魔王様の恋人

魔王様の恋人

last update最終更新日 : 2026-01-29
作家:  波 七海連載中
言語: Japanese
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概要

異世界ファンタジー

三人称

強いヒロイン

逆ハーレム

ざまぁ

王族

モテモテ

人外

貴族

刻は魔族と人間・亜人国家連合が激しい戦争を繰り広げている時代。 魔族は劣勢、召喚された勇者まで魔王討伐のために送り込まれている状況。 そんな中、妖精族の国リーン・フィアで穏やかに暮らしていたシャーロットであったが周囲の状況が急変する。 彼女には更なる運命が待ち受けていた!? 次期の魔王となる証――魔呪刻印が発現!? 次期妖精王と結婚させられそうになるわ、幼馴染に想いを仄めかされるわ、婚約破棄された帝國皇子と再会して本当の気持ちを伝えられるわ。 そして更に彼女は様々な人々を巻き込んでゆく…… 戦争と言う極限の中でシャーロットを取り巻く男たちとの恋愛譚。 またの名をドタバタコメディとも言う……。

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第1話

第1話 追憶、そして落ちる火種

El papá de Lulú se llama Lucio Estrada. Es mi compadre y solemos juntarnos seguido para jugar póker; nos llevamos bastante bien. Hace poco, Lulú me pidió que fuera su padrino. Ella acaba de cumplir los veinte y está en su mejor momento. Tiene unas curvas increíbles, una cintura muy estrecha y un busto tan firme que parece que va a explotar en cualquier momento.

Cada vez que iba a su casa a jugar, Lucio hacía que Lulú saliera a servirnos café o agua. Ella siempre se ponía ese uniforme escolar con una minifalda tan corta que se le alcanzaba a ver media nalga, y lo combinaba con unas medias largas.

Caminaba moviendo mucho la cadera y, cuando se inclinaba para servirnos, nos enseñaba todo el escote a propósito. Nosotros no podíamos quitarle la vista de encima, nos quedábamos embobados mirando.

En esos momentos, Lucio aprovechaba para encender un cigarrillo y, con los ojos entrecerrados, sacaba una carta de la manga y la ponía sobre la mesa.

—¡Ya gané! Tercia de ases, saquen la feria.

Todos sabíamos que Lucio hacía trampa, pero le pagábamos con gusto. Al final, sentíamos que él estaba sacrificando a su hija para darnos ese espectáculo, así que valía la pena. Además, en el juego a veces se gana y a veces se pierde, no era tanto dinero.

Ese día, después de terminar la partida, recordé que tenía cosas pendientes en el rancho. Me levanté y guardé mi cartera.

—Sigan ustedes, yo tengo que ir a trabajar.

Para mi sorpresa, Lulú se acercó de inmediato.

—Padrino, ¿va para el rancho? Lléveme con usted, yo también quiero aprender a montar.

Lucio soltó el humo de su cigarrillo y le dijo:

—Tu padrino va a trabajar, vas a ser un estorbo.

Me acordé de que ese día tocaba la cruza de las yeguas y esbocé una sonrisa divertida.

—No se preocupe, compadre. Si Lulú quiere ir, yo me la llevo. Ándale, Lulú, vamos al rancho.

Ella se puso muy feliz y me acompañó. Cuando llegamos, saqué a un semental para que montara a una de las yeguas. Lulú se quedó a un lado, mirando con los ojos muy abiertos. El caballo empezó a embestir a la yegua una y otra vez con mucha energía.

—Padrino, ¿qué están haciendo esos caballos? —preguntó ella con curiosidad.

—Pues así se monta, Lulú —le expliqué—. El macho está montando a la hembra.

Ella asintió como si estuviera reflexionando y luego comentó:

—Se ve que la yegua lo está disfrutando.

Terminamos rápido con la cruza y regresé a los caballos a sus corrales. Cuando volteé a ver a Lulú, noté que tenía una mano debajo de la falda, rascándose un poco. Parecía que ver a los animales la había encendido.

—¿Tú también quieres montar, Lulú? Yo te enseño.

—¡Claro que sí! Gracias, padrino —dijo ella y me dio un abrazo emocionado.

Su busto se apretó contra mi pecho; se sentía tan suave que de inmediato sentí una reacción allá abajo. Acerqué a uno de los caballos y le dije:

—Sube, yo me pongo atrás para cuidarte.

