LOGIN刻は魔族と人間・亜人国家連合が激しい戦争を繰り広げている時代。 魔族は劣勢、召喚された勇者まで魔王討伐のために送り込まれている状況。 そんな中、妖精族の国リーン・フィアで穏やかに暮らしていたシャーロットであったが周囲の状況が急変する。 彼女には更なる運命が待ち受けていた!? 次期の魔王となる証――魔呪刻印が発現!? 次期妖精王と結婚させられそうになるわ、幼馴染に想いを仄めかされるわ、婚約破棄された帝國皇子と再会して本当の気持ちを伝えられるわ。 そして更に彼女は様々な人々を巻き込んでゆく…… 戦争と言う極限の中でシャーロットを取り巻く男たちとの恋愛譚。 またの名をドタバタコメディとも言う……。
View More「ほら、シャーロット! お茶なんてのんでないで、こっちでボールなげでもしよう!」
優しく高い声。 何だか、凄くほっこりさせられる、心が落ち着く声色。 ふわふわな金髪に碧眼と幼いながらに凛とした顔立ちの男子。 柔らかくも鋭い目には慈愛の潤いを湛え、目尻が下がっているのも好意の現れ。 「ぼーるなげ? はじめてだけどやってみたーい! あたしにもできるかなぁ……」「かんたんだよ! ぼくの真似をしてみてよ!」
そこから始まったキャッチボール。 「なんだか、ぼくたちが仲良くしたら、みんなも仲良しになれるんだって!」「えっ! そうなの? じゃあ、あたし仲良くなりたい!」
「それだけじゃないよ! ぼくはシャーロットが好きになったよ! だからきみにもぼくを好きになってほしいな!」
突然の言葉にシャーロットの投げたボールは、すっぽ抜けて大暴投。 慌ててガイナスが取りに走る。 綺麗に手入れされた芝生のカーペットが敷かれて、見晴らしのよい離宮の広場。 特に探すこともなく、ガイナスはすぐに戻ってきたかと思うと、怒った様子もなく自然な笑顔のままボールを投げ返す。 それは優しくふんわりとした弧を描き、シャーロットの手に収まった。 「ははは! シャーロットはまだまだへただね!」「むぅ……ガイナスがきゅうに変なこといったからだもん!」
「ほんとうだよ! ぼくはシャーロット……シャルが好きだよ! ずっとまもるって決めた!」
「えへへへ……まもってくれるんだ。あたしも好きだよ! ガイナスのこと! それでみんなも仲良くなれるならもっといいよね!」
懐かしき記憶が、刻を経た今なお鮮明に蘇る。そう。この人は……。
人間族の国家――エルメティア帝國の第1皇子ガイナス・エル・ティア・クラウレッツ。 彼は……ガイナスは私の
これは遠き日の懐かしき想い出。
※ ※ ※
戦争が激化の一途をたどる中、妖精族の国家リーン・フィアは未だ平穏な日々が保たれていた。
それもこれも昼なお暗い、深き大森林に護られた首都フィアヘイムだからこそ。そして現在、神星樹の王城《ヴァンドスラシル》の大広間では妖精王による夜会が催されていた。
「人間・亜人族連合軍との戦争中なのに呑気なもんだよねー。まぁあたしも大概かも知れないけどさ」 シャーロット・マクガレルは思わずそんな呟きを漏らしていた。 もう何杯目になるかも覚えていないカクテルを呷り、空になったグラスを近くにいたボーイに渡した彼女は憂鬱そうに俯いて目を落とす。 周囲からは貴族たちの談笑の声が耳に入ってくるが、普段から静かな場所で暮らしている身からすれば雑音にしか聞こえない。 そのさらさらな長い銀髪を耳に掛けると、妖精王のリンレイスの姿をその蒼い瞳に映した。 相変わらず、艶やかで美しい淡い緑色の長髪と瞳がその美貌を際立たせている。何やら貴族たちと歓談しているようで忙しそうだが、それも王たる者の務めなのだろう。
