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第10話

作者: 酔夫人
last update 公開日: 2026-05-13 11:00:09

入口に立っていたのは、実花の思った通り一ノ瀬恒一だった。

だが、その姿を視界に捉えた瞬間、実花の胸に浮かんだのは懐かしさでも痛みでもなく、強い違和感だった。

(こんな人だったかしら)

誰かが「一ノ瀬恒一だ」と小さく呟かなければ、実花は一瞬、本当に彼だと認識できなかったかもしれない。

十年前の彼だから印象が違うのだろうか、と考えかけて、すぐに違うと気づく。変わったのは恒一ではない。実花自身の“見る目”だった。

前世では、実花は恒一を「愛する人」というフィルター越しにしか見ていなかった。だから彼の振る舞いの一つ一つが、自分へ向けられた特別なものに見えていた。

けれど今、その幻想は存在しない。

実花の視界の中で、恒一は会場中の視線を一身に集めていた。

彼はそれを当然のように受け止めている。その場の空気を支配することに慣れきった男の立ち姿だった。

そのために恒一は、いつも“少し遅れて”現れる。意図された登場。藤宮家が主催する社交
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