Lulú se apoyó en el lomo del animal e intentó subir una pierna con mucho esfuerzo, lo que hizo que se le levantara toda la falda. Pude ver perfectamente su calzoncito blanco. Después de un rato de intentarlo, me habló con un tono muy meloso:

—Ay, padrino, ¿me ayuda a subir? Es que no alcanzo.

—Está bien, pon un pie en el estribo.

La agarré por las nalgas para impulsarla. Se sentían tan bien al tacto que casi pierdo el control. Con un empujón la subí al caballo y, de un salto, me acomodé justo detrás de ella. La rodeé por su cinturita.

—Agárrate bien, que vamos a dar una vuelta.

—¡Sí!

El caballo empezó a trotar por el campo. Con cada brinco, nuestros cuerpos chocaban con fuerza. Mi hombría golpeaba una y otra vez contra sus nalgas, y con tanto roce me puse muy duro. A Lulú se le puso la cara roja y me preguntó con voz suave:

—Padrino, ¿qué es eso que me está picando ahí atrás?

Esa niña no podía ser tan ingenua, seguro me estaba provocando. Traté de disimular y dije lo primero que se me ocurrió:

—Ah, deben ser las llaves que traigo en el bolsillo, espero que no te lastimen.

—No, no me duele —respondió ella.

De pronto, el caballo dio un pequeño salto y Lulú salió volando un poco hacia arriba. Al caer, aterrizó con todo su peso justo sobre mi entrepierna. Sentí que encajamos a la perfección, como si la hubiera penetrado hasta lo más profundo.

Mientras pensaba en qué excusa inventar ahora, sentí que ella se pegó más a mí. Empezó a frotarse contra lo que yo traía ahí abajo y eso terminó de encenderme; ya no iba a poder aguantarme más.