自分なら絶対になりたくないとシャーロットは独り言ちる。妖精族を束ねる妖精王リンレイス・フォーレ・ヘイムニースも別に好き好んで夜会を開催している訳ではない。
彼女は人間融和派であり、何とか両者を交渉のテーブルに着かせようと必死に動いている。 魔族も人間・亜人族も決して一枚岩ではないのだ。 「それにしてもエリーゼたちは何処へ行ったのさー暇なんだが……?」 姿が見えない幼馴染たちに、貴族社会に疎い彼女の口からは愚痴が零れる。 リンレイスの姪であるシャーロットは、嫌々ながらも夜会に出席していたのである。 そのせいもあってか彼女は思いの外、痛飲してしまっていた。そんなシャーロットの脳裏には、幼少期に1度だけ会った人間族の皇子との想い出が浮かんでいた。
他愛のない短編小説のような記憶の1ページだが、彼女にとっては懐かしく忘れがたいもの。 皇子との婚約が破棄されてからもう1年になる。『せめてもう1度だけでも会いたかった』――そんな想いが過ったが、どうすることもできないし、何より今更な話。
全てがシャーロットの意思とは無関係に自分の将来が決められて行くのを、彼女はまるで他人事のように見ているしかできなかった。
そんなことを思い出して、本日何度目かの大きなため息を漏らした彼女に、不意に声が掛けられる。
「おッ……あれ? もしかしてシャーロット……シャルか?」 聞き覚えがあるような声に、慌てて俯き加減だった顔を上げると、目の前には長身のスラリとした青年が佇んでいた。 赤い瞳からは驚きの感情が見て取れる。 燃えるような赤髪でツンツンと逆立ったスパイキーショートの精悍な顔付きに、懐かしい面影を見たシャーロットはすぐに思い出すことに成功する。 「……!! え? ヴァル? マジで?」「お、懐かしいなぁ、その呼び方。今じゃヴァルシュとかフレイヤートとかしか呼ばれないからな……」
驚きの声を上げたシャーロットの予想は当たっていたようで、思いがけない再会に思わず表情が綻んだ。 今までの憂鬱で気だるげな気分は吹き飛び、大輪の花が咲き乱れるが如く、パァッと表情が明るいものに変わる。 彼女本来の明朗快活で闊達な性格を、その精神が思い出したかのように表に溢れ出した。 何と言っても幼少期の幼馴染なのだ。 もう何年も会っていなかったが、同い年なのでヴァルシュも18歳のはずである。 「6年ぶりくらいかよー? 久しぶりー! 何だよー来てたんなら教えなよー!」「相変わらず、変な話し方してんのな。なんたら語?とか言ってたが……ルナさんだっけ。影響受けてたよな。 俺もお前も」
「ルナさんリスペクトなんで! 当然なんだが?」
ルナと言うのは、12歳の頃にこのフィアヘイムに立ち寄った人間の少女である。 金髪の派手な容姿をしている可愛らしい少女で、長い「ああ、大陸南部で喰い止めてるからな。
「ったく……目聡いヤツだよ。お前は。……まぁ簡単に言えば押されまくってるって話だ」
そう大きな声では言えない話なのだろう。 声を潜めて話すヴァルシュの表情が晴れない辺り、戦況はかなり悪いのだろう。 リーン・フィアにも人間たちの魔の手が伸びてくる日もそう遠い未来ではないかも知れない。 「結構、ヤバげな感じかー。何で人間は――」再び、魔族に戦争を仕掛けてきたのか?
