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205.【番外編】研究者キリアンと愛の謎

Penulis: 中道 舞夜
last update Terakhir Diperbarui: 2025-10-15 17:03:16

ずっと読みたいと思っていた本。もう知れないと思い諦めていた結末――――

僕は時間を忘れ本の世界に没頭した。三百ページ以上ある分厚い本だったが、ゼフィリア王国から帰ってきてからというもの、物語の結末を早く知りたい一心で時間さえあれば本を開いて読んでいた。

ある日、いつものように国立図書館の片隅でその本を開いていると司書のエレナに声を掛けられた。

「あら、キリアン様。今日は文献ではないのですね。キリアン様が文献以外の本を読まれるなんて珍しいですね。」

「ああ、これはずっと気になっていてある方に頂いたんです。貰ってからずっと夢中になっていて。その結末を知りたくてたまらなかった。」

僕が答えると、エレナは一瞬、瞳の奥に微かな影を宿らせたように見えた。

「そう、なんですね。」

いつもなら、僕の読んでいる本について、もっと質問をして話を広げようとするエレナが、この日は小さく微笑むと、すぐにその場を後にした。それからというもの、エレナと話す機会は以前よりも減り、本や文献に没頭する時間が増えていった。

ルル王女から貰った本も読み終えた数か月後。ルル王女がルシアン兄さんたちと一緒にバギーニャ王国を訪れた時に、今度は僕から王女が気に入りそうな本をプレゼントした。

「ルル王女が以前お読みになった本の傾向から

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