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第1話 追憶、そして落ちる火種
「ほら、シャーロット! お茶なんてのんでないで、こっちでボールなげでもしよう!」  優しく高い声。  何だか、凄くほっこりさせられる、心が落ち着く声色。  ふわふわな金髪に碧眼と幼いながらに凛とした顔立ちの男子。  柔らかくも鋭い目には慈愛の潤いを湛え、目尻が下がっているのも好意の現れ。 「ぼーるなげ? はじめてだけどやってみたーい! あたしにもできるかなぁ……」「かんたんだよ! ぼくの真似をしてみてよ!」  そこから始まったキャッチボール。 「なんだか、ぼくたちが仲良くしたら、みんなも仲良しになれるんだって!」「えっ! そうなの? じゃあ、あたし仲良くなりたい!」「それだけじゃないよ! ぼくはシャーロットが好きになったよ! だからきみにもぼくを好きになってほしいな!」  突然の言葉にシャーロットの投げたボールは、すっぽ抜けて大暴投。  慌ててガイナスが取りに走る。  綺麗に手入れされた芝生のカーペットが敷かれて、見晴らしのよい離宮の広場。  特に探すこともなく、ガイナスはすぐに戻ってきたかと思うと、怒った様子もなく自然な笑顔のままボールを投げ返す。  それは優しくふんわりとした弧を描き、シャーロットの手に収まった。 「ははは! シャーロットはまだまだへただね!」「むぅ……ガイナスがきゅうに変なこといったからだもん!」「ほんとうだよ! ぼくはシャーロット……シャルが好きだよ! ずっとまもるって決めた!」「えへへへ……まもってくれるんだ。あたしも好きだよ! ガイナスのこと! それでみんなも仲良くなれるならもっといいよね!」  懐かしき記憶が、刻を経た今なお鮮明に蘇る。 そう。この人は……。  人間族の国家――エルメティア帝國の第1皇子ガイナス・エル・ティア・クラウレッツ。 彼は……ガイナスは私の許婚。 これは遠き日の懐かしき想い出。 ※ ※ ※ 戦争が激化の一途をたどる中、妖精族の国家リーン・フィアは未だ平穏な日々が保たれていた。  それもこれも昼なお暗い、深き大森林に護られた首都フィアヘイムだからこそ。 そして現在、神星樹の王城《ヴァンドスラシル》の大広間では妖精王による夜会が催されていた。 「人間・亜人族連合軍との戦争中なのに呑気なもんだよねー。まぁあたし
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第2話 妖精王の資格
 夜会の翌日、飲み過ぎによる頭痛と吐き気を抑えながらも、シャーロットは普段通りに丸い結界の薄い殻を破って起き出した。  妖精族は本来、大気の霊気で繭のような結界を作り、その中で丸まって眠る。 この家にベッドなどと言う物はない。  人間との交流により寝具が持ち込まれたが、使用している者は人間被れやただの人間好き、そして肉欲に溺れた者くらいであった。「あったま痛---い……。もう……やっぱりお酒は飲みすぎるもんじゃないわー」 頭を押さえながら、シャーロットは朝食用のパンを焼いてコーヒーを入れる。  当然のことだが、このロル麦で作られたパンもコーヒー豆も人間の手により持ち込まれた物で、その他にも多くの物資を人間族から輸入している。  そしてパンを焼くトースターと言う魔導具や、コーヒー豆を挽くコーヒーミルも同様……言い出したらキリがない。  過去の蜜月時代からの名残であり、現在も一部の人間国家とは交流が続いているのだ。 だがシャーロットはパンは自然霊術の火で焼いているし、なるべく昔ながらの妖精族の暮らしを営んでいた。  もちろん例外はあるけれども。  現在、シャーロットが暮らしているのは、自然霊術によって巨大化した大樹をくり抜いて造りだされた一般的な妖精族の家。 妖精王リンレイスの姪なので、シャーロットも一応王族に名を連ねる者の1人である。  とは言え、魔族の王は世襲制ではなく実力主義で決まることの方が多い。  それ故、万が一、妖精王が譲位されれば、シャーロットはただの伯爵家令嬢に戻るのだが、そんなことを気にする彼女ではない。 何故、貴族であるのにもかかわらず1人暮らしをしているかと言うと、婚約破棄で負った心の傷を癒せるようにと配慮した両親の計らいがあったから。  破談の件を聞いた時、シャーロットの心に浮かんだのは悲嘆ではなく、諦念であった。  事実は事実として運命を受け入れる外ないと、ただそう思っただけだ。 淹れ立てのコーヒーの香りを楽しみながら、ゆっくりとカップに口をつけると、コクのある風味と苦みを味わう。  普段なら朝食を終わらせて、神話や歴史、魔法の書物を読んで、自分なりの解釈を加える研究を行うのだが、今浮かんでくるのは昨日の出来事。 いきなりあのような話になったのは何故なのか――  シャ