そう言い掛けて言葉に詰まったのは、婚約破棄の件が脳裏を過ったから。シャーロットは8歳の時に人間族の国家、エルメティア帝國の第1皇子ガイナスと許婚となり、同時に婚約者となった。
当時の魔王に子供がいなかったため、幼くして魔族屈指の高い魔力を持つ彼女が養子に迎え入れられ、魔王の王女として講和の証とされた訳である。 所謂、政略結婚だが、双方共に「何でも勇者ってヤツがいるらしくてな。滅ぼされた族長もいるって話だ」
続けて現状を説明するヴァルシュだったが、途中で言葉を切ったシャーロットに何かを感じたらしい。
突然、彼女の両肩をがっしりと掴むと前のめりになりながら、ジッとその目を見つめてくる。 その蒼い瞳の奥の奥まで覗き込むかのように。ヴァルシュは照れるようにプイッと視線を逸らすと、表情とは裏腹に大声で叫ぶ。
肝心なところでヘタレる男がここには存在した。 「安心しろ! 何があってもシャルは俺が護る! 昔誓ったようにな!」「……うええええ!? あ、あたし!?」
昔のことを思い出して少し呆けていたシャーロットだったが、突然のヴァルシュの宣言と、大声で衆目が集まったことで大きく取り乱してしまった。 恥ずかしくて死にたい。と言うか消えたい。 「(ななな、何を言い出すんだ! この男はー!!)」 雑談とは違う騒々しさに会場が包まれる。 シャーロットの思考回路がショート寸前に陥ろうとした刻――妖精王リンレイスの大きな声が響き渡った。
会場の中央にある壇上から風の魔法で声を増幅して何か話しているようだが、今のシャーロットはそれどころではない。そこへ、彼女の脇腹をくすぐる者が現れる。
「ほーーーれ! こちょこちょこちょーーー!!」「ちょっ! 何っ? 何なの……ってエリーゼじゃん! 止めろやオラー!」
空色のパーティードレスを華麗に着こなす銀髪美女の幼馴染。 周囲から呆れた視線が集中する中、シャーロットとエリーゼが本気になって暴れ始める。 傍から見ればただじゃれついているだけにしか見えないのだが……。やがて一旦距離を取って落ち着いたエリーゼは悪びれる様子もなく犯行動機を自白した。
「いやさぁ。なんかラブコメの波動を感じたのよね。誰かさんが大声で何か言ってたみたいだしぃ?」「いやいやいや! 突然、あんなこと言われたらビビるわー!」
「あらら~。可愛らしいお顔を真っ赤にしちゃってぇ。本当に
「あーん? エリーゼ! 決めた! あんたはあたしがシバく!」
超上から目線で煽るエリーゼ 今度は2人の不毛な言い合いが始まろうとした時、まるで他人事のように争いを見ていたヴァルシュが、ツンツンとシャーロットの肩を突く。 「おい、シャル。面白くもねぇ掛け合いは止めろよ。なんか知らんが、リンレイス様が呼んでらっしゃるみたいだぞ?」 「別に掛け合いやってる訳じゃないわ!」と即座に否定したかったが、視線を壇上に向けると、そこにはニコニコ笑顔のリンレイスの姿。 その瞬間、シャーロットに戦慄が走り、こめかみが引きつるのが分かる。 リンレイスの背後に地獄の業火が燃え上がっているのを幻視したからだ。 彼女の姪でもあるからこそ分かることがある!少しばかり表情を青ざめさせてシャーロットは、リンレイスの元へと一も二もなく駆けつけた。
怖くて顔が見れない。 一体何を言われるのかと、シャーロットの鼓動が早鐘を打ち始める。そこへリンレイスによって大きな爆弾が投下された。
「皆さん、こちらがわたくしの姪、シャーロット。そして次期妖精王の候補であるバムロール・ロリヘイム公爵と結婚する者です」
