従うこと。いいわね?」 それは、彼と彼女の間の境界線を示すもの。契約と言ってもいいだろう。 アレクのためではない。これ以上の深入りをしないよう、エリアーリアの心に築いた防壁だった。「ああ……恩に着る。君の邪魔はしない。約束する」 彼の素直な感謝の言葉が、その壁をわずかに揺るがした。 エリアーリアはそれに気づかないふりをして、冷たい声で言う。「あなたの服、治療に邪魔だから切ってしまったの。ポケットに指輪が入っていたから、そこに置いておいたわ」「……指輪」 アレクの瞳にわずかな焦りが滲んだ。指輪には王家の紋章が刻まれている。身分を偽ったとバレたのかと、心配しているのだろう。 エリアーリアはそれ以上、特に何も言わない。 彼は黙って指輪を手に取ると、指に嵌めた。◇ それから数日が過ぎた。 エリアーリアは書物を何度も読み返し、呪いへの対抗手段を探っていた。 根本的な解呪法は見つけられなかったが、いくつかの薬草を練り合わせることで、呪いの活動を抑えるのに成功した。 彼女の手のひらの上で、緑の魔力が光の粒子となってハーブに溶け込んでいく。(まったく、面倒。魔法が使えない以上、傷を治すのも薬草頼みだわ。調合に魔力を混ぜるのがせいぜい) そんなエリアーリアの様子を、アレクがその様子をじっと見つめていた。 彼の夏空のような青い瞳は、澄み渡っている。そこには恐怖も疑念もなく、純粋な好奇心と
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-18
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08:森の歌声

(このままではいけない。ただでさえ魔女の禁忌に触れているのに) こみ上げる感情を押し殺すために、エリアーリアはわざと冷たく言った。「戯言はそこまでにして。勘違いしないで。私はあなたを助けるけれど、それだけ。傷が癒えれば、あなたはただの他人よ」 顔を背けたまま鋭く言い放つ。 その言葉に、アレクの瞳が一瞬だけ悲しげな色を浮かべたのを、エリアーリアは気づかないふりをした。 ◇  あれから数週間が過ぎて、森は初夏の色合いを濃くしていた。 アレクの体力はずいぶんと回復している。小屋の周りで薪を集めたり、水を汲んだりと、軽い手伝いができるようになった。 アレクは元の豪奢な服を脱ぎ捨て、エリアーリアが用意した素朴な布の服を着ている。ちくちくと肌触りはあまり良くないけれど、動きやすい。彼はけっこう気に入っていた。 エリアーリアとアレクの関係は、一言では言い表せない。 治癒者と怪我人としては、エリアーリアの態度は冷たかった。アレクと視線を合わせるのを避けて、薬草を調合する作業台にこもりがちになっている。(あくまで契約よ。傷が癒えるまでの、一時的なもの) そんなことを考えていると、散歩に出かけたアレクが戻ってきた。「深緑の魔女。森でこんな実を見つけた。きれいな色だ。食べられるだろうか?」 嬉しそうに手に持っているのは、真紅の木の実。 エリアーリアはため息をついた。「その赤い実は毒よ。食べたら死ぬわ」「えっ」 アレクは目を丸くして木の実を見ている。「……捨ててくる」 しょんぼりした様子で小屋を出て行きかけたので、エリアーリアは呼び止めた。「待ちなさい。毒だって使い道はある。よく干して他の薬草と混ぜ合わせれば、薬になるの。ここに置いておいて」「そうか! 良かった」 アレクの無邪気な笑顔に、エリアーリアの心がちくりと痛んだ。「あなた、そんな様子じゃこ
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