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第3話 相克する心
「リンレイス様!! あたしは全く聞いてないんですけどー!!」  シャーロットの心からの叫びが、神星樹の王城の応接室に響いた。 執務室に負けず劣らず、この部屋も妖精族にしては豪華に装飾されている。  至る場所から芽吹いた生命の息吹、咲き誇る可憐な花々、妖精族神話の世界が描かれた絵画、木工アート作品。とは言え、あくまで妖精族にしてはであって、人間からすれば精緻な彫刻が施された自然溢れる部屋に見えることだろう。 普段ならばほとんど顔を出すこともない場所なのだが、何せいきなり降って湧いた結婚話である。  夜会の翌日、シャーロットは怒りに身を任せて王城へと単身乗り込んだのだ。 「よく来たわね、シャーロット。昨日はご苦労様でした」「ご苦労様でした……じゃなーーーい!! なんであたしが急に知らない相手と結婚しないといけないんですかッ!」  シャーロットの殴り込みならぬ、怒鳴り込みに眉1つ動かすことなく平然とした態度を崩さないリンレイス。  そんな彼女に対して、更にシャーロットが喰って掛かる。 魂の叫びが通じたのかは知らないが、ふうっと憂鬱そうなため息を吐いたリンレイスの表情がガラリと変わった。 「ごめんなさいね……。わたくしの政治力の無さが原因よ」  項垂れる彼女の申し訳なさそうで悔しそうな表情を見て、気勢を削がれたシャーロットは少しトーンダウンしながらも反論するのを止めない。 「あたしでなくともリーンノア様がいらっしゃるじゃないですか!」「最初はそうなるはずだったの……けれど貴女の魔力の高さを知ったバムロールが望んだことなのよ……」  リンレイスには長女にリーンノアと言う娘がいる。  魔力の高さで言えば、彼女も決して低いとは言えない。  シャーロットの想いは絡み合う糸のように複雑であった。  友人でもある彼女に責任を押し付けたくはなかったが、頭越しで勝手に決められたことに激昂して我を忘れてしまっていたのだ。 「今、この魔帝國で人間族の攻撃を受けていないのは、わたくしたち妖精族と龍族、巨人族の領土、後は闇精霊族の領土の一部くらいなの……。でも魔族の大多数が今も尚、対人間族強硬派なのよ。わたくしは過去に人間たちと上手く付き合ってきた過去を知っている……。そのせいで判断が甘くなってしまったッ!」  リン
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第4話 揺れ動く日常
 神星樹の王城でバムロールと初めての出会った翌日も、シャーロットは普段通りの生活を送っていた。 木製のテーブルに頬杖を突きながら、世界神話の本を眺めているのだが、全く頭に入ってくる気配はない。  大好きなコーヒーも入れたことだし、本来なら気分がアガるはずなのだ。  更にはルナから貰った大切な白磁のティーカップ。  だが、口をつけても気は一向に晴れることはなかった。 「あーあたしとしたことが、あれしきのことで動揺するなんてね」  もちろんシャーロットは気分が乗らない原因はしっかりと把握している。  自己分析はばっちりだ。 シャーロットは縛られない。  婚約破棄の件があったせいもあるが、伯爵家と言う家柄に収まることなく自由奔放な毎日を送っていた。  例えるなら緑の風に乗って軽やかに舞う蒲公英の綿毛であり、水底を揺蕩う海藻であり、水面に煌めく陽光であった。  そうは言っても彼女は特段、自己中心的でも気分屋でもない。 気に掛かるのはただただ、妖精族を含めた魔族の未来、ひいてはリンレイスやリーンノアの処遇のみ。 それがなければ、あのような男のことで悩みなどしない。  現時点ではシャーロットは特に結婚話をはっきりとは断らなかった。 「結婚しちゃおっかな……」  憂鬱な顔をしてそう小声で呟いたシャーロットはテーブルへ突っ伏した。  どう考えても不死の超越者たる魔王イルビゾンが滅ぼされない限り、魔族に敗北の文字はないと思われる。  信頼できるリンレイスが言うのだから間違いないことなのだろう。  戦争が長期に渡って続くようなことがあれば、流石に人間族や亜人族たちも疲弊して、講和の流れになるのではないかと都合の良い考えがシャーロットの頭を過る。 「魔族が人間たちと戦わない未来かー」  そんな考えを口にして、シャーロットはハッと気が付いた。  気に掛かる点がまだあることに。 「そうだ……ガイナスとヴァルのこともあるじゃんかよー。仲良くすればいいのに……」  それに仮に人間族と講和するとしても、それが何年後になるのか予想もつかない上に、バムロールの妖精王就任はほぼ確実。どう考えても自分の意思とは関係なく、バムロールとの結婚は避けられそうにないとシャーロットはま