――闇精霊族領のダラス平原 普段は平穏な緑溢れる豊かな平原に漂うは、血と錆に塗れた臭い。 この地では毎日のように、血で血を洗う激戦が繰り広げられていた。 闇精霊族軍に対するは、人間7か国列強同盟軍の1つコルネトリア王国軍が展開していた。 龍族と巨人族の援軍によって膠着状態が続く戦線であったが、そこへ列強最高と謳われるエルメティア帝國軍が後詰として参戦した。 この数日は牽制ばかりが続いており、本格的な戦いには至っていない。 山岳地帯や峡谷が多い闇精霊族領なので、無理に平地で戦わずに恵まれた天嶮を活かして人間族軍を誘い込めば良いのだが、どうしてもこの平原を手離せない理由があった。 この場所は古くからの彼らにとっての聖地に当たるのである。「シャーロット魔王陛下、此度はご足労頂きありがとうございます」 シャーロットが着陣して早々に天幕を訪ねてきたのは、闇精霊族の族長レイネシア。 跪いて臣下の礼を取り、恭しく頭を垂れている。「うむ。よくぞ、持ちこたえてくれた。一気に蹴散らしてやりましょう」「はッ……」 でき得る限りの威厳を纏ってシャーロットが威勢の良い言葉を吐くが、一部の闇精霊たちから失笑が漏れる。 レイネシアも特に叱責しようともしない辺り、内心ではどう考えているのかも知れたものではない。 とは言え、その気持ちも分からないでもないシャーロットは特に咎める気も起こらなかった。 何せ、援軍として引き連れてきたのは、魔王の側近を含む直轄部隊3000のみ。 更に言えば闇精霊族の中では若いとは言え、族長レイネシアは189歳で、18歳のシャーロットとは踏んできた場数が違う。「おい、魔王陛下に対する態度とは思えん。今、笑った奴は殺してやるから出て来い」 怒りの形相でシャーロットの隣から口を出してきたのは、ヴァルシュであった。 ここにいるのは
ついに来るべき刻が来た―― 神星樹の王城の外に広がる大庭園で魔王就任の戴冠式が行われる。 妖精族の国家リーン・フィアの首都フィアヘイムが帝都になる日だ。 新魔王となるシャーロットは王城内の控室で、柄にもなく緊張してそわそわを抑えられずにいた。 フェイトとブラッドが控える室内で、落ち着いて座っていることも出来ずに、行ったり来たりと忙しない。 「シャーロット様、少し落ち着いて下さい。儀式自体は簡略化されておりますのですぐに済みますので」 少しでも気休めになればと、フェイトが労わりの言葉を掛けるもシャーロットもこれからのことで頭が一杯だ。 戴冠式で何かやらかさないかより、魔王になった後のことを心配しているのである。 「魔王陛下、ご心配には及びませぬよ。陛下の美貌と魅力の前には全ての魔族がひれ伏すでしょう」 ブラッドも何か、よく分からないことを言い出したが、美貌と魅力とは?と自問自答せざるを得ない。 寝言でも言ってんのかとばかりに、シャーロットは呆れた目を彼に向けた。 ようやくシャーロットが席に腰を押し付けた頃、妖精族の神官の1人が儀式の開始を告げに控室へやってきた。 魔呪刻印が発現した刻――と言うよりバムロールを殴り飛ばした時点でシャーロットの覚悟は固まっている。 魔王就任には全く異論はない。 そう。異論はないのだが、流石に荷が重いのでは?とは思っている。 背もたれのない椅子から立ち上がったシャーロットの漆黒のドレスがさらりと垂れて、衣擦れの音が優しく耳に届く。 その大きく開いた背中からは妖精の羽が露わになり、意志とは無関係にゆらゆらと揺らめいていた。 控室は大庭園の会場からほど近い場所に用意されており、シャーロットたちはすぐに戴冠式典場へと到着した。 急ごしらえの祭壇と儀式台にしては意匠を凝らした美しい造りになっており、どれもが妖精の大森林の大樹から削り出された逸品である。 とても急造の会場だとは誰も思わないだろう。 「新たなる魔王! 魔呪刻印が発現せし者、全てを統べる者、妖精族の女傑、その者の名はシャーロット・マクガレル!」 恭しく言い放った龍族の大神官長の言葉に従って、壇上に姿を見せるシャー