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第5話 お披露目の夜会
「最近、ほんっと、神星樹の王城に来ることが多いのよねー」  自宅にてヴァルシュから妖精王の戴冠式と結婚の儀の件を聞いた翌々日。  バムロールとシャーロットの結婚の儀を大々的に知らしめるために、大広間で夜会が開催されていた。 この部屋では色々とあったものだと感慨深げにシャーロットは思い出していた。 「ヴァルとの再会……護るって言われたのはドキドキしたよね。それで終いにはバムロール……様との結婚の発表かー」  本日の主賓はもちろん、バムロールとシャーロットの2人である。  そして今回の主催者は現妖精王のリンレイスではなく、次期妖精王のバムロール。明日の結婚の儀に向けてのパフォーマンスまで考えている辺り、根っからの政治屋だと言うことだろう。 夜会が始まって早々、2人の元には多くの来賓貴族たちがこぞって詰めかけた。  正直、シャーロットには誰が誰だかさっぱりで、途中から脳が覚えることを拒否していたほど。  改めて脳の容量はもっと有意義に使うべきだと実感させられる。 挨拶が終わってようやく解放されたシャーロットは、行き場のない憤懣や葛藤、そして自らの想いから逃避するために、苦手な酒を呷っていた。  過去の経験から学んでいないと言われようと、呑まずにはいられない。 依然としてバムロールは貴族たちと歓談しているようだが、よくできるものだと感心する。  シャーロットの方にも声を掛けてくる者はいたが、明らかな不機嫌モードを隠そうともしない彼女に近づく者はいなくなっていた。  現在、隣にいるのは、彼女の心身を案じるヴァルシュただ1人である。 「おいおいシャル……ちょっと呑みすぎじゃねぇか? そろそろ止めとけって」「あによー! 呑んじゃ駄目だって言うの!? ヴァルもあたしの意思を無視するってーの!?」  ヤケクソ気味に怒鳴りつけるシャーロットの情緒は乱れに乱れていた。  最大の庇護者を失い、外堀を埋められていく様子を黙って見ているしかないシャーロットに押し寄せるのは、不安感と無力感、そして絶望感であった。 「いやな……」「うう……」  自分が情けなさ過ぎて思わず泣き出してしまったシャーロットに、ヴァルシュは悔しそうに唇を噛んでひたすら宥めている。幼馴染であり、護ると誓った相手を苦しみから救ってやれないばかりか
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第6話 裏切りと衝撃と
 神星樹の王城の大広間から抜け出したシャーロットは気怠い体を休めるために、用意されている休憩室に向かっていた。 彼女の足元はおぼつかず、地に足がついていない。 夜会は夜を徹して行われている。  そのため大広間の周辺の部屋は休憩ができるように開放されているのだ。 痛飲したせいで回らない頭でも目を閉じれば津波のように押し寄せる苦悩、募る焦燥、そして至るのは諦念。  シャーロットはどうしても他人の犠牲の上で、自分が生き残ることに納得することができなかった。  結局、答えは最初から決まっていたと言うこと。 気の迷いからか「もしも自分に魔呪刻印が……」などと言う思いが過ったが、不死の超越者たる現魔王イルビゾンが存命している以上、現実的ではない。  ましてや自分如きに発現するはずもないと、シャーロットは思い改める。 ならば―― シャーロットと言う個人を形成している軸が決断を下す。  誰かのせいにして心の逃げ場所を作ることなど、彼女の信念が許す行為ではなかった。 結婚する気はないが、現状、シャーロットには覆せるだけの力などない。  となると覚悟を決め、心を殺してでもバムロールとの結婚を受け入れるしか選択肢は存在しない。  不本意でも決めたからには全力を尽くして夫を支えなければならない。  それがシャーロットが自身に課した生き方。 シャーロットは落ち気味な気分を切り替えようと、何とか自身に喝を入れる。 「それにしてもバムロール……様はどちらへ……? エリーゼも来るって言ってたのにいないし……」  使用中の札が掛かっていない休憩室を探して通路を歩いていると、艶やかな声が所々から聞こえてくる。  何をしているのかと言われればナニをしているのだろう。 「こんなところでも……そう言うことは外でやってよね……」  呆れたような呟きが思わず口から漏れるが、シャーロットは実際に行為自体は肯定も否定もしていなかった。  実際に目にしたことがないので、実感が湧かないと言う理由もあるが。 元来、妖精族は夫婦になっても人間のような肉欲的な行為は必要としない種族であった。  精神と魔力をお互いに通じ合わせ、幼体を生み出すのが子の為し方だったのだ。  しかし長い時を経て
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第7話 遠き日の想い出
 龍王ガルガンドルムの言葉により気付きを得たヴァルシュは滞在先の宿坊で懐かしき過去に想いを馳せていた。 宿坊は妖精の大森林にしか芽生えない大樹をくり抜いて造られており、かなりの広さを誇る。  夏は風通しがよくて涼しく、冬は熱を溜めるため温かいので過ごしやすい。 シャーロットとバムロールの結婚の儀は明日に迫っている。  だが、ヴァルシュは既に覚悟を決めて決断を下した。  そこにはもう迷いはない。 そんな中、テーブルに頬杖をつくヴァルシュが想い起こすのは遠い日の想い出。  ※ ※ ※  昼なお暗き大森林の中に、木々が切り拓かれた大きな広場が存在した。 開拓されたとは言え、大地には花々が咲き乱れ、生命の息吹が芽吹いて緑で溢れている。  そこには2人の少年少女が短い草が繁茂した地面に腰を下ろしていた。 「ヴァル。もう泣きやんだら?」「だって……。とうさまのしゅぎょうがキツいんだよ」  赤髪の少年――ヴァルシュは一緒にいた幼馴染の少女に涙ながらに訴えていた。  如何に父との剣の鍛錬が苦行であるかを。  それを聞いた少女は眉をキリリと吊り上げて一喝する。 「ダメじゃない! そんなのじゃ!」「えぇ……」「言ったじゃない! ヴァルは将来、まおう様におつかえしてささえるんでしょ?」  絹糸のようにさらさらな銀髪をツーサイドアップにした少女は仁王立ちすると腕を組んで叫ぶ。  彼女は目の前にいる少年がかつて目を輝かせて語った熱い思いを覚えていたのだ。 ヴァルシュの夢は魔王に仕えることであった。  魔王の周囲には様々な種族から多種多様な部下が送り込まれてくる。  そのメンバーに入って、このデスペラント大陸で勇名を轟かすほどの猛者になり、魔王を悪しき人間族から護る守護者となるのだ。  とは言っても現在、魔族と人間族は一応の平和的関係にあり小康状態を保っていた。 活躍する――それは即ち再び、戦乱の時代が訪れると言うことだ。 「そうだけどさ。さいきん思ったんだよ。まおう様ってつよいヤツがなるみたいなんだ」「それがどうかしたの?」「だってつよいヤツだったらまもる必要ないじゃんか」  ヴァルシュは魔族が陥りがちの強くなければ魔王ではないと言う考えに憑りつかれていた。  そもそも魔族である以上、強くあれ!と
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第8話 裏で抗う者 ①
 遠くから結婚お披露目の夜会の喧騒が風に乗って聞こえてくる。 その当事者たちが複雑な想いと覚悟を決めている裏で、神星樹城のとある1室に魔族の重鎮が顔を揃えていた。 呼びかけたのは現妖精王リンレイス・フォーレ・ヘイムニース。  妖精族だけあって年齢を感じさせない美貌を保っているが、ここ最近の心労が重なり表情に陰りが見える。だが、彼女は自分にできる最後の大仕事を成し遂げるべくこの場所にいる。 全ては自らが招いた責任を果たし、問題にケリをつけるため。  特にデスペラント魔帝國の危機的状況時に、バムロールら対人間族強硬派の台頭を許したこと、姪であるシャーロットを犠牲にしたこと、その責任。 目を閉じると脳裏に浮かんでくるのはシャーロットの諦めたような表情。 公私共に自らの失政が原因だ。 ――譲位の儀が行われるのは明日。  退位する現妖精王の立場だとしても決して逃げられないし、逃げるつもりもなかった。  それを強く心に刻み込み、自らに気合を入れたリンレイスが満を持して口を開いた。 「本日はお呼びたてして申し訳ございませんわ。ガルガンドルム殿……そしてドンケルク殿も」  そう言って軽く頭を下げるリンレイスを、龍王ガルガンドルムが穏やかに制止した。  お互いが王たる立場なので、魔族の間ではお互いに対等。  通常は各種族の王が頭を下げることなど有り得ない。  ましてや他種族をや。 龍王の思わぬ気遣いに、軽く微笑みを見せたリンレイスは体を投影板に向ける。  この場にいるのは2人のみ。 「問題はナイ。リンレイス殿ハ天下の名君。呼びかけがアレバ応じるのが必然と言うモノだ」  巨人族の王ドンケルクもまた、頭を下げようとするリンレイスの機先を制して告げた。  彼がこの場にいないのは、ただただあまりにも巨大過ぎる体を持つからと言う理由。  よって通信鬼の能力を使い、遠隔で投影板越しに今回の会談に臨んでいると言う訳だ。  巨大な神星樹城であっても入ることすらできないのだから当然と言えば当然である。 「して何用かな……? リンレイス殿がわざわざ用件があると言うからには重要事項なのであろうが」  早速、問い掛けるガルガンドルムに向けてリンレイスが単刀直入に切り出す。  その落ち着いた様