シャーロットの魔王就任は決定的な状況である。 翌日に魔王の戴冠式を控え、すぐにでも妖精王バムロールを追い出して神星樹の王城に入ることは可能だ。 だが彼女は自宅でのんびりとした時間を過ごすことに決めていた。 いきなり窮屈な場所に閉じ込められるなど考えただけでゾッとする。「はぁ……やっぱり我が家は落ち着くわねー」 縁側でお茶をすするお婆ちゃんの如く、ソファに座ってコーヒーカップに口を付ける。 尊敬するルナも日当たりの良い庭を見ながら、緑茶なるものを呑むのが好きだと言っていたなと、シャーロットは懐かしい想い出に癒されていた。「シャーロット様、私に命じて頂ければコーヒーなどお淹れ致しますのに」「あーフェイト、いいのいいの。ここは自分ちなんだしー。自分で淹れるの好きだし」 パタパタと手を振って遠慮するもフェイトは何処か不満げだ。 何故か、現在この家にはフェイトとブラッドが当たり前のようにいた。 何でも大事が起きてはいけないからと言う話だが、大袈裟だろうにとシャーロットは気軽に考えている。 ちなみに2人には何度言っても座ろうとしないので、魔王(予定)権限で無理やり休ませるついでにコーヒーも振る舞っていた。「フェイト殿は秘書官故、コーヒーなど淹れられぬのでしょう」「何を言っている。私は何でもこなす。それが秘書官であり、シャーロット様のためなら尚更のことだ!」 ブラッドが煽るように皮肉っぽく告げると、フェイトが嫌悪感を露わにして反論する。 2人の様子を見ていると、バムロールの執務室での一件を思い出すが、これが相性と言う物なのか。 普段から冷静で何事にも動じない彼女しか見たことがなかったので、シャーロットとしては意外な一面を垣間見ることができて楽しいのだが。 2人が火花を散らしている隣で、シャーロットは特に気にすることもなくまったりと歴史の本のページを捲っていた。 別に心の底から嫌い合っているようでもなさそうなので、いがみ合うのも良いだろう。 その時、硬い木を叩く音がして全員の視線が玄関の扉へと集中する。 ブラッドを放置して、すかさずフェイトが扉へ向かうと誰何の声を上げた。 返ってきたのは聞き慣れた声。 シャーロットはフェイトに目で頷いて見せると、来客を招き入れた。「よう、シャル。
シャーロットはフェイトとブラッド、そして護衛を引き連れ、憂いを帯びた表情で妖精王の執務室へと向かう。 あの下卑た新王バムロールと顔を合わせるのは不愉快以外の何者でもないし、あんなことを仕出かした以上、何を言われるのか不安ではある。 シャーロットは自身に明確な悪意が向けられた経験がほとんどない。 バムロールやエリーゼたちの真意を思い出すと、不意に胸が押し潰されそうになる時がある。 だがそれだけだ。 自分の道は自分が決めると啖呵を切った以上、シャーロットの心は自身が考えていたほど揺らぐことはなかった。 そんな様子を察してフェイトが労わりの言葉を掛ける。 「シャーロット様、ご心配には及ばないでしょう。恐らくあの男は現実を受け止めきれていないでしょうが」「あーね。思いきりぶん殴ったからねー」「くくく……私も是非その場に居合わせたかったものです」 婚姻の儀のことを思い出して顔を赤く染め、何処か遠い目になるシャーロット。 それを見てブラッドは含み笑いを隠そうともせずに、滑稽だとばかりに言ってのけた。 「しっかしマウントねー。それってどーすんの? またぶん殴ればいいの?」「まぁ私にお任せください。シャーロット様は堂々となさっていて下されば良いのです」 シャーロットが左拳を硬く握りしめながら発した物騒な言葉に、フェイトは今まで見せたこともないような邪悪な笑みを浮かべながら言った。 そして到着した妖精王の執務室。 取り敢えずノックしかけたシャーロットであったが、気まずさが先に立って踏ん切りがつかない。 フェイトはそんなシャーロットを微笑ましく見守りつつ全く躊躇うことなく扉を叩いた。 シャーロットよりも若いのに大したものだ。 執務室から機嫌の良い声が聞こえたかと思うと、勢いよく扉が開かれる。 それを見てシャーロットが意外そうな表情になってしまった。 予想外の人物が目の前に立っていたことに少しばかり驚いたためだ。 なんと妖精王バムロールが一同を出迎えたのだ。 王自ら出迎えるなど普通はあり得ないがパフォーマンスであろう。 「シャーロット! よくぞ来てくれた! 式は中断となったが緊急事態だ。仕方なかろう! 親睦を深めたくてな。ささ、私の部屋へ入ってくれ」 どんな