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第9話 裏で抗う者 ②
『魔王の証たる魔呪刻印を持つ者は妖精族の中から現れる』  リンレイスが告げた神託の内容と、それが意味するところは、ガルガンドルムとドンケルクの心にストンと落ちたようだ。 両者共に納得顔でただただ頷いている。 これこそが現在の魔族の中で最も発言力のある2人を呼んだ理由。 妖精族から魔王が誕生すれば、国内はその者の下は集い、強い団結力へと繋がるのは必定。  魔王と妖精王の立場を鑑みれば、妖精族たちがどちらに付くかは火を見るよりも明らかだ。 あわよくば、シャーロットとバムロールの結婚をご破算にして、その魔の手から彼女を解き放つこともできるはず。  悲しい想いをさせた彼女には自由に生きて欲しい。  そう考えたリンレイスが最後にできるのは根回し。 そしてもしもの時の最終手段。  妖精族としての意地を見せ、一族の繁栄のみを目指すことだ。 とは言え、これを選択するのは本当に最後の最後――追い詰められた刻。 今は何より、他種族の王たちに極めて強い影響力を持つ龍族と巨人族を説き伏せるのが最優先事項だ。  現在の戦況を膠着状態に持ち込めているのは両族のお陰だと言っても過言ではないのだから。 「それが真の目的と言う訳か……なるほど魔族大会議のことだな」  ――魔族大会議。 魔王と選出するための魔族に連なる全種族による話し合いと投票の場。  魔呪刻印を持つ者が魔王になるのが絶対であるとは言え、肝心の支持を得られぬまま魔王になっても従わない者が出るのでは意味がない。 平和期と魔族内部の動乱期、人間族との戦争期を経て、刻と共に伝統と価値観は移ろいゆく――  そんな変化が訪れたが故にできた仕組みであった。 とは言え、未だに魔帝國内では保守派と革新派に別れて議論が交わされて続けている。  保守派は魔呪刻印の有無のみを重要視する古来からの価値観を護ろうとする者たち。  革新派はそれのみならず、実力が伴ってこその魔王だと考える者たち。 「お2人には是非、その場にて支持をお願いしたいのです」「リンレイス殿の気持ちは理解するが、簡単に頷くことはできぬな。昔と違って資質も問われる時代だ」「我は構わンがな…
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第10話 戴冠式と婚姻の儀
 運命は無情であり、無常である。  今日と言うこの日がシャーロットにとってどのような日になるのか、彼女には知る由もない。 執り行われるのは妖精王リンレイスの譲位、つまり新しい妖精王の戴冠式。  そして引き続き、新王となるバムロールとシャーロットの結婚の儀へと移る。  妖精族のみならず、後の『魔王伝』には多くの証言が書き記されることとなる。  目撃者たちはその目を輝かせながら口々に語った。 「いやな。俺もあんなことになるとは思ってもみなかった。まさに前代未聞って奴さ」「私もあんな抒情詩みたいな体験をしてみたかったわぁ……ああ、なんて素敵なの……」「あれは奇跡と言っていい。そう、全ては決まっていたんだよ。宿命ってことだ」  ―――  シャーロットは新婦の控室にて、来たるべき未来へ備えていた。  色とりどりの花々で飾り付けられ、華やぐ室内は貴族たちからの贈答品や御祝花で溢れていた。 「甘ったるい香り……花って言うのは自然に咲き乱れるからこそいいんじゃない」  背中が大きく開いた真っ白な純白のドレスを身に纏い、木の椅子に腰を落ち着けている。  シャーロットの背中の羽は、風もないのにゆらゆらと揺らめいていた。 運命の岐路。 だが彼女に動揺する気配は全く見られない。  落ち着き払って一点を集中して見つめている。 「シャーロット様、とてもお美しいですわよ」「そう。ありがとう」  シャーロットの衣装を整えた妖精族の女性は、嬉しそうに目を細めて褒め称えるが、その心中などとても推し測れるはずがない。  彼女が悪い訳ではない。なにせ相手は妖精王なのだ。  幸せを信じて疑っていない様子がシャーロットの身にひしひしと伝わってくる。 「間もなく戴冠式が行われます。もうしばらくお待ち下さい!」「そうね。あたしも見届けなきゃね」  儀式の開始を告げに来た男性の言葉を聞いて、シャーロットが徐に立ち上がる。  それを聞いて慌てたのは世話人たちだ。 シャーロットの言動に対して何を思ったのかは知らないが、メイクや衣装などが乱れるからと止めに入る。  彼らの制止を振り切って、シャーロットは戴冠式が執り行われる大式典場の袖に足を向けた。 シャーロットが裏手か
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